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2020.01.21

ブレインヘルスの最新事情/脳の専門医・霜田里絵さん「幸せな脳をつくる」小さな習慣<後編>【美の流儀】

ワコール ボディブック

脳神経内科の医師である霜田里絵さんは、「脳のコンディションを維持するために大切なのは、"心のあり方"と"生活習慣"です。脳のメンテナンスがきちんと行われていれば、それが結果として"美"につながります」とアドバイス。後編では、コンディションのいい"幸せな脳をつくる"ための、"心のあり方"についてうかがいます。

「ないもの」ではなく「あるもの」を探す

難病の患者さんが、あるとき、私にこうおっしゃったんです。「引っ越した新しい家がね、朝日がとてもきれいなの」と。私は、日常のささやかな瞬間にも幸せを感じようとするその方の生き方に、深く感銘を受けました。一方で、クリニックにいらっしゃる若い女性のなかには、日々のことにストレスを感じてさまざまな不調に悩まされている方も多くいます。そして、そういう方はたいてい、「私にはあれがない、これもない」と、「ないもの探し」ばかりをしているのです。

幸せというのは、外にではなく、自分の内側にあるものです。人と比較したり、世の中が決めつけるレッテルに惑わされたりすることなく、身近なことに幸せを感じることができるかどうか。その力、言ってみれば「幸福力」は、人が生きていくうえでの軸になるものです。

だからぜひ、毎日寝る前に3分ほど時間を使って、「あるもの探し」をしてほしいのです。「私にはあの人とあの人と、ふたりも友達がいる」「明日も仕事がある」と、あることだけを考える。「お金がない」「彼氏がいない」とないもののことばかり考えていると、さびしい気持ちになって、いい眠りが訪れるはずもありません。「いいことだけを書く日記」をつけるのもおすすめです。今、目の前にある素敵なことを探す習慣を続けていけば、人間的にも成長していけるはず。

無心に没頭する時間をつくる

脳は、人間の臓器のなかで唯一、成長させることができる臓器です。だからこそさまざまな脳トレも流行るわけですが、最近の研究で、「脳を成長させるには"鍛える"のではなく"休ませる"のがいい」ということが言われるようになったのは、大きな転換だったと思います。ぼんやりする時間を意識的につくることや、例えば意味のないいたずら描きをするなど、無心になって没頭できることをするのも、脳をすっきりさせます。

また、想像力や創造力は、脳にとっての「予備力」につながります。「認知の予備力」が高い人は認知症になりにくいと言われています。絵を描いたり塗り絵をしたりというのも、脳にとっていいことだと思いますよ。

自分とは"違う"人とコミュニケーションする

極端な思考は、脳を疲れさせます。例えば、物事の一面だけにとらわれる。「自分は神経質で疲れてしまうのが嫌だ」という患者さんに、「神経質だからこそ、細やかな気づきができるのでは?」とお伝えすると、みなさんはっとされます。そんなふうに、視点を変えて物事を考えてみるのは、脳にとって非常に刺激になります。

私には、N.Y.に住む年上の友人がいるのですが、彼女とメールをやりとりしていると、たくさんの"気づき"があります。似たような環境の人ではなく、あえて違う環境、違う年代の人とコミュニケーションをとるようにするのも、脳を健やかにする習慣のひとつです。

人生100年時代。これから先、40年、50年と、どう生きていくかは、今を生きる女性にとっては大きな課題です。にもかかわらず、目標にできるロールモデルはまだまだ少ない。だからこそ、素敵に生き抜いた美しい人たちを探して、向上心をもって日々を送ることが大切。

私の患者さんで、80代後半の女性がいらっしゃるのですが、その方はいつも本当に美しいのです。聴診をした際、驚き、感心したのですが、その年齢になっても、きちんとブラジャーを付けていらっしゃる。こういうふうに生きていきたいな、と思わされる、憧れの存在です。

しっかり睡眠をとり、バランスのよい食生活を心がけるという基本的な生活習慣に加えて、幸せな気持ちで日々を過ごす心の習慣をつける。そうすることで、表面的ではない、しっかりと裏打ちされた美しさ、普遍的な美しさを身につけることができるのだと思います。

霜田里絵(しもだ さとえ)

医師・医学博士。銀座内科・神経内科クリニック院長。順天堂大学卒業後、同大学病院の脳神経内科医局を経て、都内の病院勤務。2005年から銀座内科・神経内科クリニック院長を務める。2011年に医療法人社団ブレイン・ヘルスを設立、理事長に就任する。パーキンソン病、アルツハイマー病、脳血管障害、頭痛、めまい、しびれなどが専門。日本神経学会専門医、日本内科学会認定医、日本抗加齢医学会専門医、アメリカ抗加齢医学会認定専門医。『絶対ボケない頭をつくる!:脳の専門医が教える 元気に、長生きする方法』(学研パブリッシング刊)、『一流の画家はなぜ長寿なのか』(サンマーク出版)ほか著書多数。

取材・文/剣持亜弥
撮影/高木亜麗

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