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2020.06.03

脂肪を ”燃やせる” のは走るだけではない?1日の消費エネルギーの中身とは

RuntripMagazine

二の腕、お腹、脚にまとわりつく脂肪。なかなか思うように減ってくれず、むしろ「増えているのでは? 」と付きまとって来る難敵。そんな脂肪も、本来は私たちが生きていく上で必要不可欠な組織であり、貴重なエネルギー源の1つなのです。

脂肪をはじめとした体内にあるエネルギー源は、様々なパターンで “燃やされ”、私たちの生活を支えています。寝ているときや仕事をしているとき、走っているときにもメラメラと燃え続けています。しかし、エネルギー消費の動きは目に見えないもの。今回は、そのエネルギー消費がどのようなパターンで行われているのかをお伝えします。

生きるためのエネルギー

私たちの身体は、いつどんなときも心臓の鼓動を止めない仕組みになっています。その源となるのが、体内に貯蔵されている『エネルギー』。心臓をはじめ身体の様々な組織を機能させるために、体内に貯蔵されているエネルギーを使います。使われたエネルギーは『動き』や『熱』として形を変えていきます。筋肉が動けばパワーへ、ときには筋肉を震わせて熱へと変えます。ここまでのプロセスが、いわゆる『エネルギー消費』です。

その貯蔵されているエネルギーは、基本的には食事から口を通して体内へと入ります。食物は口の中で咀嚼され、唾液・胃液・膵液といった消化液と混ざり分子レベルまで分解されて、栄養素として胃や腸の壁を通り抜けて(吸収されて)いきます。ここでようやく、本当に “食べた” という段階=吸収されたことになります。しかし、このように消化吸収されない栄養素は、そのまま胃腸を通り過ぎて便として排泄されていくため、ヒトのエネルギー源としてはほとんど機能しないことになります(大腸の腸内細菌を介してエネルギーとなる場合はあります)。吸収された栄養素は、血液やリンパの流れに乗って体の様々な組織へと運ばれ、必要に応じて利用されます。


栄養素も直接エネルギーになるものから、エネルギーに変えるためにサポート役として活躍するものなどがあります。直接エネルギーになる栄養素はいわゆる『三大栄養素』で、炭水化物・タンパク質・脂質が挙げられます。一方、サポート役となる栄養素は、ビタミンやミネラルです。この三大栄養素が生きるために必要なエネルギー源となり、心臓を動かし続けてくれているのです。

“消費” と “摂取” を天秤にかける

エネルギー消費は生きている限り、常に生まれるものですが、消費する量はその時々によって異なります。消費が少ない日もあれば、極端に多い日もあります。特に、ランナーはこの違いが大きくなります。普段は仕事や家事などで、長い時間・距離を走ることは難しいものです。そのため、長い時間が取れる休みの日にロング走を行う方が多いのではないでしょうか。アスリートであればほぼ毎日走るため、エネルギー消費量はある程度の範囲で収まりますが、市民ランナーの場合は、走る日・少し走る日・たくさん走る日と消費の “幅” が大きくなります。この “幅” を意識することは、とても大切なことです。

ある1日のエネルギー消費量に対して、同日の食事から得た三大栄養素の総量(エネルギー摂取量)を天秤にかけることで、エネルギーの過不足が決まります。摂取量が消費量よりも多い場合、“余剰エネルギー” として体内の組織に蓄積されます。その1つが体脂肪です。一方、長い距離走るなどしてエネルギー消費量の方が多くなる場合、エネルギーが不足すると心臓などの組織が正常に機能しなくなってしまいます。その際に、蓄積していたエネルギーを活用します。そうすることで『エネルギー消費量=エネルギー摂取量(+蓄積していたエネルギー)』という天秤のバランスが保たれていきます。


このように、体内では変化の大きいエネルギーの “ニーズ” に応えています。では、大きく異なる “ニーズ” = “エネルギー消費量” は、ランニング以外でどのように消費されているのでしょうか?

3つのエネルギー消費パターン

エネルギーは、大きく分けて3つのパターンで消費されます。基礎代謝量、食事による熱産生、そして身体活動の3つのパターンが1日のエネルギー消費を構成しています。それぞれ、どのような仕組みなのかを確認してみましょう ¹⁾。

基礎代謝量

基礎代謝量とは、生きていく上で必要な最低限のエネルギー量とされています。一般的には、1日のエネルギー消費量の60%を占めるとされますが、その他のエネルギー消費のパターンによって割合は変化します。

“最低限のエネルギー量” と記しましたが、基礎代謝量の測定方法を知ると最低限のエネルギー量がどのような状態での数値なのかがイメージしやすくなります。

早朝空腹時(前日からの12時間以上の絶食)
快適な室内(室温:18~25℃)
安静して横になっている状態(筋肉の緊張が最小化した状態)

といった条件下で測定されます。つまり、基礎代謝とはこのような状態で1日過ごしていたとしたら、という仮定でのエネルギー消費量となります。

ではこの状態が1日続いたとして、一体どれほどのエネルギーが消費されるのか? 食事摂取基準で示されている30~49歳の男性(体重68.5㎏)、女性(53.1㎏)の方を例にして算出すると

男性 68.5(㎏)× 22.3 (kcal/kg体重/日)≒ 1,530kcal/日

女性 53.1(㎏)× 21.7(kcal/kg体重/日)≒ 1,150 kcal/日

のようになります。私たちの体は、意図的に何もしていなくても、自動的、本能的にこれだけのエネルギーを毎日消費し続けているということです。この基礎代謝量を下限として、この後のパターンがエネルギー消費量として追加されてきます。

食事による熱産生(食事誘発性熱産生 : DIT または 特異動的作用 : SDA)

DITという言葉を耳にすることもあるでしょうか。 DITは1日のエネルギー消費量の約10%を占め、食べた物を消化・吸収、そして身体の一部として身に付ける(同化)ために使われるエネルギーのこと。モノを違った形に変えたり、移動させるには、何かしらのエネルギーが必要になります。その変化の過程が体内でも行われていて、それがエネルギー消費(DIT)です。

DITは食べた栄養素のバランス(炭水化物・たんぱく質・脂質)や咀嚼の回数、香辛料などの刺激物によって変化します。炭水化物では摂取エネルギーの5~10%、脂質は3~5%、たんぱく質は20~30%がDITとなり、栄養素ごとに異なってきます。特にたんぱく質のDITが多くなりますが、「多いから良い」とも言い切れず、その分消化吸収に負担がかることも意味しています。そのため、

栄養素のバランスを偏らないようにする

早食いをしないようにする

味や香りを楽しむ

ことを心掛けることで、うまくDITからエネルギー消費をプラスすることができるかもしれません。

身体活動

最後の3つ目が身体活動。ランナーは身体活動の違いが、エネルギー消費量の大きな差を生む要因になります。

身体活動の中でも大きく『生活活動』と『運動』の2つに分けられます。生活活動は家事や洗濯、デスクワークといった普段の生活の中で何気なく行っている活動。運動はランニングを始めとした『息が弾み汗がかく』程度の身体活動を指し、強度や時間によってエネルギー消費が大きく異なってきます。

身体活動量を含めた1日のエネルギー消費量を推定する方法は様々ですが、先ほど記した基礎代謝量から算出する方法を示します。日常の生活スタイルを基準に Ⅰ~Ⅲ の3段階で身体活動をレベル分けし、その身体活動のレベルに合った数値(1.5~2.0)を乗じます。30~49歳の男性(体重68.5㎏)、女性(53.1㎏)²⁾の方を例にして計算をすると、1日の多くが座位でゆったりと過ごしている(身体活動レベルⅠ)場合

男性 1,530 kcal × 1.5 ≒ 2,300kcal/日

女性 1,150 kcal × 1.5 ≒ 1,725 kcal/日

となります。仕事などで移動や立ち仕事が多い方や、ランニングをすることでこの数値よりも高くなります。先述の基礎代謝、食事による熱産生は1日単位で大きく動くことは通常ありません。しかし、ランナーの身体活動によって1000kcal単位で変動することがあります。走っているとはいえ、走らない日もエネルギーが多く消費される訳ではないので、この “幅” の感覚を意識して生活を送れるようになるといいでしょう。

その人、その日によって異なる

ウェイトコントロールには運動で消費エネルギーを増やしたり、食事の摂取と消費のバランスを整えることが効果的です。上記を参考にエネルギー消費を捉え、日常のどこかで新たなアクションに繋がると嬉しいです。

また、これらの数値は実際にぴったり当てはまることはありません。必ずどこかしらに誤差があるため、理論上では摂取エネルギーと消費エネルギーの差があっても、体重の変動がないこともあります。走ることだけでなく、食事や日常の何気ない動作も脂肪を燃やす1つの活動になり得ます。是非、今この瞬間から理想の体型に近づく選択をしてみて下さい。


—参考文献—
¹⁾ 田口素子ら(2014), 『体育・スポーツ指導者と学生のための スポーツ栄養学』 , 市村出版
2⁾ 厚生労働省, 『日本人の食事摂取基準 2015年板』

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記事を書いた人  佐原 和真

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