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2020.03.03

筋肉体操の谷本先生「やり過ぎの運動に潜む罠」|「鍛えれば強くなる」が当てはまらない部位も

東洋経済オンライン

NHKの「みんなで筋肉体操」でお馴染みの近畿大学、谷本道哉准教授が「正しい筋肉の鍛え方」を伝えます(写真提供:中央公論新社)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/331136?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

NHKの「みんなで筋肉体操」でお馴染みの近畿大学、谷本道哉准教授が「正しい筋肉の鍛え方」を伝えます(写真提供:中央公論新社)

国民総肥満、定年延長が叫ばれる昨今、健康管理と継続的な運動を通じ、70歳まで働けるカラダを維持することはもはや義務とも言えそうな状況にある。一方、人気TV番組出演の谷本道哉・近畿大学准教授の著書『新装版 学術的に「正しい」若い体のつくり方-なぜあの人だけが老けないのか?』 によると、運動する人ほど「鍛えればいつまでも元気」という落とし穴にハマりがちだという――

運動をするうえで、「しっかり有酸素」はメタボリスクを強力に抑える合言葉ともいえます。ただし無理は禁物であることも忘れてはいけません。

有酸素運動は無理がすぎると、極めてまれではありますが、心不全などの致命的な病気を起こすことがあります。

運動を行った際、心臓のあたりに痛みや違和感を覚えるときは無理せず、すぐに中止しましょう。体調の悪いときは、中止するか強度と量を落とします。また、脱水は循環血の不足から心不全につながりやすいので水分補給は怠らないようにしましょう。

そしてもう1つ無理が利かないことがあります。それは関節の消耗です。

関節は酷使することで消耗しやすい部位

体は「筋肉」を使い、「骨」を「関節」まわりで動かすことで動作します。

このうちの筋肉と骨、実はこの2つは何歳になっても鍛えれば強くなります。しかし関節は、強くならないわけではありませんが、極めて回復が遅く、酷使することで消耗しやすい部位であることをよく知っておく必要があります。

その理由は、関節内には血管が走っておらず、新陳代謝(構成組織の入れ替わり)が非常に遅いことにあります。新陳代謝が遅いということは、酷使されると回復が追いつかなくなるということ。そして痛めてしまうとなかなか治りません。

最もよく行われる有酸素運動といえばジョギングですが、ジョギングは着地の衝撃が結構強い、ハイインパクトな運動でもあります。

着地の衝撃は一般的なジョギングで、体重のおよそ3~4倍。普通歩行の1.5倍程度と比べるとかなり大きいことがわかります。

ジョギングのような運動を週60分以上行っている人では、週15分未満の人に比べて、膝関節の骨棘(変形性膝関節症の診断指標の1つ)が形成されている人の割合が、3.5倍だったという研究報告もあります。

「鍛えれば強くなる、鍛えていればいつまでも元気で若いときと変わらずいられる」

という話は、関節には残念ながら当てはまりません。

このことは、よく運動をしている人が陥りがちな典型的な落とし穴といえます。消耗品である関節をいたわり、無理のない運動をするようにしなければいけません。

ジョギングのようなハイインパクト運動は、膝や足首などの関節への負担が大きくなります。ですから、関節への負担を軽減する工夫をしなければいけません。

まず衝撃を受け止める靴は、底の厚い、衝撃吸収性のよいものを選びましょう。レース用にスピードを追求したシューズなどは軽くてよいのですが、普段使いでは使わないほうが賢明です。

走る所も、可能であればアスファルトよりも柔らかい、土や芝生の上、もしくはランニングマシン(トレッドミル)を利用します。ランニングマシン上はアスファルトよりもかなり柔らかくできていて関節にやさしい場所です。

下り坂は飛ばさず、ゆっくり走るようにしましょう。ジグザグ走行をすれば傾斜を緩くすることができます。ただし、車や自転車など周りの交通状況に十分気をつけて。

なお、自転車や水泳などの運動なら、関節への負担が極めて小さく、ローインパクトな運動になります。ハイインパクトなジョギングだけでなく、別のローインパクトな運動に一部切り替えれば関節の負担をそれだけ減らせます。

また、痛みがあれば絶対に無理をしない。

痛みの出ない頻度、強度、量で行う。ジョギングをこれから始めるという人はいきなり長距離を走らずに、短い距離、ゆっくりしたスピードから始めて徐々に関節(だけではありませんが)を慣らしていく、といった気遣いもとても重要です。

膝への負担が小さい「ちょこまか走り」

関節への負担を減らす、おすすめのランニングフォームを紹介しましょう。

走り方にもいろいろなスタイルがありますが、ここでは膝などへの負担が小さい「ちょこまか走り」をおすすめします。


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ちょこまか走りとは、足を遠く前に出さずに自分の近くにつくようにした走り方。ウォーキングの場合は大股で歩くことが推奨されますが、ジョギングでは大股でストライドを延ばすと着地の衝撃が強くなりすぎてしまうのです。

「カカトから接地」しようとすると自然と足が強く前に出ますので、「足の裏全体で接地」するように意識します。足を大きく出さない分ストライドが減りますので、その分ピッチを上げるようにしましょう。

実はマラソンの金メダリスト、Qちゃんこと高橋尚子選手も、足をあまり前に振り出さず、足の裏全体で接地するちょこまか走りをしていました。

慣れるまでは難しいかもしれませんが、膝、足首等への負担が小さく、効率のよさからタイムが上がる可能性もあります。一度試されることをおすすめします。

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谷本 道哉:近畿大学准教授

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