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2016.09.14

小林麻央さんも闘う「若年性乳がん」の真実|30代患者の約6割は自己発見で受診している

東洋経済オンライン

世界的規模でピンクリボンのような乳がん啓発キャンペーンが行われているが、やはりカギを握るのは早期発見だ(写真:wavebreakmedia/PIXTA)

世界的規模でピンクリボンのような乳がん啓発キャンペーンが行われているが、やはりカギを握るのは早期発見だ(写真:wavebreakmedia/PIXTA)

歌舞伎俳優・市川海老蔵さんの妻、小林麻央さんが35歳以下で発症する若年性乳がんの闘病中で、9月に開設されたブログが注目されている。そんな中、会社員の30代のA子さんは、ふと「自分は大丈夫だろうか」と考えるようになったという。母や祖母など親族に乳がん患者はいないが、祖父は胃がんで亡くなった。「親族にがん患者がいると乳がんになりやすいのではないか」と思い、検査を受けるべきかどうか悩んでいる。

そこで若年性乳がんについて、乳がん治療のスペシャリスト、がん研有明病院乳腺センターの大野真司センター長に話を聞いた。まずは、昨今、若年性乳がんが増えているといわれる現状について、大野センター長は次のように説明する。

「国立がん研究センターがん対策情報センターの年齢別乳がん罹患率の推移では、39歳以下は5.9%です。圧倒的に40代以降の乳がん罹患率は高く、日本では50代~60代での乳がん罹患率が急上昇しています。国際比較のデータでは、先進国は50歳以上の割合が高く、開発途上国は49歳以下の割合は高い。かつて日本も1975年頃は、49歳以下の割合が高かったのですが、現在は逆転しています。それは、細胞の遺伝子変異と食生活に関係していると考えられますが、はっきりしたことはまだわかっていません」

気になる家族性乳がんとのかかわり



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閉経前の乳がんのリスク要因は、飲酒、喫煙、高身長、出産時の体重が重い、初経年齢が早いなどはほぼ確実で、夜間勤務も可能性があるとされる。逆に、発症リスクを減少させる要因は、妊娠、出産、授乳、初産年齢が低いとされるが、小林麻央さんのように2児の母でも若年性乳がんになるため、これらの要因に当てはまるからといって乳がんになる、ならないとはいえないのが現状だ。

がんは、細胞の遺伝子変異がかかわっている。中でも、がんを抑制する「BRCA1」と「BRCA2」の遺伝子変異があると、がんの発症リスクは高い。米国女優のアンジェリーナ・ジョリーさんは、「BRCA1」に変異があったことから、乳がんと卵巣がんの発症リスクを抑えるために予防的に乳房と卵巣、卵管を摘出する手術を受けた。日本でも、明らかに乳がんや卵巣がんのリスクの高い遺伝子変異を持つ人に対しては、予防的な切除が行われるようになっている。

「若年性乳がんイコール、BRCA1やBRCA2の変異がかかわるわけではありません。アンジェリーナさんのように、親族の中に乳がんや卵巣がん、前立腺がんなどたくさんのがん患者さんがいるケースではリスクは高まり、それを家族性乳がんと称します。遺伝子を調べれば変異はわかり、当院でも20例以上の予防的な卵巣・卵管切除を行っています。しかし、若年性乳がんの人のすべてがそうではないのです」(大野センター長)

ただし、若年性乳がんは、発見されたときに免疫をつかさどるリンパ節に転移した状態で見つかることが多く、進行は比較的早いと考えられている。また、乳がんは女性ホルモンの影響を受けやすく、それを遮断するホルモン療法が行われるが、若年性乳がんでは効果がないことも珍しくない。さらに、がんの分子を狙い撃ちにする分子標的薬で効果がないケースもあり、抗がん剤による治療が行われるのが一般的だ。近年、抗がん剤には効果的な吐き気止め薬が登場し、体力の低下は防ぎやすくなっているが、髪の毛が抜けるといった副作用は依然としてある。

「当センターでは、早期がんで見つかり手術のみで薬物療法が不要となった若年性乳がんの患者さんは多い。また、乳房温存よりも乳房の切除と再建を選択する方は増えています。日本乳癌学会の34歳以下の5年生存率は89.8%で、35歳から50歳の94.5%と比べて低いのですが、決してあきらめるような状況ではありません」

大野センター長は、若年性乳がん患者が、手術後に再発予防の治療を受けつつ妊娠や出産ができるようにするため、世界的な共同研究にも参加している。

定期的な自己触診が早期発見のカギ

がん研有明病院乳腺センターの30代の乳がん患者の約6割は、自分でしこりに気づくなど、自己発見で受診している。大野センター長によれば、国内の乳がん患者の約8割は、自分でしこりに気づいているそうだ。そのため、定期的に自分で触って調べる触診が重要になる。その方法を大野センター長が教えてくれた。

(1)生理が始まって1週間後、乳房のハリや痛みがない状態のときに、月に1回チェックする。

(2)入浴時に石けんがついた手で触れると、乳房の凹凸はわかりやすい。

(3)右乳房は左手で、左乳房は右手で行う。

(4)右乳房を調べるときには、右腕を上げて、左手の4本の指をそろえ、「の」の字を書くように触れていく。脇の下から乳首まで、硬いしこりやこぶがないかをチェックする。

(5)乳房や乳首を絞るようにして、乳首から分泌物が出ないかもチェックを。

(6)鏡を見ながら、両腕を上げて、両乳房のひきつれ、くぼみ、へこみ、乳輪の変化がないかを確認する。

「40歳以降の女性は、乳がん検診を受けることが大切ですが、30代の方は、ご家族やご親族に乳がんや前立腺がんなど、性ホルモンや家族性の遺伝子変異にかかわるがん患者さんがいなければ、その必要はありません。30代の乳房は、高密度乳腺といって、乳腺を調べるX線のマンモグラフィーではがんを判別しにくい場合が多く、被曝の問題もあるからです。定期的な自己触診により、異変があったときには乳腺外科医がいる医療機関を受診するように、心掛けていただきたいと思います」と大野センター長はアドバイスする。

がんは今のところ誰にでも起こりえると考えられるだけに、自己触診を忘れずに。

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安達 純子:医療ジャーナリスト

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