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2020.02.19

どれくらいの体温が健康的?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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37度を超えると「熱が出た!」と思ってしまいがちですが、実は日本人の7割くらいは、体温が36.6℃から37.2℃の間なのだそうです。
体温には個人差があるので、平熱が37度越えの方も多いのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2017年のBritish Medical Journal誌に掲載された、体温と死亡リスクについての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

健康的な体温はどれくらい?

体温は高い方が良いのでしょうか、それとも低い方が良いのでしょうか?
これはまだ解決されていない問題です。

この問題は体温が何を指すのかによっても違います。

人間の脳や内臓の中心部の温度は、深部体温と言って、ほぼ人種で一定に保たれている、という考え方があります。

その一方で通常測定されている体温の大部分は、皮膚の表面の温度で、これは外気温によっても大きく左右されますし、人間は深部体温を一定に保つために、表面温度を上下させるので、それを測定して評価することは、実際には非常に難しいのです。

体温が上がると死亡リスクも増加

今回の研究はアメリカの病因の大規模な医療データを活用して、感染症の診断や抗菌剤の処方がされておらず、体温が正常範囲の中にある35488名の体温(体表温)と、病気のリスクや生命予後との関連を検証しています。

その結果、体温の平均値は36.6度(95%CI: 35.7 から37.3)で、年齢が10年上がるごとに0.021度ずつ低下しています。
人種差でみると白人種に比較して、アフリカ系アメリカ人は0.052度有意に上昇していました。
甲状腺機能低下症では0.013度体温は低下していて、癌では体温が0.02度上昇、BMIが1上がる毎に体温は0.002度上昇していました。脈拍や血圧も体温上昇と正の関連を示していました。

この人種差や病気、BMIや脈拍血圧などの計測値は、体温の数値の個人差のうち、8.2%しか説明することは出来ず、説明困難な体温の個人差と、最も関連を持っていたのは死亡リスクでした。
体温が1.49度上がると、1年間の死亡リスクは8.4%有意に増加していました。

体温が様々なリスクと関係している可能性も

今回の大規模データにおいては、原因は明確ではありませんが、体温の基礎値と死亡リスクが関連を持っていました。

基本的に体温は年齢と共に低下しているので、やや矛盾した要素があるようにも思いますが、通常測定された体温が、多くのリスクと関連を持っているという結果は大変興味深く、今後より詳細な知見に結び付くことを期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36