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2021.04.06

マスク必須時代に考えたい、口まわりの最新事情 | 教えて、ドクター!

ワコールボディブック

---- コロナ禍により続くマスク生活。今や私たちは、1日の多くの時間を、口元を隠したままで過ごすのが当たり前になっています。これまで経験したことのない環境で、私たちの口や歯は、どうなっていくのでしょう?

東京・銀座で年中無休の歯科医院を開業し、日々多くの患者さんと接している池渕剛先生に、コロナ禍における口腔の健康についてうかがいました。

マスク生活によって疎かになる口まわりのケア

個人的な意見ですが、コロナ禍によって、マスクはもはや人類の“お供”になっていくと思っています。少なくともしばらくは、このまま一年を通してマスクをする生活を続けていくことになるでしょう。

そうすると心配なのは、口まわりのことが疎かになることです。マスクをしていると、当然ですが顔の下半分は見えません。女性のメイクもそうでしょうが、どうしても見えるところにばかり気がいって、見えないところは「まあいいか」となりがちですよね。

以前なら、たとえば会話の最中に相手の口元で何か気になることがあったら、「自分はどうかな」と気にしたでしょうが、相手もマスクをしていると、そんなふうに気づくチャンスもなくなってしまいます。

さらに、「不要不急の外出自粛」や「医療機関でのクラスター発生」といった情報で、なんとなく歯医者に足が向かなくなった人、定期的な検診も間があきがちになった人も多いようです。でも、歯科医院はもともとコロナ前からマスクは必須ですし、飛沫感染に対しての意識は非常に高いといえます。

口呼吸から起こるドライマウスに注意!

マスクによって起こりやすくなる口まわりのトラブルで、まず気になるのは、ドライマウス(口腔乾燥症)です。

マスクをしているのだから湿度は上がるような気がしますが、逆です。なぜかというと、マスクで息苦しくて、酸素をたくさん取り込もうとするために、口呼吸になりがちだから。口呼吸になると、口の中の水分のバランスが悪くなり、乾燥してしまう。

口腔が乾燥すると、免疫が下がります。免疫が下がると、病気にかかりやすくなります。冬にインフルエンザが流行するのは、インフルエンザウイルスが温度も湿度も低い環境では生存率が高くなるというウイルス側の理由だけではなく、乾燥による免疫の低下で、人間のからだも病気にかかりやすくなってしまうからです。そういう意味でも、マスクの下で口腔の健康を気にかけるのは、とても大切なこと。

ドライマウスの症状を改善するには、こまめに水分をとるといった外部からの対処法と、唾液の分泌を促すという内部からの対処法をあわせて行うことをおすすめします。

本当は、人と話したり、大きな声で歌ったり、笑ったりするだけでも、表情筋が動いて唾液腺が刺激され、口腔内の健康にはとてもよいのですが、これもコロナ禍ではなかなか難しくなってしまいました。

口は、からだにとっては、ウイルスの侵入を防ぐ門です。だからこそマスクで守るわけですが、それによって、本来の機能まで低下してしまっては本末転倒。ぜひ、見えないマスクの下に意識を向けて、口腔の健康を見直していただきたいと思います。

----新型コロナウイルスからからだを守るためのマスクが、かえって私たちの口腔の健康に影響を与える可能性があったとは…。見えないからこそ、いっそう気を配る必要がありそうです。次回も、マスク生活によって起こりうる口腔内のトラブルについて教えていただきます。

取材・文/剣持亜弥
イラスト/坂田優子

池渕 剛

銀座池渕歯科院長。1998年に大阪大学歯学部歯学科を卒業。医療法人での勤務医を経て、厚誠会歯科代々木上原 院長、医療法人社団厚誠会理事を歴任。2001年7月、患者のための高度で良質な、理想の歯科医療の実現を志し、東京・銀座中央通り、銀座4丁目交差点から徒歩30秒の場所に銀座池渕歯科を開院。365日無休の歯科医院として注目を集める。メディアへの出演も多数。著書に『今日も銀座は診療日和。ぼくが1年365日歯科治療を続けるわけ』(世界文化社)がある。

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