メニュー

2021.12.25

目指すのは「自分らしく暮らせる空間」〜シニア世代の片づけの進め方〜

kencom公式:ライフオーガナイザー® ・門傳奈々

シニア世代の片づけは、「出来ないこと」と「出来ること」とを考えながら、かつ心身の安全を考慮する必要もあります。

しかし目指すところは他の世代と同じく「自分らしく」や「ストレスなく」暮らせることです。そこで今回は、シニア世代の片づけについてお伝えします。

シニアとは何歳のことを指す?

「シニア」とひとくちにいってもその幅は広く、WHO(世界保健機関)で定められているシニア(高齢者)の定義は65歳以上、国連では60歳以上と定められており、概ね60歳以上の方といえます。

また、シニアの中でも年代によっては、アクティブシニアと呼ばれる世代もあります。このように、シニアの中でも体力や認知機能などの違いで出来ることにも差が出てきます。

ここでは、自分で片づけができるシニアの方をメインに据えて、片づけ方法を紹介していきます。自分で片づけ作業をすることが難しい、という方の場合は記事を参考にしていただき、子ども世代に手伝ってもらったり整理収納サービスを利用した際にお伝えいただければ作業がスムーズになります。

シニアの片づけの目的は?

これまでの暮らしと異なり、残りの人生を見据える世代でもあるシニア世代。今まではものに囲まれた暮らしが「豊かさの象徴」に感じたり、ものをたくさん持っていることで「幸せを感じる」ことも多かったかと思います。

しかし、年齢を重ねるにつれて片づけをするのがだんだんと難しくなるため、心の内側に目を向けてみましょう。「これがあると自分らしく穏やかに暮らせる」とか「自分が生き生きしていられるのはどんな時?」についてじっくり考え、残りの人生で大切にしたいもの・ことを片づけの目的や目標に反映させてみてください。

例えば「家族と仲良く暮らしていきたい」のであれば、家族が使うダイニングテーブル周りをきれいに整えたり、共用部分を優先的に片づけていくことで片づけの目的やゴールに近づきます。

また、「趣味の時間を充実させたい」のであれば、趣味に時間を多く割けるように家事などを効率化して自分時間を作り出すことが大切になるでしょう。そのためには、家事をする道具を入れる場所を整えたり、掃除に時間がかからないように家の中のものを減らして管理しやすくする必要があります。

このように、まず目的を考えてからどう作業に落とし込んでいくのかと整理していくと、片づけ作業にも前向きに取り組めるのではないでしょうか。

シニアの片づけの進め方。キーワードは「安・近・単」

片づけの目的が定まったら、作業に入っていきます。シニアの片づけで覚えておきたいキーワードは「安・近・単」です。

「安」 :安心・安全を優先!

キッチンマットをなくせば、つまずきを防止することも。

キッチンマットをなくせば、つまずきを防止することも。

シニア世代は、どうしても体の機能や認知機能が低下します。その低下を無視して今まで通りのものの置き方などをしていると、転倒や怪我のリスクがあるのです。

そのリスクを避けるためには、「動線上にものを置かない」ことが大切になりますし、上からものが落ちて怪我をするのを防ぐためには「手の届きにくい場所にものをしまわない」といったことを注意する必要があります。

「近」 :使う場所の近くに収納

キッチンツールは出しっぱなしで調理も楽に。

キッチンツールは出しっぱなしで調理も楽に。

これはどの世代でも言えることですが、使う場所の近くに収納することで「取り出しやすさ」と「戻しやすさ」が両立できます。例えば、同じキッチン用品でもフライパンはコンロ下に、水を入れてから使用する鍋はシンク下に収納する、といった使用場面を重視して収納場所を決めることが大切です。

「単」 :単純な仕組みを用いる

書類や本もボックスにざっくり収納。「ここを探せば見つかる」という安心感。

書類や本もボックスにざっくり収納。「ここを探せば見つかる」という安心感。

シニア世代の片づけでは、手順をできる限り減らしたほうが作業をしやすいため「ざっくり入れるだけ収納」や「出しっぱなし収納」を取り入れてみましょう。

例えば、キッチンでよく使用するツールは入れ物ごと出しっぱなしにしておくことで、しまう際のストレスや手間が減ります。また、毎日飲む薬などもケースに入れて出しっぱなしにしておけば、飲み忘れを防ぐことができます。

片づけ作業で悩んだり迷ったときはこの3つを意識して!

「見た目」よりも「使いやすさ」を重視して

棚などに整然と収納された空間はスッキリ気持ち良いものですが、シニアの場合はそれが必ずしも正解ではありません。認知機能の低下から「見えないもの=ないもの」と扱ってしまうこともあります。そのため、見栄えよりも先述の「安・近・単」を意識し「使いやすさ」を重視した片づけをしましょう。

「手元に置いておきたいもの」から選別する

物量が多いのがシニア世代の片づけの特徴です。普通の片づけのように、ものを出して選別して元に戻すという作業の進め方でもよいですが、「手元に置いておきたいもの」を先に選ぶことからスタートさせるのも1つの方法です。

自分の好み、暮らしを楽しくしてくれる道具、残りの人生になくてはならないもの…。それらを選びとっていくことで「これから何に囲まれて暮らしたいのか」「どんな暮らしをしていくのか」が明確になるかもしれません。気軽に宝探しをする気持ちで作業にとりかかりましょう。

ものの手放し方に悩んだら

片づけ作業で切っても切れないことの1つが「ものを手放す」ことです。作業を進めるためには、ものの数を減らしていくことが必要になります。シニアの方のご家庭から出る不用品で多いものが、以下のようなものです。

・たんすなどの大型家具
・着物
・洋服
・家具、家電
・オーディオ類
・食器
・骨董品

多くの方が思い入れやそのものの価値のことを考えると、簡単に手放すのが難しいようです。捨てることを避けたい、また、リサイクルショップで二束三文で売られるくらいなら手元に置いておきたいとおっしゃる方も多いです。以前の記事でも紹介した方法も参考にしつつ、「どのような方法が自分は手放しやすいか」を考えることも大切です。

「捨てる」から始めないシニアの片づけ

子どもに言われてなんとなく片づけ始めた、という方も多いかもしれません。しかし、子に言われるがまま、もしくは子に勝手に進められる片づけほど苦痛なものはないでしょう。

自分の片づけスイッチが入らない限り、作業ははかどりません。まずは「捨てる」手を止めて、「自分にとってのこれからの暮らし」に想いを馳せてみませんか。「自分にとってどれが大切でどれは手放せる」という判断基準が明確になったとき、片づけ作業がぐんと進みます。

片づけたいけれども自分で片づけるのが大変、子どもに頼みづらい、そんな時は我々整理収納のプロや家事代行サービスを依頼してみましょう。自分で作業するよりも短時間で作業が完了できて、より効率的です。ぜひ今回紹介した内容を参考にしてみてくださいね。

▼門傳さんの過去の記事もチェック!

著者プロフィール

記事画像

■門傳奈々(もんでん・なな)

ライフオーガナイザー(R)、メンタルオーガナイザー(R)、シニア生活環境オーガナイザー、整理収納アドバイザー1級。東京都在住。夫と子ども3人の5人家族。
結婚を機に国内外の引越しを経験する。その中で「暮らしを整えること」が人生において大切な軸になると感じ、2017年にライフオーガナイザー1級を取得。誰でも簡単にできる片づけの方法を伝えるため、講座の開催や整理収納に関する記事の執筆、個人宅を訪問しての片づけ作業を行っている。

この記事に関連するキーワード