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2021.07.07

運動嫌いに朗報!お茶会に参加するだけでも健康維持につながる驚きの理由

東京都健康長寿医療センター研究所:村山 洋史

健康維持に大きく影響するといわれる「つながり」は、年齢やライフスタイルとともに変化していきます。特に、高齢になるほど減少するつながりを維持し続けるにはどうしたら良いのでしょうか。

より健康に良い影響を与えるつながり作りのポイントは、社会参加活動にあるようです。『「つながり」と健康格差』著者で、公衆衛生学と老年学を専門に研究する村山洋史(むらやまひろし)さんに解説していただきました。

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生涯にわたり変化するつながり

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つながりを考えるにあたり、その実態を知ることは重要です。人は誰もが歳をとります。歳をとると、社会とのつながりはどのように変化していくのでしょうか。

ドイツの研究者は、277本もの論文を分析し、社会的つながりの生涯にわたる変化について調べています(1)。その結果、人が持つつながりは青年期半ば(20代)までは増大するものの、それ以降は縮小することが分かりました(図1)。子ども期から20~30代までは、学校生活や就職を通じて知り合いが増える、結婚して家族が増える、子どもが生まれて子どもを通じた知り合いが増える(ママ友・パパ友等)など交友関係が増える時期です。

一方、それ以降は退職や子どもの独立、親兄弟、配偶者、友人が亡くなるということも起こってきます。そういったライフイベントの発生とともに、つながりは減少していってしまうようです。

縦軸はソーシャルネットワーク量を表す。得点が高いほど、つながりの量が大きいことを示す。

縦軸はソーシャルネットワーク量を表す。得点が高いほど、つながりの量が大きいことを示す。

社会参加活動でつながりを維持する

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加齢とともにつながりは縮小していきますが、どうすれば維持できるでしょうか。その答えの一つは、社会参加活動にあると思っています。

社会参加活動とは、「家庭をこえた地域社会を基盤にして、同一の目的を有する人々が自主的に参加し、集団で行っている活動」と定義されます。個人活動ではなく、グループ活動であることがポイントです。
新しく人と知り合うには、何であれきっかけが必要です。しかし、先ほど説明したように、つながりを持つきっかけは年々少なくなってくるものです。そうであれば、自分から飛び込むしかありません。それが、社会参加活動というわけです。

社会参加活動といっても、中身は様々です。町内会・自治会のように地域で活動するものもあれば、商工会や同業者団体など仕事ベースの活動もあります。また、趣味やスポーツの会や、ボランティア団体なども社会参加活動に含まれます。高齢になれば、老人会のように全国に存在する組織もあります。色々とありますが、活動を通じて社会と接点を持てるという点で、社会とのつながりの一つといえます。

また、定年後の夫の社会参加が、妻の生活満足感にプラスの影響があったという研究もあります(2)。夫がダラダラと家で過ごしているよりも、何らかの社会参加活動で頑張ってくれている方が、妻も嬉しいということでしょう。

どんな形式の社会参加活動が健康に良いのか?

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多種多様な活動があるわけですが、総じて社会参加活動は高齢期の健康の維持・増進に大きなメリットを与えてくれます。
例えば死亡、認知症、要介護リスクを減少させ、抑うつを緩和し、生きがいをもたらす、などの効果が多数報告されています。中でも、趣味や教養、スポーツの会やボランティアといった、活動目的が明確で参加者同士の上下関係が少ない活動に参加している方が健康を促進するといわれています(3)。

社会参加活動の中でも、授業形式の受け身型もあれば、運動や料理のようにみんなで作業をする参加型もあります。活動形態が受け身型でも参加型でも、健康に良い影響があることが報告されています(4)。人とワイワイするのがあまり得意ではない人には朗報かもしれません。
頻度としては、趣味や学習のグループ、ボランティア活動に月1回以上参加することで、生活機能維持につながることが示されています(5)。しかし、頻度が多ければ多い方が良いわけでもないようです。
例えば、ボランティアに関する研究では、活動時間が年100時間(≒週2~3時間)程度でウェルビーイング(well-being; 身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態)が最大になり、それよりも長い時間であっても増加していませんでした(6)。頑張り過ぎず、ほどほどのペースで良いのであれば、気軽に取り組めそうです。

どういう社会参加活動が自分に合うかは、やってみないと分からない部分もあります。社会貢献したいという気持ちが入り口の人もいれば、趣味をきっかけにその輪を広げる人もいるでしょう。きっかけは人によって様々です。何に興味を持てそうか、どのくらいの頻度なら参加できそうかなど、自分に合った活動を見つけていくと良いでしょう。

グループ活動の隠れた効果

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社会参加活動は、個人ではなくグループで行う活動なわけですが、なぜグループで活動することが良いのでしょうか。例えば運動をするにしても、一人でやっても健康に良い影響はあるはずです。わざわざ皆で集まって行う意味とは何なのでしょうか。

この疑問の解明に取り組んだおもしろい研究があります。愛知県に住む高齢者約13000人を対象にし、「スポーツや運動のグループへの参加」(はい/いいえ)と「普段の運動頻度」(週1回以上/週1回未満)の2つの質問で次の4つの群に分け、どの群で将来的に要介護認定を受ける人が多かったかを調べています(7)。

1.スポーツや運動のグループに参加しておらず、週1回未満しか運動していない
2.スポーツや運動のグループには参加していないが、週1回以上運動している
3.スポーツや運動のグループに参加しているが、週1回未満しか運動していない
4.スポーツや運動のグループに参加していて、週1回以上運動している

さて、どの群で要介護リスクが高かったと思いますか。結果を示したのが図2です。

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まず、「④グループ参加・運動週1回以上群」が4つの群の中で最も要介護リスクが低いという結果でした。皆で集まって、頻度高く運動している方が要介護になりにくいということです。
一方、4つの群の中で最も要介護リスクが高かったのは「①グループ不参加・運動週1回未満群」で、④に比べて要介護リスクが1.65倍高くなっていました。

では、「②グループ不参加・運動週1回以上群」と「③グループ参加・運動週1回未満群」はどうでしょうか。③の方が実際に運動する頻度は少ないので、要介護リスクは高そうに思えます。しかし、結論は④と比べても統計学的に変わらないくらい要介護リスクは低かったのです。
「運動していないのになぜ!?」と思うかもしれません。これがまさにグループ活動の隠れた効果です。運動そのものも重要ですが、それ以上にグループに所属していることによって得られる効果が大きいことを示しています。同様の傾向は、スポーツや運動に限らず他の活動でも報告されています。

人が集まれば会話や笑顔が生まれ、役割が生じる

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理由は色々と考えられます。グループに参加することで仲間とのつながりができ、それを通して様々なサポートがもらえます。また、何の活動であれ気の合う仲間と集まるだけで楽しいものです。会話量や笑いが健康を促進する効果は多数報告されていますが、人が集まれば会話や笑顔が生まれ、それが良い効果をもたらしている可能性があります。

グループの中での役割というのも大切な要素です。社会参加活動が存続し機能するには、リーダーや世話役などの役職に就いたメンバーの貢献、頑張りが欠かせません。様々な社会参加活動において、何らかの役職経験者は未経験者に比べて将来の死亡や認知症リスクが低いといいます(8)(9)。
当たり前ですが、一人での活動には役職はありません。グループ活動特有です。活動を通した社会的役割が健康に良い影響を与えていると考えられます。

最近、緑茶の健康効果に関する研究がたくさん報告されています。主に緑茶に含まれるカテキン、カフェイン、テアニンなどの成分の効果が強調されがちですが、それだけではないはずです。
日本では、昔から「皆で集まってお茶を飲む」という習慣があります。お茶のみを通じて家族や近所の人、あるいは職場の人と築かれたつながりが、健康に好影響をもたらしていると考えられます。これもグループ活動と同様、つながりの「隠れた効果」といえます。

参考文献

(1) Wizus C, Hänel M, Wagner J, et al. Social network changes and life events across the life span: A meta-analysis. Psychological Bulletin 2013;139(1): 53-80.
(2) 片桐恵子, 菅原育子. 定年退職者の社会参加活動と夫婦関係:夫の社会参加活動が妻の主観的幸福感に与える効果. 老年社会科学 2007; 29(3): 392-402.
(3) Aida J, Kondo K, Hirai H, et al. Assessing the association between all-cause mortality and multiple aspects of individual social capital among the older Japanese. BMC Public Health 2011; 11: 499.
(4) Cuypers K, Krokstad S, Holmen TL, et al. Patterns of receptive and creative cultural activities and their association with perceived health, anxiety, depression and satisfaction with life among adults: The HUNT study, Norway. J(ournal of Epidemiology & Community Health 2012; 66(8): 698-703.
(5) Nonaka K, Suzuki H, Murayama H, et al. For how many days and what types of group activities should older Japanese adults be involved in to maintain health? A 4-year longitudinal study. PLoS ONE 2017; 12(9): e0183829.
(6) Morrow-Howell N, Hinterlong J, Rozario PA et al. Effects of volunteering on the well-being of older adults. Journal of Gerontology Series B: Psychological Sciences & Social Sciences 2003; 58(3), S137-145.
(7) Kanamori S, Kai Y, Kondo K, et al. Participation in sports organizations and the prevention of functional disability in older Japanese: The AGES cohort study. PLoS ONE 2012; 7(11): e51061.
(8) Ishikawa Y, Kondo N, Kondo K, et al. Social participation and mortality: Does social position in civic groups matter? BMC Public Health 2016; 16: 394.
(9) Nemoto Y, Saito T, Kanamori S, et al. An additive effect of leading role in the organization between social participation and dementia onset among Japanese older adults: The AGES cohort study. BMC Geriatrics 2017; 17: 297.

村山洋史(むらやま・ひろし)

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1979年生まれ。2009年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(保健学博士)。東京大学高齢社会総合研究機構、ミシガン大学公衆衛生大学院を経て、2021年より東京都健康長寿医療センター研究所・研究副部長(テーマリーダー)。2012年日本公衆衛生学会奨励賞、2015年公益財団法人長寿科学振興財団長寿科学賞、2020年日本疫学会奨励賞などを受賞。専門は、公衆衛生学、老年学。著書に『「つながり」と健康格差』(ポプラ社)。

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