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2021.05.27

家族に大腸ポリープ罹患者がいると、大腸癌リスクが高まる?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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日本人の罹患率第一位である大腸癌。早期に発見すれば、ほとんどが根治可能と言われますが、なかなか検診に足が進まない方も多いのではないでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、British Medical Journal誌に2021年5月4日ウェブ掲載された、大腸ポリープの家族歴と大腸癌リスクとの関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

大腸ポリープの家族歴と大腸癌のリスクの関係は?

大腸癌はスクリーニング(検診)の有効性が、確認されている数少ない癌の1つです。

大腸癌の多くは、腺腫性ポリープから遺伝子変異が集積して、発癌に至ることが分かっています。そのため、大腸内視鏡検査でポリープを早期発見し、それを内視鏡的に切除することにより、大腸癌は予防され、検診による生命予後の改善も確認されているのです。

家族性腺腫性ポリポーシスという遺伝性の疾患があり、これは大腸などにポリープが多発して、放置すれば高率に癌化するという病気です。

ただ、そうした病気がなくても、通常の腺腫性ポリープも家族で発生しやすい傾向はあり、大腸ポリープの家族歴は、大腸癌発症の一定のリスクであると想定されていますが、それではどのくらいのリスクがあるのか、という点についてはあまり明確なことが分かっている訳ではありません。

親や子に大腸ポリープがあると大腸癌リスクが有意に増加

今回の研究は、国民総背番号制が取られているスウェーデンにおいて、大腸癌の事例68060名を、条件をマッチさせた333753名のコントロールとマッチングさせて、大腸ポリープの家族歴と、その後の大腸癌リスクとの関連を比較検証しています。

その結果、親など一親等に大腸ポリープがあると、その後の大腸癌リスクは1.40倍(95%CI:1.35~1.45)、有意に増加していました。ポリープの種類で分けると、過形成性ポリープは1.23倍に対して、腺腫性ポリープは1.44倍となっています。

この大腸ポリープの家族歴と大腸癌との関連は、一親等の大腸ポリープ患者が2人以上では、1.70倍(95%CI:1.52~1.90)、家族の大腸ポリープの診断が50歳未満であると、1.77倍(95%CI:1.57~1.99)と、それぞれ高くなっていました。

特に年齢が50歳未満で診断された大腸癌のリスクに限って解析すると、一親等の大腸ポリープ患者が2人以上では、3.34倍(95%CI:2.05~5.43)とより高くなっていました。

大腸癌検査の対象者を選ぶ際の参考に

このように一親等に大腸ポリープの患者さんが、特に2人以上いる場合の大腸癌発症リスクは高く、大腸癌スクリーニングをどのような対象者に行う必要があるかは、こうしたデータも取り入れつつ、検証される必要があるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36