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2020.07.22

感染症対策で「手荒れ」が急増中!原因と対策を知ろう【感染症と手荒れ・前編】

kencom公式ライター:森下千佳

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新型コロナウイルスの流行は一旦落ち着きつつありますが、第二波、第三波の可能性も指摘されており、まだまだ感染症対策は気を抜けません。基本の手洗いとアルコール消毒は徹底していきたいものの、長期化することで手が荒れてしまう人が増えています。感染症対策を行ったことで、私たちの手は今どんな状態なのでしょうか?
国立国際医療研究センター 皮膚科診療科長・皮膚科医長の玉木毅先生に聞きました。

玉木 毅(たまき・たけし)先生

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国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 皮膚科診療科長・皮膚科医長
1987年東京大学医学部医学科卒業後、東京大学医学部皮膚科教室入局。米国サウスカロライナ州立医科大学研究員、東京大学医学部附属病院皮膚科医局長、同分院皮膚科講師などを経て現職。医学博士、日本皮膚科学会東京支部運営委員、東京都皮膚科医会副会長、東京大学非常勤講師。

そもそも手荒れはなぜ起こる?

皮膚の表面は、わずか1/50〜1/100ミリの厚さの角質で覆われていて、角質が水分をたっぷり含むことで肌のうるおいを保ち、外部からのさまざまな刺激から身体を守る「バリア機能」をはたしています。健康な肌は、角質細胞が規則正しくレンガのように積み重なった構造をしていますが、何らかのダメージを受けると、角質の間に隙間ができ、バリアが決壊。すると、肌の深層に外的な刺激が伝わりやすくなったり、乾燥しやすくなって肌荒れが生じてしまったりするのです。

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皮膚の中でも特に手のひらは、皮脂を分泌する皮脂腺が少ないため、もともとバリア機能が弱い部位。繰り返し刺激となる物に触ったり、頻繁に手洗いをしたりすると、角質層の水分が奪われてバリアが崩れるため、手荒れを起こすと考えられています。はじめは皮膚が乾燥して硬くなる程度ですが、進行すると赤みやかゆみも伴い、小さな水ぶくれやひび割れもみられ、手荒れから手湿疹の状態にまで進んでしまいます。

感染症対策による手荒れの種類

乾燥による手荒れ

もっとも多くの方が当てはまるのが「乾燥による手荒れ」。
初期段階の手荒れです。石鹸や消毒液は皮膚についた細菌、ウイルスを除去してくれるので、今の時期は必要不可欠なものです。

しかし、ウイルスを殺すと同時に石鹸などの成分が肌にとって刺激となり、角質にダメージを与えてしまう事があります。ダメージを受けた角質層はキメが粗くなり、バリアー機能が低下。結果として水分が奪われてしまいます。
角質は一生懸命再生しようとしますが、手洗いや消毒のたびに落とされるために修復が間に合わず、手荒れの原因になってしまうのです。

また、石鹸を使っての頻繁な手洗いは、肌の保護に必要な皮脂も洗い流してしまいます。消毒用アルコールは速乾性が高く、乾く時に皮脂も一緒に奪います。
つまり、感染対策を徹底すればするほど手の角質層にダメージを与え、皮脂を流して乾燥を引き起こすことになるのです。

アルコールの刺激による手荒れ

アルコール消毒液に触れた際、手にかゆみを感じたり、発疹が出たりする人もいます。これは、アルコールに対して「接触性皮膚炎」、いわゆる”かぶれ”を起こしている状態。接触性皮膚炎は皮膚に接触した刺激物質が、皮膚の中に侵入して炎症を起こすことで生じます。原因となる刺激物質は、日用品、化粧品、植物、食物、医薬品などさまざま。

今回のように数ヵ月に渡って繰り返しアルコールの刺激を受け続けると、これまでアルコール消毒を使ってもなんともなかった人に、突然皮膚炎が起こるということも有り得ます。他にも、アルコール消毒液に触れてかぶれ反応が出る原因としては、その人が「アルコール過敏症」の場合や、もともと「アルコールアレルギー」を持っている場合なども考えられます。

手湿疹

乾燥による手荒れを放置していると、皮膚は刺激を受け続け、「手湿疹」へと悪化する恐れもあります。手湿疹の主な症状は、次のようなもの。

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手湿疹は水や洗剤を使用する機会が多い主婦に発症しやすいことから、『主婦湿疹』と呼ばれることもあります。炎症がひどい場合はセルフケアでは治せないため、治療が必要になります。

手荒れを防ぐ&予防するセルフケアは欠かせない要素に

長期間にわたる頻繁な手洗いと消毒は、感染症対策には効果的である反面、手を過酷な環境に晒しています。今の手荒れを手湿疹にさせないためにも、どのようなセルフケアをしていけば良いのでしょうか?
次の記事では、しっかりと感染症対策をしながら手荒れを防ぐ方法を詳しく解説します。

▼後編の記事はこちら!

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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