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2020.03.25

まだ間に合う花粉症対策!最新治療と今年の傾向を医師が解説

kencom公式ライター:森下千佳

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まさに今、全国的にピークを迎え得ているスギ花粉の飛来。花粉症の人にとっては、不快な時期がやってきました。これから数ヵ月に渡る不快な季節をどう乗り切るか?本当に効果的な花粉症対策は何なのか?長年にわたり花粉症の研究に従事されている、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック・永倉仁人院長に、今日からできる正しい花粉症対策を伺いました。

永倉仁人(ながくら・ひとし)先生

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ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長

【プロフィール】
昭和57年東京慈恵会医科大学卒業。国立成育医療センター・免疫アレルギー研究部にてアレルギー治療について研究。環境庁国立環境研究所研究員として、アレルギー性疾患増加の原因について、学位取得。文部科学省委託「スギ花粉症克服に向けた総合研究」に参加し、スギ・ヒノキ花粉症の調査に当たる。現在、最新の治療法として、ペプチド療法、舌下免疫療法などの研究に従事している。

2020年の花粉の飛散状況は?

朗報!花粉飛散量は少なめ

tenki.jp(日本気象協会)https://tenki.jp/pollen/expectation/より一部改変

tenki.jp(日本気象協会)https://tenki.jp/pollen/expectation/より一部改変

暖冬が続くなか、東京都内では例年より2週間早く2月3日に花粉の飛散がスタートしました。今年の花粉飛散量は、ほとんどの所で例年より少ない予報で、過去10年間の平均と比較すると7割程度の量です。特に、九州では非常に少なく、中国や近畿でも非常に少ない所がありそうです。一般的に花粉を浴びる量と症状の強さは関連します。飛散量が少ないということは、症状も軽めですむ人が多いと思われます。

花粉のピークはいつまで?

tenki.jp(日本気象協会)https://tenki.jp/pollen/expectation/より一部改変・2/13発表

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スギ花粉飛散のピークは、東京で2月下旬から3月下旬、福岡で2月下旬から3月上旬となりなど、全国的に例年より早まりそうです。

しかし、スギ花粉のピークが終わる頃になるとヒノキ花粉のピークが始まります。東京は4月上旬から4月下旬、福岡は3月下旬から4月上旬、大阪は3月下旬から4月上旬がヒノキ花粉のピークです。

花粉が少ないのは暖冬のせい?

花粉の飛散量が少ないのは、暖冬とは関係ありません。花粉の量は、昨年の夏(6月〜8月)の気象条件によって決まります。昨夏は、気温の低い日が散見されたほか、降水量も多く、日照時間が少なかったため、花粉の要因となる花芽がたくさん作られなかったため、今年の花粉は少ないようです。

今からできる花粉対策は?

まだ間に合う!セルフケアと治療で症状の軽減を!

花粉症対策の要は、大きく分けて「セルフケア」と「治療」の二つです。正しいマスクの装着を始め、洗濯物は外に干さない、窓を開けないといった基本的なケアを怠らないこと。そして、薬物治療としては、内服薬、点鼻薬、目薬の三点セットを用いるのが一般的です。今、病院で主に使われている「第二世代の抗ヒスタミン薬」は、眠気や口が渇くといった副作用が少ないだけでなく、わりと即効性があるので、症状が出始めてから使っても間に合います。

病院で症状に合わせた最新薬をカスタマイズしてもらおう

病院に行くのは面倒だし、症状が軽いうちは、とりあえず市販薬で様子をみようということもあるでしょう。しかし、市販薬に用いる事が成分には限りがあり、古典的な「第一世代の抗ヒスタミン薬」が使われている場合が多いので、眠気が出るなどの副作用がある成分が含まれていたり、逆にマイルドに作られているため全然効かないという患者さんがたくさんいます。

市販薬で乗り切れてしまうような軽い症状の方ならば問題ありませんが、ひどい症状がある方は早めに病院に相談に来ていただきたいと思います。副作用が少なく、効果の高い最新薬を患者さん一人一人の症状に合わせてカスタマイズしてもらう事が、花粉の辛い時期を快適に乗り切る近道だと思います。

受診するなら内科?耳鼻咽喉科?

基本的には一番症状が酷い症状に合わせて受診する科を選んでもらえば良いと思います。くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど鼻に関する症状が酷いようならば耳鼻咽喉科。花粉症皮膚炎と言って、まぶたが腫れたり、肌が荒れたりする症状は、皮膚科。目のかゆみが強く現れた場合は、眼科です。耳鼻咽喉科でも軽い症状であれば、皮膚や目も合わせて治療しますが、目薬を使い続けることで眼圧をあげたり角膜を傷つけるなどのリスクがあるため、もともと眼圧が高い方や、長期に渡り目薬が必要な方には、眼科を受診することをお勧めしています。

重症な花粉症に朗報!注目の最新治療薬「ゾレア」とは?

症状緩和効果に優れた新しい抗体療法

2019年の12月から、従来の治療をしても症状が改善しない重症の花粉症(12歳以上)の方には、ゾレア(オマリズマブ)という画期的な薬が使えるようになりました。ゾレアは、「抗体療法」と呼ばれる治療法の一つで、これまでも気管支喘息やアトピー性皮膚炎などの治療では使われていましたが、今年からは花粉症でも認められ保険適用となりました。多くの方は治療後約1週間で症状が弱まり、2週間ほどで症状はほぼなくなります。

即効性があるが、費用と副作用の2つのハードルがある

酷い花粉症に悩む人には朗報ですが、この治療を受けるには2つのハードルがあります。

1つ目は、ゾレアの使用は従来の治療が効かない重症患者に限られること。抗ヒスタミン薬や点鼻薬を使っても鼻水や鼻づまりが緩和せず、1日20回以上鼻をかむ、20回以上くしゃみをするなど、重い症状が見られること。また、血液検査をしてIgEの量が基準値を満足しているか?12 歳以上で、体重が20~150kgの範囲にあるか?など、様々な条件を満たしている場合でないと「ゾレア」は使えません。

2つ目のハードルは、高額な薬代です。ゾレアは保険が効きますが、1ヵ月にかかる薬代の自己負担は、成人で2万〜5万円ほど(健康保険が3割負担したときの値段。体内のIgEの量と体重によって投与量が決まる)。1度注射をすれば2週間〜4週間効果が続くものの、シーズン中に1回〜3回は病院を受診しなくてはいけません。

副作用は、ほとんどが一時的な注射部位の痛みや腫れですが、まれに呼吸困難や失神、立ちくらみなどの症状が出ることもあります。

自然に治らない花粉症 治療とセルフケアで乗り切ろう!

花粉症は基本的には、自然に治癒することはありません。重症な方にも効く新薬や、副作用の少ない第二世代の薬などの登場で、この時期を快適に過ごすための選択肢が増えていますので、これまで敬遠していた方も病院に相談するメリットは大きくなっています。特に、子供の場合は症状が重く出やすいため、早めの対処が重要です。後半では、花粉症対策のもう一つの要「セルフケア」について、実際に花粉症の専門家の永倉先生が実践している方法を詳しく、細かくお伝えしていきます。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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