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2021.07.14

人には言えない更年期の悩み…医師に聞く「多汗」「デリケートゾーンの臭い」悩みの処方箋

kencom公式ライター:森下千佳

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多汗、デリケートゾーンの臭いや乾燥、違和感など、閉経前後の女性に生じるさまざまなトラブル。加齢による変化には抗えませんが、きちんとケアをした人とそうでない人とでは、症状が軽くなるだけでなく、将来の腟の状態が変わるのだとか。

今回は、なかなか人には相談しにくい、汗や臭い、デリケートゾーンのお悩みを、女性のトラブル解決の専門家・京都大学医学部 産婦人科の池田裕美枝先生に伺いました。

多汗、ほてりの原因は?

更年期の不調で特に多いホットフラッシュは、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経が乱れる事で起こります。自律神経は、昼間や活動しているときに活発になる「交感神経」と、夜間やリラックスしているときに活発になる「副交感神経」の2つがバランスよく働いているのが健全な状態ですが、このバランスが崩れると体温調節機能がうまくできなくなるのです。

その症状には個人差があり、「暑くないのに突然カーッと顔や首が熱くなり、大量の汗が出る」「顔だけ熱っぽくなりのぼせたような状態なのに、手足が冷える人」「とにかく全身がすごく暑く汗が止まらない」など様々。夜中のホットフラッシュが原因で不眠になる方もいます。

辛い場合は婦人科でホルモン補充療法も

首筋を冷やす、通気性の良い衣類を着るなど基礎的な対策で改善しない場合は、ぜひ婦人科に相談しましょう。

エストロゲンの減少が原因の場合は「ホルモン補充療法」で改善する可能性があります。エストロゲンが補充されると乱れていた自律神経のバランスが整い、ホットフラッシュだけでなく、頭痛や気持ちの落ち込み、記憶力や集中力が戻るなど多くの改善が見込めます。

即効性が高く「もっと早く始めればよかった!」と悔しがる患者さんもいるほどで、症状が改善することで自信を取り戻して前向きになる人もたくさんいます。副作用もそれほどありません。

多くの女性が悩んでいる!デリケートゾーンのトラブル

年齢とともに顔にシワが現れるように、閉経後は腟も変化して萎縮します。
エストロゲンの分泌量が低下すると、外陰部や腟の粘膜、皮下組織は潤いを失い、萎縮し脆弱化。腟壁は弾力を失いペラペラになり、傷つきやすくなります。こうした膣周りの変化によって起こる泌尿器、生殖器のトラブルを閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)といいます。

症状は人それぞれで、外陰部や腟の乾燥による痛み、臭い、違和感、灼熱感、かゆみ、尿失禁、頻尿・尿意切迫感、性交痛など多岐に渡ります。

雑菌繁殖が臭いの原因に

閉経前後のデリケートゾーンの臭いはGSMの特徴的な症状といえます。

膣内にはさまざまな菌が生息し「膣内フローラ」を形成していますが、中でも善玉菌といわれる「デーデルライン桿菌(かんきん)」は、悪玉菌の侵入を防ぎ、女性の膣を守ってくれる大切な菌。
この「デーデルライン桿菌」は、女性ホルモンが乱れると減少してしまうので、膣内の自浄作用が低下し雑菌が繁殖しやすくなって、臭いの原因になることがあります。

早めのケアで差がつく!更年期のデリケートゾーンケア

外陰部の臭い対策は、「清潔」と「保湿」の2つがカギ。

デリケートゾーンは、ひだや溝のある複雑な形状である上に、汗や、尿、便、おりもの、経血などが混じり合う場所です。そもそも汚れが溜まりやすく、そこで雑菌が繁殖すると臭いやかゆみの原因になるので、丁寧に優しく洗うことを心がけましょう。

デリケートゾーンの正しい洗い方

デリケートゾーンを清潔に保つ事は大切ですが、洗い過ぎは逆効果!膣の中まで洗ったり、ボディソープを使ってゴシゴシ洗うのはNGです。また、トイレのビデ機能を使って洗う方もいますが、絶対にやめましょう。

スポンジなどは使わず、指の腹でアンダーヘアの周辺から膣の入り口付近までを、前から後ろ、そして中心部から外にむかってぬるま湯で優しく洗います。
石鹸を使いたい場合は、市販のデリケートゾーン専用ソープなどの優しい石鹸で、1日1回程度洗う事をお勧めします。

入浴後の保湿ケア

やさしく洗った後は、乾燥を防ぐため保湿をしましょう。

ローションや、クリーム、ジェルなど、様々なタイプの専用保湿剤が出ています。丁寧な保湿は、臭いの対策になるだけでなく、外陰部の痒みやムズムズする感じなどの不快感もケアできます。

もしも、こうしたセルフケアで改善が見られない場合には、病院でエストロゲンの腟錠を処方してもらうという手段もあります。臭いの予防だけでなく、性交痛の軽減などにもつながります。

口臭、ワキ汗、その他の部分への匂い対策は?

デリケートゾーン以外にも、閉経前後から自分の体臭が変わってきたと感じる方は多いです。
代謝が悪くなる事に加えて、加齢臭の原因でもある成分が増えること、ドライマウスによる口臭や、更年期のストレスによるワキ汗など、色々な要因が重なって起こります。

汗による臭いの対策は、早く拭き取るのが一番。制汗シートやタオルなどで、汗が酸化する前にこまめに拭き取りましょう。
口臭は、唾液の分泌量が減って口の中が乾燥した結果、自浄作用が低下して口臭の元になる菌が増えることが原因。よく噛んで唾液の分泌を促す、などの工夫も大切です。また、歯周病のケアも忘れずに。

それでも改善しないニオイは、婦人科へ相談を!

更年期に増えていく臭いの悩みは、日頃のセルフケアで、ある程度解決することができます。しかし、臭いが改善しない場合や、強くなる場合などには、他の病気が原因の可能性もありますので、早めに婦人科に相談に行かれることをお勧めします。

池田 裕美枝(いけだ・ゆみえ)

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京都大学医学部 産婦人科 医師
2003年京都大学医学部卒業。舞鶴市民病院、洛和会音羽病院にて総合診療科研修後、三菱京都病院での産婦人科研修、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科副医長などを経て現職。リバプール熱帯医学校リプロダクティブヘルスディプロマ修了。2013年米国内科学会fellowship exchange programにてメイヨークリニックで女性医療研修。1児の母 2016年「総合診療医ドクターG」に出演。日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医、日本内科学会認定医、日本プライマリケア連合学会認定医、日本医師会認定産業医

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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