メニュー

2021.01.09

海外で接種が始まった新型コロナワクチンは本当に有効なのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

世界中で感染が拡大している新型コロナウイルス感染症には、安全で有効なワクチンが待ち望まれています。海外で接種が始まったワクチンはどの程度有効なものなのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2020年12月10日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症のワクチンとして、もう海外では一般への接種が開始され、日本でもおそらく最初に接種が始まりそうな、ファイザー社などによるmRNAワクチンの、有効性についての臨床試験結果をまとめた論文です。

▼石原先生のブログはこちら

新開発されたmRNAワクチンって、どんなもの?

今回開発されたのは、mRNAワクチンというタイプのワクチンです。その仕組みの概略がこちら。

mRNAというのは、人間の細胞がリボゾームという工場でタンパク質を作る時に、その設計図となる遺伝子の鋳型のようなものですが、それを合成して新型コロナウイルスの突起部分の蛋白質の、元になる遺伝子を挿入します。

それを脂質の膜のカプセルで保護して粒子にしたのが、このワクチンの原型で、それを筋肉注射で身体に送り込みます。

それが、抗原提示細胞と呼ばれる免疫細胞に取り込まれると、そこで抗原蛋白が作られ、それが新型コロナウイルスに対する免疫を誘導することになるのです。

これまでのワクチンは、基本的に抗原蛋白そのものを投与して、それで免疫を誘導するという手法でしたから、今回のワクチンはその元になる遺伝子を投与して、身体の細胞に抗原蛋白を作らせるという点が全く違っているのです。

このワクチンは30μgを3週間の間隔で2回筋肉注射で接種します。

臨床試験ではクリアな有効性を確認

今回の臨床試験は主にアメリカで、16歳以上の43548名をくじ引きで2つに分けると一方は上記のワクチンを2回接種し、もう一方は偽ワクチンを接種して、その後の両群の新型コロナウイルス感染症発症率を比較検証しています。

その結果はこちらをご覧下さい。

かなりクリアな有効性が示されています。

2回目のワクチン接種から7日以上経過後に発症した新型コロナウイルス感染症は、ワクチン接種群では8件であったのに対して偽ワクチン群では162件で、2回のワクチン接種により、新型コロナウイルス感染症は95%(95%CI: 90.3 から97.6)有意に抑制されていました。(上記画像のデータとは、少し条件が異なっているので件数が微妙に違っています)

今回の臨床試験においては、ワクチンの有害事象は主に接種部位の疼痛や発赤、だるさや頭痛などで重篤なものは少なく、偽ワクチンと有意な差は認められませんでした。

これからのデータの蓄積に期待を

これはまだ数ヶ月の有効性に過ぎませんが、実際の感染症の発症で95%という有効性が厳密な臨床試験で示されているというのはかなり画期的なことで、今後は一般に接種が拡大した際の有効性と安全性のデータが蓄積される経過を注視したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36