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2021.08.02

「のどが渇いた」は水分が何%減ったら感じる?夏の上手な水分補給のすすめ

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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夏も本番、今年も猛暑が予想されています。熱中症予防のためにも、こまめな水分補給は欠かせません。

ところで、どうして水分補給がこれほど大事なのでしょうか。水は栄養素に数えられてはいませんが、人が生きていくのに欠かせないもののひとつです。

人間の身体は、約60%が水分でできている

水分は私たち人間の体内に最も多く含まれる成分です。
性別や年齢での差もあり、胎児では体重の約90%、新生児では約80%、子どもでは約70%、成人では約60~65%、老人では50~55%と言われています。このように、年齢を重ねるとだんだん減っていく傾向にありますが、短期間の中では常に一定に保たれるようになっており、全体の1/3は細胞内、2/3は細胞と細胞の間に存在する細胞間液と血液に存在しています。

体内で様々な働きをしている水分

水は栄養素には数えられていませんが、体内で大きな役割を果たしています。

まず、血液やリンパ液の成分として、栄養素などの多くの物質を全身に運ぶために欠かせないものです。また、あらゆるものの中でも比熱が大きく、外気の影響を受けにくいのです。つまり、体温を一定に保つのに大きな役割を担っています。
さらに、体温が上がってしまった場合は汗となって汗腺から染み出し、蒸発するときに熱を拡散することで体温を下げてくれます。
体表に存在する水分は皮膚の乾燥を防ぎ、正常な状態を保ち、細菌やウイルスの侵入を防ぐのにも一役かっているのです。

「のどが渇いた」は何%から?

人が「のどが渇いたな」と感じるのは、身体の水分が何%減ったら感じるのかご存じですか?

答えは1%。わずか1%を感じ取ってしまうほど、人にとって水分は大切だということです。ちなみに6%損失で頭痛、吐き気など体調不良を引き起こし始め、10%で筋肉の痙攣や意識の混乱を起こし、腎機能が失われます。
20%損失で生命に関わると言われています。水分補給ができないと4~5日で命を落とすこともあるほど、生命保持に大変重要な成分となります。

熱中症のメカニズムと危険性

水の重要性をお伝えしたところで、熱中症についてお話ししましょう。

熱中症とは体温を平熱に保つために汗をかき、体内の水分や塩分(ナトリウムなど)が減少したり、血液の流れが滞ったりすることで、体温が上昇して重要な臓器が高温にさらされることにより発症する障害の総称です。

運動や作業をすると、体内に熱が生まれます。通常なら体温調節機能により、末梢の血管が拡張し、皮膚に多くの血液が流れ込むことで熱を身体の外に放出しようとします。また、汗をかくことで上がった体温を下げようとしてくれます。
ところが、あまりに暑い環境に長く居ると、体温調節機能が乱れて体外への熱の放出ができなくなり、熱がこもって体温が上昇します。それを下げようと、急激に大量の汗をかくと、体内の水分と塩分が失われ、体液のバランスが崩れてしまいます。それが筋肉や血流、神経など身体のさまざまな部分に影響を及ぼします。

症状はさまざま。命に関わることも

熱中症は、少し休んで回復できる軽度なものから、命に関わる重度までその症状は様々です。

軽度なものは、めまいや立ちくらみ、手足のしびれ、筋肉痛、気分の不快感などです。症状が悪化するにつれて、頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、軽い意識障害などが起こります。重症になると意識障害や歩行に支障をきたす運動障害、肝機能異常などが見られます。

また、熱中症が進むと血液濃度が濃くなり、いわゆるドロドロした状態になることも。放置すると血栓ができて、脳の血管を詰まらせる恐れもあります。気づいた時には症状が進んでいて危険な状態になっていることもあるので、決して軽んじてはいけません。

一日に必要な水分はどれくらい?

通常、人が1日に排出する水分は約2.5Lです(尿:約1,500ml、汗・呼気:約900ml、便:約100ml)。

これを補うために、一般的な生活をしている人では食物で約1,000ml、飲料で約1,200ml、代謝水(エネルギー代謝の時に生まれる水分の事)で300mlの水分を摂取していて、合計2.5Lでちょうどバランスがとれています。
しかし、夏場は汗の量が増えます。食物由来、代謝水由来の水分はそこまで増えないので、飲料で一日最低1,200ml、できればそれ以上を意識し、こまめな摂取を心がける必要が出てくるのです。

水やお茶を推奨。スポーツドリンクは飲み過ぎ注意

水分補給というとスポーツドリンクを選んでしまいがちですが、スポーツドリンクには塩分と糖分も多く含まれています。口当たりがよいためごくごくと飲めるものの、不必要なものまで摂取していることも。

糖分は大切なエネルギー源ですが、ビタミンB群が不足することで糖分が代謝できずに起こる「ペットボトル症候群」(肥満や急性糖尿病)の原因になることもあります。通常であれば、ノンカロリーの水やお茶で十分です。
※ハイポトニック飲料という低張性で濃度が低めになっているタイプのスポーツドリンクもあります。

脱水症状や熱中症時はスポーツドリンクの方が良い場合も

スポーツドリンクは、運動や日常生活などで失われた水分、ミネラルを効率よく補給する目的で作られた飲料です。

大量に汗をかくと、体内の水分とともに塩分やミネラルが失われてしまいます。
スポーツドリンクは、身体に吸収されやすいような浸透圧となっていて、水よりも速やかに体内に吸収されるのが特徴です。そのため、脱水症状や熱中症時はスポーツドリンクの方が良いということになります。

熱中症は家の中でも起こります。スポーツドリンクは手作りできるので、家族が熱中症の症状を感じた時などは良いでしょう。

簡単に作れるお手製スポーツドリンク(1L分)

水 1L
食塩 2.5g
砂糖 40~60g
レモンやライムの搾り汁 40~50g

<作り方>
1.ボウルに水以外の材料を入れ、少量の水でよく溶かします。
2.残りの水を全てボウルに入れ、溶けるまでかき混ぜたら完成。
※水をミネラルウォーターにすると、微量ミネラルが摂取でき、より効果的です。

熱中症にならない工夫を

日常生活での熱中症予防のポイントは

1.規則正しい生活
2.栄養バランスの取れた食事
3.こまめな水分補給
4.エアコン・扇風機を上手に使用する
5.シャワーやタオルで身体を冷やす
6.暑いときは無理をしない
7.涼しい服装にする。外出時には日傘、帽子を着用する

等です。
何でもそうですが、健康な身体は1日で作られるものではありません。規則正しい生活習慣を続けることが大切になります。元気にこの夏を過ごしましょう。

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前田 量子(まえだ・りょうこ)

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管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、最新著書『おうちで一流レストランの味になるロジカル洋食』(全て主婦の友社)が好評発売中。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。