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2021.03.22

あたると怖いが美味さが魅力!高級食材「ふぐ」ってどんな魚?

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

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ここ1年でおうちごはんが増えた方が大半だと思います。毎食作るのが大変……というネガティブなことばかりではなく、お取り寄せグルメがより充実してあちこちいかなくても楽しめる!というポジティブなことも増えているのではないでしょうか。
今回は普段はなかなか食べる機会がないけれど、やっぱり美味しい高級食材「ふぐ」についてお話します。

昔は「鉄砲」あつかい!?ふぐの食歴史

そもそもふぐとはどんな魚?

ふぐとはフグ目フグ科に属する魚の総称です。
いわゆる「ふぐ」に似ている魚でハリセンボンが挙げられますが、ハリセンボンはフグ目ではありますがフグ科ではありません(ハリセンボン科です)。

ふぐの特徴と言えば、ぱんぱんに膨らむおなかを想像される方も多いと思いますが、あれは敵を威嚇することで身を守るための行為なのです。
ふぐにも多くの種類がありますが、私たちが口にすることのある食用のふぐとしては「とらふぐ」や「まふぐ」が有名です。

ふぐと言えば思い浮かぶ「毒」の正体

特に真冬が美味しいとされるふぐですが、一部の地域では語呂合わせで「福(ふく)」と呼ばれ縁起の良い食材として親しまれており、年末年始にこれからの幸せを願うとても人気の食材となっています。

しかし、ふぐと言えば「毒」があることでも有名です。ふぐの毒はテトロドトキシンというもの。
ふぐ毒による中毒症状は食後20分から3時間程度の短時間で現れます。
重症の場合には呼吸困難で死亡することがあるくらい非常に強力な毒で、不幸にも当たってしまった方の記事が、今でも年に数件出ることがありますね。
ちなみに症状は臨床的に4段階に分けられています。

経済産業省『自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒』(https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_det_01.html)を参照・改編

経済産業省『自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒』(https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_det_01.html)を参照・改編

非常に怖い毒ですので、決して資格なしに個人で調理しようと考えるのはやめましょう。

人とふぐの付き合いははるか縄文時代から

そんな猛毒を持つふぐだけに、食べられるようになったのは最近と思われるかも知れませんが、実は遺跡の調査などから、縄文時代には食べられ始めていたと推測されているそうです。
ただし、猛毒があることも知れ渡っており、豊臣秀吉の時代にはふぐを食べたものが相次いで死んでいったため「ふぐ食禁止令」が発布されています。
また、江戸時代はより厳しく取締が行われており、ほぼ全国の藩で「お止め料理」として扱われ、武士が中毒死したとわかると家禄没収や家名断絶などの厳罰が下されたそうです。
ですが、西日本では庶民を中心に親しまれ、あたると死んでしまうことがあることから「鉄砲」、「てつ」とよばれていました。

実際、公に解禁になったのは明治時代になってから。
明治20年頃に初代総理大臣である伊藤博文がふぐを食べるきっかけがあり、そのあまりの美味しさに翌年山口県内に限って禁止令を解いたとのことです。
そのおかげで今、私たちは美味しいふぐを食べられているのですね。

タンパク質が豊富なふぐの栄養素

淡白であっさりとした味わいが特徴のふぐですが、どのような栄養があるのでしょう。

最もポピュラーなとらふぐ(養殖・生)100gあたりのエネルギーはわずか80kcalです。
しかし、タンパク質は19.3g、脂質はわずか0.3gとまさに高タンパク低脂肪な食材といえます。
うま味のもとはアミノ酸にありますので、タンパク質が多いことからもふぐがうま味の多い魚であることがわかりますね。

その他にはむくみ予防に欠かせないカリウムが430mgも含まれています。
カリウムが多いことで知られているバナナでも可食部100gあたりのカリウムは360mgですので、それよりも多いことがわかります。
また、脂質の代謝に関わるビタミンB2や、近年心の不調対策にも期待されているビタミンB群の1種・ナイアシンも含まれています。

せっかく食べるなら!ふぐのおすすめ調理

なかなかふぐを気軽に家庭で調理をする機会はないかもしれません。しかし、最近ではお取り寄せで、さまざまなふぐ料理を手に入れやすくなっています。
また、毒部分を取り除いたものが手に入るなら簡単に美味しく調理が可能です。

今回はレシピではなく、ふぐのうま味と栄養を味わい尽くす料理をご紹介します。

やっぱり定番!「ふぐ刺し」

ふぐには毒があるため、ふぐを取り扱う免許を持った人しか捌くことができません。
専門の人に捌いてもらい、菊の花びらのように美しく盛られたふぐ刺しはふぐの良さをシンプルに味わうにはもっともおすすめです!

細ネギをくるりと巻いて、橙がきいたぽん酢ともみじおろしでお召し上がりください!

大阪では主流「てっちり」

ふぐを使った鍋料理です。一般的には「ふぐちり」や「ふぐ鍋」と言われていますが、大阪を中心によく食べられる地域では「てっちり」と呼ぶことが多いようです。
簡単に言えば、骨付きの鶏肉を鍋にした水炊きのふぐバージョンになります。

捌いてあるものが手に入るならば、鍋に入れるだけと難しい調理は必要ありません。

骨ごと使うことでうま味がスープに溶け出ます。
〆はぜひうま味たっぷりのスープを活かした雑炊で。

食感がたまらない「ふぐのから揚げ」

ぶつ切りにしたふぐの身をシンプルにから揚げに。
自分で作る際に下味などはいりません。揚げたふぐは刺身や鍋にした時とは違い、ふわふわの食感を楽しむことができます。

シンプルに塩とレモンで食べるのがおすすめです。

たまにはこんな変わり種も「ふぐの南蛮漬け」

贅沢な使い方ですが、ふぐのから揚げが余りそう……、という時におすすめのアレンジレシピです。
南蛮漬けにすることで多少日持ちもしますし、味もしっかりつきますのでごはんがススムおかずにもなります。

お祝いの時などにめでたい「ふぐ」はいかがでしょう

ふぐは味わいの面でもごちそうですが、縁起の良さでもよい魚です。
ぜひ、おうちごはんをワンランクアップさせるお祝いごはんとしてふぐを楽しんでみてくださいね。

参考文献

医歯薬出版(2021/2)『日本食品成分表2021八訂』

磯村 優貴恵(いそむら・ゆきえ)

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大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。
その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆など幅広く活動中。

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