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2020.07.22

STOP手荒れ!感染症対策と同時にできるハンドケア【感染症と手荒れ・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

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感染症対策をしながら手荒れを防ぐには、どのような事に気を配れば良いのでしょうか?
今だからこそ知っておきたい、手荒れしにくい手の洗い方とセルフケア方法を、国立国際医療研究センター 皮膚科診療科長・皮膚科医長の玉木毅先生に詳しく解説していただきました。

▼なぜ手が荒れてしまうのか。原因を知りたい方はこちら

しっかり消毒しても乾燥させない!正しい手順を確認

手洗いか?アルコール消毒か?

感染予防の基本は、石鹸で手を洗うこと。特に昨今のコロナウイルス感染症では、石鹸で新型コロナウイルスを不活化させた後に十分な水で物理的に洗い流す、というのが一番良い方法です。
手洗いの後に更にアルコール消毒をしている方もいらっしゃいますが、手荒れのリスクが上がるので、基本的には同時に使う必要はありません。アルコール消毒は石鹸よりも刺激が強いので、消毒を使うタイミングは、外出していて手洗いができないなどの、やむをえない場合に限定すると良いと思います。

お湯を使う&ゴシゴシ拭きはNG 正しい手の洗い方

「ウイルスをよく落とすため」といった理由でお湯を使用するのはおすすめできません。高温のお湯は必要以上に皮脂を奪うので乾燥を招きます。水で十分に汚れやウイルスを除去できます。

洗うときは石鹸をよく泡立てて爪の周りや指の間も忘れずに丁寧に洗い、同様に丁寧に流す事が大切です。丁寧なすすぎは感染症対策にもなりますし、皮膚にとっても大切なこと。石鹸の界面活性剤が皮膚に残っていれば、それが刺激になって手荒れを起こすからです。

洗った後は、清潔なタオルやハンカチ、またはペーパータオルですぐに水気を拭うのも手荒れを防ぐポイントです。拭く際も、決してゴシゴシこすらず、トントンと叩くようにして水分を優しく吸収させてください。しっかり乾燥させることが、新型コロナウイルスの感染予防にもなります。

固形?泡石鹸?敏感肌用?正しい石鹸の選び方

固形石鹸、液体石鹸、泡石鹸など、様々なタイプが売られていますが、基本的には何を使っても構いません。ただし、どの石鹸を使う時も必ず「泡」で洗ってください。泡立てることで、刺激を低く抑えつつ汚れを効率的に落とすことができます。特に、固形石鹸はよく泡立てないと石鹸の成分が手に付着したままになり、すすぎが不十分になりがちです。固形石鹸や液体石鹸は、泡立てるのに多少手間がかかるので、小さいお子さんや面倒な方には「泡石鹸」がおすすめです。

手荒れを防ぎたい場合、石鹸にヒアルロン酸やグリセリンなど保湿成分を配合しているものを選ぶのもいいでしょう。ただし、敏感肌用などを過剰に謳うものは洗浄力が弱い可能性があります。今の時期は感染症対策もしっかり行いたいので、普通の石鹸をきちんと泡立てて、しっかり流し、保湿するという方法が一番良いでしょう。

手洗い&消毒のあとは、とにかく保湿!

感染症対策で手洗いの回数が増える一方で、ハンドケアに対する意識は低い人が多いという印象があります。ひどい手荒れを起こすとウイルスや汚れが落ちにくくなってしまうので、感染症対策を徹底するためにも手荒れ予防は重要です。ハンドクリームの選び方、正しい塗り方などを、知っておきましょう!

保湿剤の選び方

保湿剤は大きく分けて2種類あります。

①モイスチャライザー・・・角質の中に水分を閉じ込めるもの(尿素、ヘパリン類似物質など)
②エモリエント剤・・・・・皮膚の表面に油の膜を作り、水分の蒸発を防ぐ(ワセリン、プロペトなど)

最も効果的なハンドケアは、①モイスチャライザーで肌を潤して、②エモリエント剤で水分の蒸発を防ぐ方法。この二段構えができれば理想的です。特に、乾燥のひどい方やアトピー持ちの方は、ぜひダブル使いを実践して欲しいと思います。

ただ、既に手荒れがひどい場合は、モイスチャライザーに含まれる尿素や界面活性剤でさえも刺激になる事があります。モイスチャライザーを使って調子が悪くなる場合は、症状が落ち着くまで「ワセリン」を塗って様子をみましょう。ワセリンは病院での治療にも用いられる皮膚の保護剤で、肌を外的な刺激から守ってくれます。あかぎれやひび割れがあるときは、その部分だけでもワセリンを塗ると治りが早くなります

保湿剤の効果的な塗り方

できれば、消毒や手を洗うごとに保湿をするのが理想ですが、毎回となるとなかなか大変なものです。できる範囲で、根気よく続けて欲しいと思います。

一度に塗る保湿剤の量は、手の表面に一層の膜を作るようなイメージで薄く伸ばして、べたつかない程度。クリームを一度にべったりと塗っても、保湿が長持ちするわけではありません。今は、手首までの手洗いが推奨されていますから、手首までしっかりと保湿剤を塗ってください。こまめな保湿が難しければ、寝る前だけはしっかりとケアすることをお勧めします。保湿剤を塗ってから、綿の手袋を着用すれば、べたつきが気にならず、浸透も高まります。

湿疹ができてしまったら、皮膚科を受診して!

手が真っ赤になってしまった場合や水ぶくれができた場合は、接触性皮膚炎や手湿疹の可能性があるので、皮膚科を受診しましょう。これらの肌トラブルは、ステロイドの軟膏などを塗って対処しないと、なかなか改善しません。皮膚炎を繰り返したり、悪化すると症状がどんどん広がってしまい、治療に時間がかかってしまうこともあるので、早い段階で病院を受診するようにしましょう。

感染症対策の一環にハンドケアを!

慣れないマスクや手洗いも、意識が変わったことで、今や生活の一部として定着していますよね。今後は、手洗いのルーティーンにハンドケアを加えて、健康な手も保っていきましょう!
感染症対策ハンドケアのコツは「よく泡立て、よく流し、こまめに保湿」です。

玉木 毅(たまき・たけし)先生

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国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 皮膚科診療科長・皮膚科医長
1987年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部皮膚科教室入局。米国サウスカロライナ州立医科大学研究員、東京大学医学部附属病院皮膚科医局長、同分院皮膚科講師などを経て現職。医学博士、日本皮膚科学会東京支部運営委員、東京都皮膚科医会副会長、東京大学非常勤講師。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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