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2020.05.23

妻との会話で押さえるべきポイント【夫婦のトリセツVol.1】

作家:黒川伊保子

どんなに時代が変わっても、夫婦間のコミュニケーションに悩みはつきません。

「付き合った当初はあれだけ優しかったのに、今では息を吸うように喧嘩をしている」なんてことはありませんか?

自宅にいることが多い昨今、改めて夫婦関係について考えるべく、「妻のトリセツ」の著者である黒川伊保子さんによくある夫婦の悩みについてコラムを執筆していただきました。

1回目は夫婦の会話についてです。

なぜ夫婦の会話が噛み合わなくなるのか?

男性同士なら盛り上がる話も女性には…

男性同士なら盛り上がる話も女性には…

あるとき、50代と思しき管理職男性からの質問を受けた。「なぜ、女性は質問にまっすぐに答えないのでしょうか」。
曰く――先日家に帰ったら、妻が見慣れないスカートをはいていた。新しいのかなと思い、「そのスカート、いつ買ったの?」と聞いたら、少し不機嫌そうに「安かったから」と答えた。

妻が5W1H(何? いつ? どこ? どうやって? 誰? なんで?)に答えないのはよくあることで、ずっと不思議だった。
なぜ、まっすぐに答えないのだろうか?

最初にはっきり言おう。妻や娘に、いきなり5W1Hを投げかけてはいけない。

家にいる夫が、出かける妻に「どこ行くの? 何時に帰るの?」といきなり聞くのも禁忌。おめかしした妻に「きれいだね」と声をかけることができたら◎。それが恥ずかしかったら「出かけるの? 楽しんでおいで」と声をかけてみて。そうしたら、向こうから「デパートに行ってくる。夕方には帰るね」と優しく言ってくれるはず。

もちろん、「お母さんの7回忌、いつだっけ?」とか「バターはどこ?」のような、第三者が主語の5W1Hに関しては、この限りではない。

女が5W1Hにまっすぐ答えないのは、自分の5W1Hには、心で応えてほしいからである。

「あなたって、どうしてそうなの?」には、「どうしてそうしたのか」を教えてほしいわけじゃない。「嫌な思いをさせてごめんね」と心を慰撫してほしいのである。「仕事と私、どっちが大事?」も、どっちかを答える質問じゃない。「寂しい思いをさせて、ごめん」が正解。

女の5W1Hが、ほぼ含み表現なので、男からの問いも、そう聞こえてしまうのである。

課題を解決するのか、課程に共感するのか

脳には、とっさの時に使う感性の回路が2種類ある。ゴール指向問題解決型とプロセス指向共感型の回路だ。
前者は、ゴールを目指して一直線だ。目的をできるだけ早く達成するために、スペック確認と問題解決を急ぐ。後者は、共感を旨とする。相手の変化点に気づいて声をかけ、心を通わせるための対話を繰り出す。

狩りをしながら進化してきた男性脳は、どうしてもゴール指向に、子育てをしながら進化してきた女性脳は、どうしても共感型になりやすい。
とはいえ、女性も油断できない。忙しい母たちは、子どもに対してゴール指向問題解決型の感性を使う。

「宿題やったの?」「学校どう?」なんて聞きがちだ。これって、夫が「めし、できてるのか」「今日、何してた?」と聞くのと変わらない(苦笑)
家族の会話を弾ませたかったら、5W1Hの質問をしてはいけない。

心の対話の始め方にはコツがある。

一番効くのは、相手のいい変化点に気づいて褒めたりねぎらったりすること。
「それ、いいね(似合うね)(きれいだね)」「あ、俺の好きなナス味噌♪」。
それが見つからなかったら、ちょっとした相談事をしてみよう。

思春期の息子だって、「ちょっとカレーの味見てくれる?」と頼りにされたら、ちゃんと答えてくれる。

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著者プロフィール

⬛︎黒川伊保子(くろかわ・いほこ)
株式会社感性リサーチ 代表取締役社長、人工知能研究者、作家、日本ネーミング協会理事、日本文藝家協会会員

1983年奈良女子大学理学部物理学科を卒業、コンピュータ・メーカーに就職し、人工知能(AI)エンジニアを経て、2003年、ことばの潜在脳効果の数値化に成功、大塚製薬「SoyJoy」のネーミングなど、多くの商品名の感性分析に貢献している。また、男女の脳の「とっさの使い方」の違いを発見し、人類のコミュニケーション・ストレスの最大の原因を解明。その研究成果を元に多くの著書が生み出されている。中でも、『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』は、家庭の必需品と言われ、ミリオンセラーに及ぶ勢い。

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