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2020.03.11

新型コロナウイルス、妊娠出産への影響はある?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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世界中で感染が広がっている新型コロナウイルス。妊婦さんが感染してしまった場合、妊娠出産に影響を及ぼしてしまうのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2020年2月12日のLancet誌にウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症(COVIT-19)に妊娠中に感染し、その後出産した事例の解析です。

▼石原先生のブログはこちら

妊娠中、新型コロナウイルスに感染したらどうなる?

新型コロナウイルス感染症の、まとまった事例報告は中国のものが複数存在していますが、特別な対応が必要とされる妊娠中の感染については、これまでに報告がありませんでした。

今回の検証はその初めてのもので、以前ご紹介したJAMA誌の論文で、138名の感染時事例が解析されていた、武漢大学中南病院(Zhongnan Hospital of Wuhan Univercity)で、2020年1月に入院した妊娠中の新型コロナウイルス感染症の事例を、9例まとめて解析しています。

今回解析された9例の妊娠中の感染事例は、発熱や咳などの症状においては、他の患者と違いはなく、重症肺炎や死亡事例は含まれていません。
いずれも妊娠の後期に帝王切開で出産に成功しています。
胎児仮死などの合併症も認められていません。
羊水や臍帯血で行った遺伝子検査の結果では、赤ちゃんへの垂直感染は認められていません。

今回解析された事例の範囲では、妊娠中の女性でもその症状には大きな差はなく、胎児への垂直感染も認められていません。

まだデータが少ないので、今後の検証をチェックして

妊娠されている女性にとっては、まずは安心材料となる結果ではありますが、まだ例数は少なく、単独施設での短期のデータに過ぎないので、この点については今後の検証の積み重ねを注視したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36