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2020.05.27

変わりゆく自分の体...40代、50代の女性が受けるべき検査とは?【レミ先生の診察日記12】

ILACY

40代を過ぎると、急に増えてくる体の不調。「一度検査に行かなくちゃ」と思いつつ、日々の忙しさのためについ検査を先延ばししている人も多いのではないでしょうか。

しかし、どんなに忙しくても、今後の人生のために受けておくべき検査はあります。そういった重要な検査、受けておくと安心な検査について、浜松町ハマサイトクリニックの医師・吉形玲美先生に教えていただきました。

40代以降は、お金の使いどころを「自分の体」に絞る時期

――40代、50代になると、自分のことはつい後回しにしがちになる人が多いと思います。健康診断は、自治体や会社のものが精一杯ということもあるのではないでしょうか。

そうですね。でも、40代になったら健康診断だけではなく人間ドックを受診することをおすすめします。健康診断は、健康状態・病気発見に対して最小限の検査しか行いません。

一方、人間ドックは健康診断よりも検査項目が多く、さらに特定の病気について検査を行ったり、より高度な検査によって病気の可能性を見つけ、予防につなげたりするもの。体にさまざまな変化が起き始める40代は、自分の体の現状を的確に把握しておくことが大切です。

人間ドックは自費になるため躊躇する方もいらっしゃるかもしれませんが、平均的なドックの料金を1日にならせば、毎日カフェで飲むコーヒー1杯くらいの金額にも満たないのです。

これからずっと付き合っていく体のために、ぜひ人間ドックを受けてください。40代以降は、「何にお金をかけるか」を変えていく世代だと思います。

――がん検診については、自治体の対策型検診で十分なのでしょうか?

対策型検診は、40代なら大腸がん・肺がん・乳がん、子宮頸がん、50代になると胃がんが加わります。いずれも日本人に多いがんですから、自治体で行っているがん検診を欠かさず受けていただくことには大きな意義があります。

■年齢・部位別がん罹患数割合(女性、2016年)

国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」より

参照元:https://www.ilacy.jp/remi/post_200501.html

国立がん研究センターがん対策情報センター「がん登録・統計」より

さらに、40代以降の女性の場合は良性でも治療が必要な疾患や、早めに対策をとれば手術せずに済む婦人科疾患を早期に見つけられる経腟超音波(経腟エコー)検査を合わせて受けていただくことが大切です。

経腟エコーは、子宮筋腫や子宮内膜症など良性の子宮・卵巣疾患のほか、自覚症状に乏しく、気付いたときには進行しているケースが多い卵巣がんの発見に有効です。子宮頸がんの検査でせっかく内診台に上がるわけですから、いっしょに経腟エコーも済ませてしまうといいですね。

――ほかにも受けるべき検査があれば教えてください。

骨密度検査は、閉経前後から急激に減っていく骨量を維持するためにぜひ受けていただきたいですね。骨粗しょう症が直接命にかかわることはありませんが、骨折が原因で寝たきりになったり、介護が必要になったり、健康寿命が短くなったりする方は、圧倒的に女性に多いんです。

特に40代だと、私にはまだ早い...と思われる方も多いのですが、40代以上の女性にとって骨量や骨密度の減少は、顔のたるみやしわなどにつながり、見た目年齢にも大きな影響を与えます。今の自分の骨密度がどれくらいかを知っておくことが大切ですよ。

また、40代からは卵巣機能の変化にも気を配ってください。血液検査で卵巣機能の検査が可能です。

女性ホルモンの分泌量が減ると、心身にさまざまな不調が引き起こされますが、血液中の女性ホルモンの量などを調べて卵巣機能の状態を確認することで、プレ更年期なのか、閉経状態に入っているかの目安を確認することができます。

婦人科系以外では、生活習慣病関連の項目にも気を配り始めていただきたいですね。

50代は、血管と骨の検査をプラス

――50代になると、どんな検査を加えるべきですか?

50代になると、女性ホルモンの減少とともにリスクが高まっていく生活習慣病に、より敏感になっていく必要があります。一般的な採血項目に加え、動脈硬化への変化を視野に入れて、頸動脈エコーや血圧脈波などによる血管年齢の検査をしておくといいですね。

40代から引き続き、骨粗しょう症の予防・早期発見につながる骨密度検査も重要です。40代で受けていた検査に、動脈硬化リスクを調べる検査を加えていくイメージです。

――乳がんや卵巣がんは、家族歴がある場合、より気を付けて検査を受けるべきだと聞きます。

そうですね。さらに、ご自身で卵巣がんか乳がんのいずれかを経験したことがある人は、もう一方のがんをケアすることを忘れないでいただきたいと思います。私の外来にいらっしゃる50代以降の患者さんの中にも、両方のがんを経験している方は少なくありません。

若くして乳がんになる、乳がんを多発する、乳がんだけでなく卵巣がんも発症するといった「乳がん・卵巣がん症候群」であるという遺伝子診断がついている方は、決められたフォローアップに従えばいいのですが、家族歴があって遺伝子検査もしていなくて不安だという方は、検診ではなく一度婦人科の外来を受診するようにしましょう。

また、乳がん治療に使用していたお薬の種類によっては、子宮体がんのリスクが上がるので注意が必要です。

結果は3年以上、経年変化を見ることが大切

――40代から50代の方に、検診を受けるにあたって気を付けてほしいことはありますか?

「自分の体のここが知りたいから、この検査を受ける」「検査の結果次第ではこういうリスクがある」というように、検査の意味を知って主体的に受けるということですね。

人間ドックを受けていたら、病気にならないというわけではありません。しかし、受けたことだけで満足してしまって、結果を分析して健康管理に活かすところまではしない方がほとんどです。

健診や人間ドックを受けて、今回の結果だけを見て安心して良いのはがん検診のみ。ほかの項目は、今回の数値が正常値かどうかより、経年変化をチェックするようにしましょう。

50代は生活習慣病のリスクが高まるとお話ししましたが、生活習慣病のリスクを表す数値は、ゆっくり長期的に変化していくものです。結果が出たら、正常値であっても「今年の私」と「去年の私」を見比べる癖をつけてください。さらに、「一昨年の私」も加わると、自分の体に起きていることが見えてくると思います。

――体に不調があると心も落ち込んでしまうという人は多いと思います。検査と並行して、日常で心掛けたいことがあれば教えてください。

自分に合った代替療法を見つけることをおすすめします。代替療法とは、医療以外の方法で体をすこやかにする方法で、がん患者さんの治療における補完療法としても行われています。

例えば、ヨガや、瞑想などによって精神状態を改善するマインドフルネス、運動としては、社交ダンスなどダンス系がおすすめです。やってみて自分の体が喜ぶものを日常に取り入れていくだけですから、あまり難しく考える必要はありません。

楽しいな、幸せだなと思いながら物事に取り組むということが、最大のセルフケアになると思いますよ。

この記事を監修した人

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吉形 玲美 (よしかたれみ) 医師

医学博士/日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
専門分野:婦人科

1997年東京女子医科大学医学部卒業
臨床の現場で婦人科腫瘍手術をはじめ、産婦人科一般診療を手掛ける傍ら、女性医療・更年期医療の様々な臨床研究に携わる。女性予防医療を広めたいという思いから、2010年より浜松町ハマサイトクリニックに院長として着任。現在は同院婦人科専門医として診療のほか、多施設で予防医療研究に従事。更年期、妊活、生理不順など、ゆらぎやすい女性の身体のホルモンマネージメントを得意とする。

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