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2020.06.04

ランニングでの「ダメージ軽減」が期待できる食事

RuntripMagazine

フルマラソンなどで何時間もの長い間走り続けると、身体には大きな負担がかかります。そのように走った後のリカバリーとして食事が大切なことは、皆さんご存知かと思います。走った「後」も大事なの事は事実ですが、実は走る「前」の食事も大事なことが分かってきました。

今回は2020年1月に発表されたばかりの最新の研究¹ から、マラソンによるダメージ軽減が期待できるオススメの食事について、管理栄養士ランナーがご紹介します。

マラソンのダメージは計り知れない

マラソンのゴールでは「やったー! 」という最高の達成感が味わえます。これは、日常生活ではなかなか味わえないものですよね。しかし、達成感以外にも “味わう” ものがあります。それが、身体への “ダメージ” 。

ゴール後のランナーの脚や身体は、数日では治らないような筋肉痛に見舞われるもしばしば。場合によっては、内臓疲労で食が進まなかったり、足のマメが潰れて歩くことが困難になることも。これは初心者の方だけでなく、トップアスリートでも同様のことが言えます。事前に健康チェックシートで健康状態を確認するマラソン大会が多いのは、マラソンは時として私たちの命に牙をむくこともあるからです。それだけ、心身への負担が大きいものなのです。


普段から健康に気を使っていたとしても、自分のカラダを知り尽くすのは難しいもの。どこかしらに、多少なりともリスクが隠れていたりします。マラソンでのこのようなリスクを極力避けることができれば、気兼ねなく、よりマラソンを楽しめるようになるかもしれません。

1週間前からの食事が影響

研究の内容をご紹介する前に「『カーボローディング』って何? 」という方は、是非こちらもご覧になってみて下さい。

今回ご紹介する研究は、フルマラソンによるダメージが食事で抑えらえれるかもしれないという報告です。カーボローディングは『記録』に注目した食事法ですが、今回紹介された食事法は『ダメージ』に注目したものになるので、ファンランナーの方にも是非取り入れていただきたい食事法です。

食事以外の要因はなるべく排除した研究

研究では、フルマラソンを走る69人の男性ランナー(平均45歳)を対象に、レース1週間前から何を食べたかの食事記録を実施。

✓ 3日前から強度の高い練習、マッサージをしない
✓ 24時間前からカフェイン・アルコールを摂らない
✓ 着圧のあるウェアを着ない
✓ レース直前の食事は、普段通りの食事を食べる


といった、記録に関係しそうな要因をできる限り取り除きます。そして、レースを走り終えた後に採血を行い、筋肉と心臓へのダメージを表す血液指標を確認します。このようにすることで、食事そのものの違いが血液指標の数値にうまく表せるようになります。

すると、レース1週間前からどんな食事を取っていたかによって、レース後のダメージに差が出たのです。

魚・オリーブオイル・野菜に効果あり!?

研究に参加した男性が食べた食品の量の違いと、フルマラソン後の血液指標との関係を調べました。その結果、魚・オリーブオイル・野菜の摂取量とダメージ軽減との関係性が見えたのです。これらの食材に共通するものは、私たちの身体をダメージ(酸化など)から守ってくれる抗酸化物質を含んでいることです。

理由と活用例

魚の抗酸化効果は “良質な脂質” にあります² 。魚は鮮度が良い方が脂質自体の酸化も抑えられるので、そのままお刺身で食べるのが手軽で良いですね。「レース前に生食を食べるのは……」という方は、魚をオリーブオイルでソテーしたり蒸したりし、レモン果汁やハーブなどの香辛料でサッパリとした味付けにすると美味しいですよ!

オリーブオイルは、オリーブの実を “そのまま” 圧搾して作られます。そのため、オリーブに含まれる抗酸化物質のポリフェノール³ が油にそのまま溶け出してくれます。この製法の違いが、『オリーブオイル』と他の油との違いになるのです。お酢や香辛料と合わせて自家製ドレッシングにしたり、普段の調理油をオリーブオイルに交換するだけでも変化が見られるかも。

野菜にも様々な抗酸化物質が含まれます。その中でも、研究では野菜の『色』に注目していました。「緑黄色野菜が健康に良い」というのはご存知かと思います。緑黄色野菜にはオレンジ色を示すカロテノイドや、黄色を示すフラボノイドといった成分が含まれるものが多く、これらにも抗酸化効果が期待できます⁴ ⁵ 。植物は太陽から降り注ぐ強烈な紫外線のダメージから身を守るために、ポリフェノールや色素成分を作り出していると考えられています。これは、オリーブオイルにも当てはまるかもしれません。その恩恵が、フルマラソンでのダメージを軽減することにも影響してくれているのです。「普段はあまり食べていないな」という方も、まずはレース1週間前だけでも、緑黄色野菜(ほうれん草・ニンジン・かぼちゃ・トマトなど)を積極的に摂ってみてはいかがでしょうか。

肉・バター・動物性脂肪には注意

一方、マラソンのダメージ軽減に効果が見られず、むしろ逆効果になる食材もわかりました。それが、肉・バター・動物性脂肪になります。前述の魚の脂質は、ダメージから身体を守る不飽和脂肪酸という脂質が含まれています。肉・バター・動物性脂肪には不飽和脂肪酸はほぼ含まれず、飽和脂肪酸という既に酸化した脂質が多く含まれます。そのため、ダメージを逆に加担してしまうということになるのです。

レース前のゲン担ぎで “ジャンキー” な食事をしたことはありませんか? ステーキやこってりラーメンは心は満たしてくれるかもしれませんが、身体は重りを背負うようなものになっているかもしれません。全く食べないようにすることもないですが、“ほどほど” という節度を頭の片隅に置いて心の準備もしていきましょう!

“カーボ” だけでなく、“ヘルシー” な食事も

研究の課題としては男性ランナーのみであったり、調査が1週間と短期間であったことなどがあります。それでも、健康だと言われる食材が効果的であれば、取り入れるデメリットもないのでは。 ぜひ、次回のフルマラソン出場時には直前のカーボローディングだけでなく、1週間前から健康的な食事を意識してみてはいかがでしょうか。

参考文献

1) Mielgo-Ayuso J, Calleja-González J, Refoyo I, León-Guereño P, Cordova A, Del Coso J. Exercise-Induced Muscle Damage and Cardiac Stress During a Marathon Could be Associated with Dietary Intake During the Week Before the Race. Nutrients. 2020;12(2):E316. Published 2020 Jan 25. doi:10.3390/nu12020316
2) Philpott, Jordan D., Oliver C. Witard, and Stuart DR Galloway. “Applications of omega-3 polyunsaturated fatty acid supplementation for sport performance.” Research in Sports Medicine 27.2 (2019): 219-237.
3) Cicerale, S.; Lucas, L.; Keast, R.; Keast, R. Antimicrobial, antioxidant and anti-inflammatory phenolic activities in extra virgin olive oil. Curr. Opin. Biotechnol. 2012, 23, 129–135.
4) Harty, P.S.; Cottet, M.L.; Malloy, J.K.; Kerksick, C.M. Nutritional and Supplementation Strategies to Prevent and Attenuate Exercise-Induced Muscle Damage: A Brief Review. Sports Med. Open 2019, 5, 1.
5) Clifford, T.; Bell, O.; West, D.J.; Howatson, G.; Stevenson, E.J. The Effects of Beetroot Juice Supplementation on Indices of Muscle Damage Following Eccentric Exercise. Eur. J. Appl. Physiol. 2016, 116, 353–362.

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記事を書いた人  佐原 和真

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