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2020.01.24

自衛隊で実践されている究極の「片づけ術」とは|絶対に必要な条件が「モノを捨てること」

東洋経済オンライン

掃除は手足の曲げ伸ばしがしやすく、さらに汚れてもよい服装で行う。匍匐前進できるくらいの格好が理想!(撮影:田中達晃+石川咲希/Pash)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/325270?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

掃除は手足の曲げ伸ばしがしやすく、さらに汚れてもよい服装で行う。匍匐前進できるくらいの格好が理想!(撮影:田中達晃+石川咲希/Pash)

年末の大掃除でキレイにした部屋も、正月のダラダラ生活で見る影もない……。そんなアナタは、万が一の事態で生き残れないかもしれない。陸上自衛隊で最強と言われる第1空挺団(パラシュート部隊)での経験を生かし、清掃会社を立ち上げた筆者が、合理的かつ大胆な片づけ術をまとめた『自衛隊式片づけ術』から一部を引用して紹介する。

自衛隊では掃除と整理整頓をたたき込まれる

周囲を清潔に保ち、整理整頓しておくことは、自衛隊においては生き残りに直結する。例えば有事の際は、必要なものを瞬時に取り出す必要がある。どこに何があるか、一目でわかるように整頓しておくことは必須だ。

また、装備の部品が足りなかったり、手入れを怠っていたりして、いざというときに使えなかったら、それこそ命にかかわる。空挺隊の仕事道具であるパラシュートを例にとってみればわかるだろう。

だからこそ、自衛官の訓練でイヤというほどたたき込まれるのが、掃除と整理整頓なのだ。

定期的に行われる「台風」という訓練では、教官が部屋に入ってきて、ロッカーの中身をぶちまけたりベッドをぐちゃぐちゃにしたりして散らかしていく。そしてその際、その部屋にあったものをこっそりと持ち去りまでする。

訓練生は片づけをしながら、何が持ち出されたのかを確認し、正しい答えを教官に告げなければならない。このように、毎日の片づけが、実戦を見据えた訓練だったのだ。

ちなみに、自衛官ひとりに与えられるスペースはロッカー1つと二段ベッド下に収納されたケースのみ。自衛官は皆、必要最低限のものだけで暮らすミニマリストでもある。

しかし、毎年のように大規模災害が発生する昨今、普通に暮らす誰もが、危険と隣り合わせに生きているといっても過言ではない。生き残りのためでは、非常袋や食料の備蓄など、いざというときの備えだけでは足りない。

何よりも重要なのが、「サバイバル精神」を日頃から養っておくことだ。サバイバル精神とは、生き残りのための肉体的・精神的な備えのこと。そして、掃除・片づけは、究極的にはサバイバルを目的として行うものである。

家中の収納という収納がギュウギュウに満杯で、床には行き場のないモノが散乱している……。こんな部屋に住んでいると、いざというとき、生き残る確率が極端に低くなってしまう。

床にもテーブルにも、何もない状態を保つことが大切。ソファは丸洗いできるカバーのついたモノが、カーペットは毛足の短いモノがおすすめ(撮影:田中達晃+石川咲希/Pash)

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床にもテーブルにも、何もない状態を保つことが大切。ソファは丸洗いできるカバーのついたモノが、カーペットは毛足の短いモノがおすすめ(撮影:田中達晃+石川咲希/Pash)

例えば家の外に脱出しようとしたとき、床にモノが散乱していると、それだけ行動のスピードが落ちる。

また、余計なストレスを増やし、パニックを招くことになるのもリスクを高める。有事の際はただでさえ、気持ちが高ぶって焦っている状態。そんな中、散乱したモノをよけたり、必需品を探したりして行動に時間がかかると、さらに焦りが倍増してしまう。冷静な判断が下せなくなり、命を危険にさらす恐れがあるのだ。

ダイエットや頭の中の整理整頓にも

掃除・片づけは、避難経路を確保すると同時に、それをしっかりと頭に入れることにつながる。また習慣的に身体を動かすため、ダイエットや身体機能のメンテナンスにも役立つ。

例えば筆者は、部屋の掃除が終わった後に粘着ローラーを持って最終チェックをする。そのときは床に目線を合わせるためにはいつくばり、隅々まで入念にチェックしていく。匍匐前進のような動きが要求されるわけだ。

また仕事を含め、日常生活におけるパフォーマンスもアップする。部屋の中のモノを機能的に並べられるということは、頭の中も整理整頓されているということ。無駄なく考え、動くことができるからだ。

持っている衣服すべてが見渡せるよう、スッキリさせておくのがポイント(撮影:田中達晃+石川咲希/Pash)

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持っている衣服すべてが見渡せるよう、スッキリさせておくのがポイント(撮影:田中達晃+石川咲希/Pash)

ここまで説明してきたところで、「そんな理屈で部屋が片づいたら苦労しない」と考える読者も多いことだろう。片づけ下手の人のほとんどが「どこから手をつけていいかわからない」「片づけてもすぐ散らかる」「忙しくて時間がとれない」の三重苦を抱えているからだ。

しかし、これを書いている筆者自身、昔から掃除が得意だったわけではない。こまめなタイプでもなく、部屋が散らかっていてもまったく気にならなかった。それが自衛隊での訓練を経験することにより、現在、清掃会社を起業するまでに至っている。もちろん自宅は、つねにピカピカな状態を保っている。

なぜなら筆者にとって掃除は、わざわざする動作ではない。無意識に身体が動いて、気づいたら終わっているモノだからだ。しかしそこまで持っていくのには、当然だが理論・技術に加えて、積み重ねが必要になる。

まず理論とは、そもそも掃除や整理整頓とはどのように行うものなのかということ。掃除が苦手な人は、この基本が押さえられていないことが多い。そのため、片づけても片づけてもすぐに散らかってしまう、掃除に非常に時間がかかるため、ついおっくうになり放置してしまう、などのことが起こる。

そして技術とは、テクニックのこと。もちろん、重曹や酢などを使って汚れを落とす方法や、100円ショップのグッズを使った収納の裏技といったこともテクニックの1つだ。しかし、そんなテクニックは、今はちょっとネットで検索すればいくらでも知ることができる。重要なのは、「モノを捨てる」「モチベーションを起こす」「キレイな状態を維持する」ためのテクニックである。

例えば、掃除と片づけに絶対に必要な条件がモノを捨てること。ただ捨てるだけとは言え、技術が必要だ。なぜなら、多くの人は「捨てられない」という思い込みが激しいからだ。

「いつか使うかもしれない」

「もったいない」

「思い出がこもっている」……などなどだ。

しかし、その「いつか」はたいてい来ない。モノにかかっているお金よりも、モノを置いているスペースにかかっているお金のほうがもしかして高くついているかもしれない。つまり、モノよりもスペースのほうが貴重なわけだ。

「思い出を大事にする」と言いつつ、段ボール箱に何もかも詰め込んで、収納場所に押し込んでいるだけでは、思い出す機会もないであろう。家中にあふれかえっているモノを捨てるには、こうした、モノに対する錯覚をすべて排除する必要がある。

同じ掃除の動作を愚直に繰り返す

そして積み重ねとは、何度も同じことを経験し、体得していくこと。つまり、筆者が自衛隊の訓練時代に行っていたように、同じ掃除の動作を繰り返すという課程を経る必要があるのだ。

といっても別段、難しく考える必要はない。最初から完璧にしようと思わなくてもよい。「夕食の前に掃除機をかける」「トイレを使ったら便座や周囲を拭く」「モノを使ったら元に戻す」という行動を愚直に繰り返すのみである。繰り返すうち、1つひとつの行動からムダがそぎ落とされ、手際がよくなってくる。

ここまで来ると、「掃除をする」という意識なく、つねに部屋はキレイに保たれる。


『自衛隊式片づけ術』(飛鳥新社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

『自衛隊式片づけ術』では、筆者が自衛隊で身に付けた、掃除のためのテクニックを紹介している。題目を挙げれば、「片づけは散らかすことから始める」「革靴をピカピカに光らせる裏技」「収納場所をメモしておく」「ハンガーの間隔はすべて指2本分に保つ」のような内容だ。いかにも自衛隊らしい小ネタも含まれている。

しかし本当に読者に役立ててほしいのは、以上説明してきたような、掃除・片づけを習慣にするためのテクニックだ。そして掃除・片づけを日常的に行うことにより、有事に対応できる精神・肉体が整っていく。そのことがまた、人生の設計図を考えるうえでも役立つのではないかと考えている。

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畠山 大樹:元自衛官・お掃除レンジャー社長

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