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2021.08.11

早めの対策が吉!専門医が教えるオーラルフレイル予防7つの習慣【オーラルフレイル・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

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50代ごろから始まり、放っておくと将来の寝たきりのリスクを2倍以上にもあげてしまう「オーラルフレイル」。このオーラルフレイにならないための習慣は、日常生活のちょっとしたコツにあります。前編のセルフチェックで当てはまった方も、そうでなかった方も、この記事の7つの習慣を実践して、病気の予防&改善を目指していきましょう!
教えていただいたのは、前編に引き続き東京歯科大学名誉教授の櫻井薫先生です。

オーラルフレイルの検査と治療

オーラルフレイルの症状がある場合は、治療が必要な「口腔機能低下症」かどうかを判断する7つの検査をします。検査では専用の計測器を使って診断していきます。

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検査の結果、3つ以上の項目に当てはまると「口腔機能低下症」と確定されます。

治療は、それぞれの症状により変わりますが、「虫歯や歯周病、かみ合わせ治療などの、歯の形態の回復」が第一ステップ。その上で、「口の筋力を鍛えるリハビリ」「生活習慣と食習慣の指導」の2つを行います。一般的な歯の治療は1〜2ヶ月で終わりますが、どんなに歯が綺麗になっても、オーラルフレイルは治りません。口の機能全般を向上させるための多面的なアプローチが必要です。また、治療には持続が不可欠なので、定期的に通って、患者さんのと歯科医院と二人三脚で、口の機能の向上や維持を目指していきます。

オーラルフレイル予防 7つの習慣

では、私たちが自分でオーラルフレイルを予防&改善するには、どんなことから始めたら良いのでしょうか?櫻井先生直伝の、効果的な7つのセルフケア方法を教えていただきました。

その1:口の体操

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口の筋力の低下を防ぐためには、舌を使った体操が効果的です。ここでは、2つの体操をお伝えします。

①舌のストレッチ・・・舌を思い切り突き出し、上→右→下→左に円を描くように、出来るだけ大きく円を描くように舌を伸ばします。こうすることで、舌の可動域が広がり、スムーズに動けるようになるので、食べ物を噛んだりのみ込みやすくなるだけでなく、滑舌がよくなって、唾液の分泌も増えます。

②舌の筋トレ・・・スプーンの背を舌に押し当て、スプーンは舌を、舌はスプーンを押し合います。舌の先にスプーンの背を当てます。5回を目処にやってみましょう。

どちらのトレーニングも家事をしながら、テレビを見ながら手軽に出来るものなので、日常生活に取り入れてみましょう。

その2:歯と舌を磨く

歯は、食後と寝る前にしっかり磨きましょう。歯間ブラシやフロスも、1日1回は使うことを習慣にしましょう。

同時に、細菌が集中している「舌磨き」も取り入れることをお勧めします。舌の汚れ(舌苔)は、口臭の原因にもなります。専用の「舌用歯ブラシ」や「タンクリーナー」などを使って、一日一回、寝起きなどに、汚れを取り除きましょう。

その3:滑舌よく、たくさん話す

滑舌よくはっきりと話すためには、口を大きく開けたり、すぼめたり、舌を活発に動かしたりしなくてはいけません。はっきり話すことを意識するだけで、唇、頬、舌、頬などの筋肉が満遍なく鍛えられます。今は、なかなか人との交流し辛い状況にありますが、感染対策を徹底し、オンラインを利用するなどの工夫をして、積極的に話す機会を作ることとは大切です。

特に、男性はリタイアすると家に篭りがちなので、ご家族やお友達との会話はもちろん、仕事や社会活動に参加する機会を作って会話を楽しんでほしいと思います。

その4:口角を上げてよく笑う

笑うことが、認知機能や免疫力を上げ、ストレス解消になるなど健康と繋がりがあることは、多くの方がご存知だとは思いますが、笑うことは、オーラルフレイル対策にも非常に効果的です。

口を大きく開けて、声を上げて笑うとき、口から喉までのあらゆる機能を使います。刺激されて、唾液も出ます。たくさん笑えば、その分口の周りの筋トレをしているようなものですから、好きなことをしたり、人と関わって、積極的に笑うようにしましょう。

その5:いろいろなものを食べる

口や舌、喉や頬といった口の周りの筋肉を鍛えるためには、固いものを噛んで、バランスよく十分な栄養ををとる必要があります。

高齢の人は菓子パンやうどんなどの柔らかい食品に偏りがちで、固い肉や野菜をあまり食べないケースが多いのですが、このような食事を続けていると、糖質と脂質の摂取量が増える代わりにタンパク質、ミネラル、ビタミン、食物繊維が不足してしまいます。

筋肉の維持には、肉や魚、卵などのタンパク質を積極的に食べるようにしましょう。スーパーやコンビニなどのお弁当で済ませたい時などは、納豆やサラダを単品を添えるなどの工夫で補うようにしましょう。

その6:しっかりと味わう

味わうことは、よく噛むことでもあります。その結果、口や舌の筋肉も鍛えられますし、唾液がよく分泌されて、食べ物も消化されやすくなります。よく噛むことで、早食いが抑えられることから、食べ過ぎ予防にもなるので、生活習慣病や肥満などで体重を減らしたい場合にも効果的です。また、味覚は五感の1つで、脳と連動しています。食事を味わうことで、感じる匂いや、温度、味や食感などが刺激となって、脳を活発にします。味わって食べることは、認知症予防にもなると考えられています。

その7:かかりつけ歯科医を持つ

信頼のできる、かかりつけ歯科医を持って、半年に一度は定期健診を受けましょう。歯を失う二大原因は虫歯と歯周病です。定期的にメンテナンスを受けていると、新たな虫歯や、歯周病を放置して突然歯が抜けてしまうなどというリスクを避けることができます。また、定期的に入れ歯の調整や修理をしておくことは、噛む力を保つ上で非常に重要です。 

メンテナンスの際に、歯ブラシのチェックや指導をしてもらうことも、日々のセルフケアのモチベーションにもつながるので、是非積極的に活用してもらいたいと思います。

7つの習慣で、歯から健康な未来を目指そう!

繰り返しになりますが、オーラルフレイルの改善に取り組むことは、将来の命に関わること。単なる歯の問題ではありません。セルフケアに早くから取り組めば、その分効果は早く出ます。美味しいご飯をしっかり噛んで味わい、人と話して笑いあって、歯科でしっかりとメンテナンス。今回お伝えした「7つの習慣」を取り入れて、健康な未来を手に入れてください!

櫻井 薫(さくらい・かおる)先生

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東京歯科大学名誉教授・こばやし歯科クリニック顧問

【プロフィール】
1978年に東京歯科大学卒業後、東京歯科大学大学院歯学研究科修了し、米国タフツ大学歯学部に2年間留学後、1997年に東京歯科大学の主任教授となる。
2019年に東京歯科大学を定年退職し、現職。

【受賞歴】
2016年日本老年歯科医学会老年歯科医学賞受賞 、日本補綴歯科学会学会論文賞受賞、2020年日本歯科医学会会長賞 、2021年日本老年歯科医学会学会功労賞、日本補綴歯科学会特別功労賞を受賞

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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