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2021.07.14

介護疲れや家庭の不満が引き金に!日本人女性に目立つ更年期障害の症状とは

kencom公式ライター:森下千佳

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多くの女性が悩まされる更年期症状。心身的に様々な症状がありますが、特に日本人女性は欧米諸国の女性と比べて身体の不調よりも”心の不調”が重く出るのが特徴なのだそう。

なぜ日本人女性は心に影響を受けやすいのか。特有の背景から、更年期を軽くするためのヒントを探ってみました。お話しいただいたのは、日々多くの悩める女性に寄り添う、京都大学医学部産婦人科・池田裕美枝先生です。

池田 裕美枝(いけだ・ゆみえ)

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京都大学医学部 産婦人科 医師
2003年京都大学医学部卒業。舞鶴市民病院、洛和会音羽病院にて総合診療科研修後、三菱京都病院での産婦人科研修、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科副医長などを経て現職。リバプール熱帯医学校リプロダクティブヘルスディプロマ修了。2013年米国内科学会fellowship exchange programにてメイヨークリニックで女性医療研修。1児の母 2016年「総合診療医ドクターG」に出演。日本産科婦人科学会専門医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医、日本内科学会認定医、日本プライマリケア連合学会認定医、日本医師会認定産業医

更年期障害、実は日本特有の概念

女性の「更年期」は、女性ホルモンが急激に下がる閉経を挟んだ前後5〜10年間の時期で、一般的には45歳〜55歳頃にやってきます。
「更年期」にネガティブイメージを持つ方が多いようですが、「思春期」と同じように、誰でも通るライフステージの名称です。一方、「更年期障害」はこの時期に起こる様々な障害という意味で、全ての人に起こるわけではありません。日常生活に支障をきたすほどではない場合、障害とは言わずに、「更年期症状」と呼びます。

この「更年期障害」は、実は日本特有の概念。欧米諸国では女性ホルモンの一つであるエストロゲンの急激な変化によって、自律神経障害が起こることによる身体症状を「perimenopausal syndrome(周閉経期症候群)」と呼んでいますが、更年期障害はこれに加えて、エストロゲンには起因しなくともその人が持っている気質や体質といった「心理的要因」や、生活環境「社会的要因」が複雑に絡み合った不調全般を指します。

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症状は個人差が大きい

更年期の代表的な症状は、ホットフラッシュと呼ばれる「のぼせ」「ほてり」「発汗」です。

血管を収縮・拡張させて体温を調節する役割を担う自律神経が乱れることで、急に顔や身体が熱くなったり、頭がぼーっとしたり、症状が重い女性では夜中に異常な量の寝汗をかいてパジャマがぐっしょり濡れて不快感で起きてしまうなど、辛い症状が起こります。

対して、デリケートゾーンはエストロゲンの減少によって膣からの分泌液が減り乾燥し、膣壁(ちつへき)は潤いを失い弾力がなくなることで傷つきやすくなります。結果、陰部がむずむずしたり「性欲の減少」「性交痛」なども起こります。

エストロゲンの急激な減少に脳もついていけないため、「クヨクヨ」「イライラ」「憂うつ」「不安・焦燥感」「物忘れ・記憶力の低下」など、心に不調が起こりやすくなります。
他にも、「めまい」「手足の冷え」「だるい・疲れやすい」「不眠」「頭痛」「肩こり」「関節の痛み」など症状は多岐にわたります。症状の出方は個人差が大きく、ほとんど症状を感じないまま更年期を終える人もいれば、いくつもの症状に悩まされる人もいます。

日本人に「心の不調」が重く出るのはなぜ?

日本人女性は欧米諸国の女性と比べて、ホットフラッシュなどの身体症状よりも、気分の落ち込みなどの「精神症状」が出やすいと言われています。
その理由は、真面目で頑張り屋といった日本人女性に多い気質だけでなく、日本女性を取り囲む「社会構造」にも原因があると考えられています。

今の50歳前後の日本人女性は、妊娠年齢が上がっていることもあり子育て中の方も多いです。そこに、仕事、家事、さらには親の介護、家族との関係悪化や、職場や近隣の人間関係などが重なりストレスを抱えやすい時期。また、日本はまだまだ男性優位の価値観も根強く、こうした事柄の全てを一人で抱えてしまう女性が多くいらっしゃいます。
ホルモンのゆらぎとこれらのストレスが重なることによって、更年期障害を引き起こしてしまいやすいのです。

症状が重く出やすいのはどんなタイプ?

一般的に、真面目で頑張り屋、神経質、完璧主義といった性格の人は、更年期の症状を感じやすいと言われています。

池田先生の経験に基づく見解では、更年期の症状が重い患者さんには、「しんどいはずはないと思って、頑張る人」が多いようです。仕事、家事、子育て、介護など有償労働、無償労働問わず、バリバリと働いている方。例えば、一度の外出で用事を3つも4つも終えて帰ってきてしまうような頑張り屋の女性です。
そういう方は、ご自身が辛いことを認められず不調を我慢してしまうので、病院に相談に来るタイミングも遅れがちで、重症化しやすい傾向にあります。

その不調、もしかしたら更年期?【更年期セルフチェック】

ここまで読んで、「もしかして、最近の心のゆらぎや不調は更年期症状かも」と思ったら、まずは自分でチェックしてみましょう。
このセルフチェックは、全国の医療機関でも使われている更年期指数(SMI)いうもの。今の症状を自己採点して、簡単にセルフチェックができるので、婦人科を受診する前にぜひ試してみてください。

更年期障害 セルフチェック

1から10の症状で、当てはまるものに○印をつけ、右の欄に点数を書き込みましょう。合計点を出すと自分の状態の目安がわかります。
症状の強度の目安は以下を参考にしてください。

強・・・症状が強く、日常生活に差し障りがあるほどつらい
中・・・我慢はできるけれど、なんとかしたい
弱・・・症状は感じるが、我慢できる程度
無・・・ほとんど何も感じない

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【自己採点の評価】
0~25点:上手に更年期を過ごしています。これまでの生活態度を続けていいでしょう。
26~50点:食事、睡眠、運動など気をつけて無理のない生活を心がけましょう。
51~65点:一度、産婦人科医の診察を受け、生活指導、カウンセリング、 薬物療法などを受けましょう。
66~80点:長期間(半年以上)の計画的な治療が必要です。
81~100点:各科の精密検査を受け、長期的な治療が必要です。

セルフチェックの結果はどうでしたか?
更年期の症状は多岐に渡るため、本当に更年期なのか、他の病気で不調があるのか、私たちでは見分けがつきにくいこともあります。

今回、指数が低かった人も、自分で勝手に決めつけず、何か辛いことがあれば、一度、婦人科の診断を仰ぐことが賢明です。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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