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2016.10.01

タバコ1本で11分寿命が縮む?タバコの死亡リスク

KenCoM公式ライター:守城美和

「タバコは止めたほうがいいとは思うけれど、きっかけがない」「タバコは体に悪いというのは知ってはいるけれど、今すぐ止めなきゃとは思わない」そんな方に、ぜひこの記事を読んでいただきたいと思っています。「タバコ1本で11分寿命が縮む」というタイトルを見て、もしかしたら「そんな大げさな…」と思っている人もいらっしゃるかもしれませんが、今回ご紹介する内容は、2000年にイギリスで証明された事実です。

なかなか禁煙できない理由とは?

「禁煙しようと思ってるんだけどなかなか踏み切れなくってね」
「禁煙に何度もチャレンジしてるんだけどどうしても続かなくって…」
こんな経験がある人は少なくないのではないでしょうか。

ただそのときに「どうして踏み切れないのか」「どうして続かないのか」を踏み込んで検討する方は多くはないと言われています。ここではそんな「禁煙できない理由」を考えてみます。

1:喫煙にメリットを感じている

なかなか禁煙できない人は”喫煙のメリット”を中心に考えていることも多いと言われています。

例えば
・喫煙所にしかないお付き合い
・ストレス解消
・気持ちを切り替えるきっかけ
など、喫煙にはさまざまなメリットがありますよね。

ただしタバコを吸わない人はそうしたメリットを”喫煙”以外の方法で満たしているはずです。
たとえば、ストレス解消や気持ちの切り替えは、コーヒーなど飲み物やちょっとした休憩・体操などでかなえられるかもしれません。
他にも、喫煙をしなくても、心と体、時間をより有効に使う方法が見つかるかもしれませんね。

2:禁煙を決意する強い動機がない

禁煙を成功させるためには「動機付け」も重要だと言われています。例えば「健康に悪いから」というのは、一見しっかりとした動機に見えますがやや曖昧です。

それでは下記では、実際に「喫煙がどう健康に影響するのか」について、研究データを基に見ていただくことで、禁煙への後押しをさせていただければ幸いです。

吸うか吸わないかで、寿命や病気のリスクにどの程度差が出る?

喫煙者の死亡率や寿命は、
・1日の喫煙本数
・吸いはじめた年齢
・吸い込みの深さ
などによっても変化すると言われていますが、今回は2000年にイギリスのBritish Medical Journal(BMJ)で発表された研究をご紹介します。

1:タバコ1本で縮む寿命は平均で11分

2000年にBMJで発表されたブリストル大学の研究によると、この研究は男性に限られますが、喫煙者と非喫煙者平均余命の差を一生の平均喫煙本数で割ったところ、タバコ1本が平均して11分寿命を縮めるということがわかりました。
強引に平均した数値であるため、実際どの程度の確からしさかはわかりませんが、少なくともタバコを1本吸うたびに寿命を削っている、ということは頭に置いておくべきかもしれません。

2:肺ガンのリスクは男性で4.4倍、女性で2.8倍

国立がん研究センターの解析によると、「たばこを吸っている人のたばこを吸ったことがない人に対する肺がんの相対リスクは、男性で4.4倍、女性で2.8倍」といわれています。また「肺がんのタイプ(組織型)別では、扁平上皮がんの相対リスクが男性11.7倍、女性11.3倍で、腺がんについては男性2.3倍、女性1.4倍」と喫煙によって、扁平上皮がんのリスクが大幅に上がることがわかります。

ちなみに、近年「喫煙率が下がっているのに、肺がん死亡率が上がっている」=「タバコは肺ガンには影響しない」という考えを持つ人が増えているそうですが、「それは間違った認識である」と考えている専門家が多いと言われています。なぜなら「現在肺がんにかかっている、もしくは肺がんで亡くなっている人たちは、30~40年前にタバコを吸っていた人たち」だからです。

タバコは吸ってすぐに肺ガンになるわけではありません。何年、何十年と経ってから発症することが多いとされています。30~40年前というと、電車の車内や映画館の中ですらタバコを吸っていた世代の人たちですので、肺がん死亡率が上がっているのは当然の結果であると考えられます。禁煙への取り組みが本格化してきたのはここ10年くらいですので、その結果が反映されるのは今から20~30年後くらいだと考えられます。

3:うつ病や高血圧などの病気のリスクも上昇させる

タバコは、肺ガン以外にもさまざまな病気のリスクを上昇させることがわかっています。血流が悪化したり、血管に負担がかかったりするため、高血圧や糖尿病といった生活習慣病から、脳梗塞や心筋梗塞まで、多くの病気への影響が懸念されているようです。また肺ガン以外のガンに影響している可能性も高いと言われています。

タバコはストレス解消法の一つとして用いられることも多いのですが、
・うつ病
・胃潰瘍
・喘息
など、ストレスが原因となることも多い病気の発症リスクを高めている可能性が指摘されています。

中には「禁煙は抗うつ薬よりも効果がある」と考えているお医者さんもいるようなので、心身の不調に悩んでいる場合には、まず禁煙から取り組んでみてもいいかもしれませんね。

副流煙の家族への害は?

タバコの煙は大きく3つの種類にわけられます。
【主流煙】:喫煙者が吸う煙
【呼出煙】:喫煙者が吐き出した煙
【副流煙】:タバコから立ち上る煙

中でも一番有害物質が多いと言われているのが【副流煙】です。ここではそんな副流煙が与える家族への影響について見ていきましょう。

1:家族のガンの死亡率を上げる

2016年8月31日、国立研究開発法人国立がん研究センターによって、受動喫煙による肺ガンのリスクが「ほぼ確実」→「確実」に引き上げられました。つまり「自分がタバコを吸っていなくても、周りにタバコを吸っている人がいれば肺ガンになる確率が上がる」ということが裏付けられたのです。

現在はまだデータが不十分とされていますが”胃ガン”・”乳がん”・”膵臓ガン”などのリスク要因となっている可能性も指摘されています。数年後にはこれらへの影響も確実視されるようになるのかもしれません。

2:子どもの突然死(SIDS)やアレルギーの発症リスクを上昇させる

子どもが受動喫煙してしまうと、乳幼児突然死(SIDS)発症リスクを上昇させることがわかっています。SIDSとはこれまで元気だった赤ちゃんが眠っている間に突然亡くなってしまう病気です。6000~7000人に1人の割合で発症すると言われていますが、両親が喫煙している家庭ではその確率が4.7倍高かったという報告もあるようです。

またSIDSだけに限らず、喘息やアレルギーの発症リスクも上昇させる可能性があるとも言われています。一度発症してしまうと、タバコの煙が悪化の原因となることも多いので「まずは両親の禁煙を」と指導されることも多いようです。

3:お腹の赤ちゃんの発育を妨げる

喫煙はその場にいる家族だけでなく、まだ世に生まれていないお腹の中にいる赤ちゃんにも影響を与えると言われています。

受動喫煙によって母体の血流が悪くなってしまうと、赤ちゃんに十分な酸素や栄養が行き渡らずに、低体重で産まれてしまったり、体や脳の発達が遅れて障害が残ってしまったり、早産になってしまったりする可能性があるようです。

4:子どもの将来の喫煙率を上げる

家庭内に喫煙する人がいると、将来子どもが喫煙する確率も上がると言われています。

タバコを吸わない人にとっては「タバコの煙=嫌なもの」ですが、小さいころからタバコの煙がある環境に慣れてしまっていると、抵抗感がなくなってしまうんだそうです。また家の中にいつでもタバコがある状態だと、子どもが「好奇心で吸ってみる」ということも可能となってしまうため、喫煙の低年齢化にも繋がってしまうと言われています。

今こそ禁煙にチャレンジする機会かもしれません

禁煙外来などを活用し、禁煙にチャレンジ!

リスクを最小限に抑えるためには、禁煙が最も確実で効果的であることは間違いありません。しかし「どうしても自信がない」「失敗を繰り返している」という場合には、まずは本数を減らすなどを試してみるのも1つの手です。
最近では禁煙外来を設けている病院も増えてきているので、病院で処方されるニコチンパッチやお薬を使って禁煙にチャレンジしてみるのもいいですね。

肺を患って死を迎えるのは苦しい

筆者は介護職という仕事柄、肺を患った人とも関わってきましたが「いつ死ぬのかなんてちっとも怖くない。それよりも『いつまでこの苦しみが続くんだ』ということの方がよっぽど怖い」と話していた方もいらっしゃいました。肺機能が低下すると、常に息苦しさを感じるようになります。少しずつ少しずつ何カ月も何年もかけて苦しくなっていくため”死ぬこと”よりも”死ぬか生きるかギリギリのところまで苦しくなること”の方が怖いんだそうです。

禁煙を始めるのなら、「いつか」ではなく「今から」。今がこれからの人生の中で一番若いのです。将来のリスクを少しでも下げるために、禁煙を始めてみませんか?

<参考サイト>

<著者プロフィール>

■守城 美和(かみしろ・みわ)
介護福祉士として、老人・障がい者(児)介護の仕事に携わってきたが、結婚・妊娠を機に離職。現在は「インターネットで検索しても答えがなかなか見つからない」という自身も体験してきたもどかしさを一人でも多くの人に解消してもらえるよう、子育てをしながらWebライターとして活動中。得意分野は”医療”と”福祉”

<監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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