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2021.03.17

春にピッタリ!鮮やかな抹茶を楽しむコツ【ちょっと茶話#6】

kencom公式:料理研究家・りんひろこ

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春らしい日が増えてきて、新緑の季節が間も無く到来します。桜をはじめとした鮮やかな花も咲き乱れる季節ですが、そんなときに一服の清涼剤として楽しみたいのがお抹茶という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ちょっと格式の高さも感じられる抹茶に抵抗感がある人も、春の抹茶スイーツにハマっている人も、ぜひこの記事で抹茶のことをより深く知ってみてください。
きっとさらに味わい深く楽しめるようになりますよ。

知っているようで知らない「抹茶」ってどんなお茶?

抹茶と煎茶の違いは製法にあり

そもそもみなさんは抹茶がどういうお茶かご存知でしょうか?
他のお茶と茶葉から違うと思っている方もいるかもしれません。実は茶葉自体は変わらないものの、その製法によって区別されているのです。

みなさんご存じの急須で入れる緑色のお茶「煎茶」は、茶畑で育った茶葉を摘み取り、蒸して、揉んでから乾燥させたものです。
しかし、「抹茶」は茶畑で育てている茶の木の葉っぱに最後に藁などで覆いをして日光を遮り、鮮やかな緑色で旨味の強い茶葉に成長させてから摘み取っています。さらに、蒸しはしますが、揉まずに葉を広げたまま乾燥させて「碾茶(てんちゃ)」と呼ばれる状態にした茶葉を、茶臼でひいて粉末にするのです。

ちなみに似たような見た目のお茶に「粉茶(こなちゃ)」がありますが、こちらは煎茶や玉露を作る過程で出た粉を集めたものになりますので、全く違うお茶になります。

豊富なテアニンが特徴

抹茶の特徴といえば、その旨味です。
お茶の旨味成分であるテアニンなどのアミノ酸類は根より吸収されて新芽に蓄積されますが、日光を浴びるとカテキンという渋味成分に変化してしまいます。
日光を遮って栽培し、旨味成分のアミノ酸がカテキンに変化するのを防ぐことで、渋みは少なく旨味が強いおいしい抹茶ができあがります。
また、「覆い香」と呼ばれる「抹茶」独特の芳香も生まれます。

さらに、日光を遮られた茶葉は少しでも光合成をしようと、葉の表面積を広げ、葉緑素(クロロフィル)を増やすため、美しい緑色で葉の薄い、臼でひきやすい茶葉になります。

お菓子の原料やリキュールとして使える加工用抹茶が登場

今「抹茶」として世の中に出回っているものの中には、昔ながらの「碾茶」を茶臼でひいて作った「抹茶」と、お菓子や抹茶ドリンクなどに加工される「加工用抹茶」の2種類があり、その比率は4:6と、「加工用抹茶」の割合の方が高くなっています。
「加工用抹茶」と表示されて売られているものは、茶葉を育てる際に覆いをせずに育てた茶葉を乾燥させて機械で粉砕したもので、本来は「粉末茶」と表示させるべき茶葉です。
もちろん、抹茶本来の旨味や覆い香もありません。値段も本物の「抹茶」より安く入手できます。市販の抹茶菓子などには、この「加工用抹茶」を使ったものも多く存在します。

アメリカからやってきた”2大”抹茶ブーム

日本独自のお茶である抹茶ですが、現在では世界中で受け入れられています。その歴史を紐解くと、2つの大きなブームがあったことがわかります。
大正時代以前の抹茶の消費はほぼ茶道用に限られていました。それ以降、抹茶は茶道以外でも使われるようになってきますが、1985年(昭和60年)からは日本でじわじわと抹茶ブームが起こり、和菓子、洋菓子、アイスクリーム、抹茶ラテなどの飲料に使われるようになりました。

そして1996年(平成8年)、ハーゲンダッツが世界で抹茶アイスクリームの販売を開始。その原料である抹茶は京都で仕入れた品質の高い「碾茶」から作られた「抹茶」で、高級感のある抹茶の旨味と覆い香の残る抹茶アイスは世界中で大ヒット!
これを受けて京都の碾茶相場は前年比150%近くまで高騰し、ハーゲンダッツショックと呼ばれるようになりました。
これをきっかけに国内のみならず、世界中でも抹茶ブームが加速します。

その次に起こった抹茶ブームは、2005年(平成17年)にスターバックスが発表した「抹茶ラテ」によって引き起こされます。
いわゆる「スターバックスショック」です。
全世界に2万8000店舗を展開するスターバックスの「抹茶ラテ」はまたもや大ヒットし、世界中に「抹茶」ブームが定着します。

1989年(平成元年)に年間648トンの生産量であった碾茶は、この度重なる抹茶ブームにより、2018年(平成30年)には3660トンとなり、30年間で約6倍にまで急成長しました。

ダイエットにも注目される抹茶の栄養

抹茶に含まれる茶カテキンは、体脂肪を効率よく燃焼させる効果や、血糖の上昇を抑えたり、コレステロールの吸収を抑えて排出を促す効果も期待できます。
抗酸化作用や、抗ウイルス作用も高いとされているのも特徴です。

また、ビタミンCも多く含まれていて、カテキンと協同してメラニン色素を抑制し、美肌、美白効果も期待できます。
煎茶などと比べても、茶葉をすり潰してそのまま取り入れることができる抹茶は、茶葉の栄養を全て摂取することができます。

他にも、含まれているフッ素化合物は虫歯予防や口臭の予防効果があるとされています。
変わったところでは、旨味成分であるテアニンがカフェインの中枢神経興奮作用を抑制してリラックス効果をもたらすとして、マインドフルネスや瞑想の愛好者から好まれるようになっているそうです。

余すことなく栄養を楽しめる抹茶の飲み方

薄茶を家で楽しむ際には、比較的安価で手に入る「加工用抹茶」ではなく「抹茶」を用意するようにしましょう。
それから茶筅(ちゃせん)もあったほうが良いですよ。

見分け方は原材料名をチェックしましょう。原材料名に「抹茶」とあるものは「抹茶」、「緑茶」と書いてあるものは「加工用抹茶」の可能性が高いです。仮に「加工用抹茶」で楽しむ場合は、下の「アイス抹茶」のように、砂糖やミルクを足すとおいしくなります。

まずはここから!抹茶の点て方2種

抹茶には様々な淹れ方がありますが、今回はもっとも簡単で、ポピュラーな薄茶の淹れ方をお伝えします。
また、抹茶、特に薄茶の場合、淹れると言わず、点てるというのが一般的です。

また、暑い時や、抹茶の苦味に慣れていない方におすすめのアイス抹茶の作り方もお教えします。

薄茶の点て方

材料(1杯分)

お湯(80℃程度) 60ml
抹茶 茶さじ1杯半(小さじ1)

作り方

1.茶筅は15分程度水につけておく。

2.茶さじに1杯半(小さじ1)の抹茶を茶碗に入れる。

3.80℃程度の湯を60ml入れ、茶筅で前後にシャカシャカと混ぜ合わせる。15秒程度混ぜたら出来上がり。

アイス抹茶の作り方

材料(1杯分)

抹茶 茶さじ1杯半(小さじ1)
お湯(80℃程度) 大さじ3
氷水 150cc

作り方

1.茶さじに1杯半(小さじ1)の抹茶(加工用抹茶OK)と大さじ1杯の砂糖を茶碗に入れる。

2.80℃程度の湯を大さじ3程度入れ、スプーンなどでよく混ぜ合わせる。

3.氷水を150cc程度注ぐ。お好みでミルクを足してもOK。

春の花を見ながら抹茶を楽しもう!

一見敷居が高そうに見える抹茶ですが、鼻に抜けるような味わいは非常に魅力的です。
春に咲くきれいな花を見ながら、抹茶で新緑感を感じるのもいいかもしれませんよ。

※飲み過ぎると下痢や貧血を起こす場合があります。体調がすぐれない時などはご注意ください。
※服薬などをしている場合は飲み合わせ等で、思わぬ事故になる可能性があります。健康リスクを感じられた場合は、医師に相談の上御賞味ください。

りんひろこ

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料理研究家、フードコーディネーター。京都で学んだ懐石料理や、アーユルヴェーダや薬膳などの東洋の食養生の考えをもとにした美味しく簡単にできる料理を、TVや雑誌などで提案。著書に『作りおきで毎日おいしい! NYスタイルのジャーサラダレシピ』『ジャースチームレシピ』(世界文化社)がある。

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