メニュー

2021.03.24

コロナワクチン接種後のアナフィラキシーリスクはどの程度?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

新型コロナウイルスのワクチン接種が日本でも始まり、時折接種後のアナフィラキシー発症のニュースを耳にします。このワクチンはどの程度アナフィラキシーが起こるリスクがあるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2021年2月12日ウェブ掲載された、新型コロナウイルスワクチン接種後のアナフィラキシーの頻度を2種のワクチンで比較した報告です。

▼石原先生のブログはこちら

アナフィラキシーはどれくらいの頻度で起きるのか

多くの新型コロナウイルスワクチンが開発されていますが、先行して接種されているのは、ファイザー/ビオンテック社とモデルナ社のワクチンです。

これはいずれもmRNAワクチンで、ほぼ同等の高い有効性が、臨床試験で示されています。この2種のワクチンの副反応として、現行一番問題とされているのは、「全身性のアレルギー症状」であるアナフィラキシーです。

アメリカで2020年12月14日から2021年1月18日の間に、トータルで9943247回のファイザー/ビオンテック社ワクチンと、7581429回のモデルナ社ワクチンが接種されていて、併せて66件のアナフィラキシーが報告されています。

その内訳がこちらです。

概ね1万摂取に1回程度の頻度で発症

トータルなアナフィラキシーの発症率は、ファイザー/ビオンテック社ワクチンが100万接種当たり4.7件に対して、モデルナ社ワクチンは2.5件でした。以前ご紹介したファイザー/ビオンテック社ワクチン初回接種のみのデータでは、その頻度はもっと高くなっていましたが、これは初回接種時のアナフィラキシーの頻度が高いことが影響していると思われます。

つまり、初回接種時の発症率については、概ね1万接種に1回程度、と想定した方が良いようです。

ただ、モデルナ社のワクチンの方が頻度が低いとは言い切れません。モデルナ社のワクチンの方が後から接種が開始されたので、アレルギー素因のある人が接種を控えることも、多くなったと想定されるからです。

ほとんどの事例が女性

この表を見て頂くと分かるように、症状の傾向自体は2種のワクチンでほぼ同一です。

興味深いのは殆どの事例が女性に発症していることで、この事実の説明は上記文献では触れられていません。女性の接種率が多いためだという説明がありましたが、90%を超える女性比率は、とてもそれで説明出来るとは思えません。

以前の報告と同じように、接種後のアナフィラキシー事例の多くは、アレルギー素因がある人に発症していて、アナフィラキシーの既往も3割程度で認められていました。

ワクチン接種後のアナフィラキシー対策も万全に

いずれにしてもアメリカの報告を見る限りは、ワクチン接種後のアナフィラキシーの発症率は、概ね許容範囲のもので、その発症を想定してエピネフリンの準備や、入院ベッドを確保するなどの対策と共に、アレルギー素因の有無のチェックが重要であると考えられます。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36