メニュー

2019.12.08

実は鉄道旅に使える、飛行機の「お得なプラン」|単純往復や出張旅行だけじゃもったいない

東洋経済オンライン

北海道の雪原を走るローカル列車(写真:kiki/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/317787?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

北海道の雪原を走るローカル列車(写真:kiki/PIXTA)

「旅は非日常を楽しむもの」とよく言われる。

私はJリーグ観戦が好きで、アウェーゲームにも行くため、年に何度も遠出する。日本全国あちこちに出かけた結果、旅を実感するのは目的地に着いたときよりも、そこに向かう過程にあると思うようになった。

流れゆく車窓から見える景色、何気なく降りてみた駅と町のたたずまい、ふとしたときに交わす地元の方との会話。もちろん時間のないときはとんぼ返りもするが、限られた時間と予算の中で目的地を単に往復するだけでなく、どこかに旅の過程をより感じる要素を付け加えたくなる。

単純往復以外にも使える

そこで今回は、安価に飛行機を使えるダイナミックパッケージに注目してみたい。

というと、「往復の飛行機と宿をネットで取るやつですよね、まさに目的地に往復するだけでは?」と思われるかもしれない。もちろんそのような使われ方は多いが、実はそうではない。

代表的な「ANA旅作」「JALダイナミックパッケージ」の特徴を以下に示す。「楽天トラベル」や「じゃらん」といった予約サイトからも「ANA楽パック」「JAL楽パック」「じゃらんパック」という名で展開されている。

・旅行前日まで受付可能
・往路の到着空港と復路の出発空港は別々に設定できる
・1泊2日から13泊14日まで設定可能
・少なくとも1泊は宿を選択する必要あり
・代金は需要によって変動する

行程は、極端にいえば行きは羽田→新千歳、帰りは福岡→羽田という設定すら可能だ。宿は最低1泊だけパックから選べばいい。例えば3泊4日のうち2泊は旅先で見つけた宿に泊まったり、親戚・友人の家に滞在したりといったことができる。

つまり、ダイナミックパッケージを自由な旅に仕立てるには

・往路の到着空港と復路の出発空港を別にする
・2泊以上の場合、パックとは別に自ら宿を選ぶ余地を残す

この2つが要点だ。

注意点は、予約タイミングで旅行代金が変わるところである。出発日間近になれば空席・空室も少なくなり値段は上がる。日程が決まったら早めに取ったほうがいい。また、同日の便でも人気の時間帯は数千円の上乗せがあるし、連休時は全体的に高額になる。

実例の1つ目として、まずは土日の2日間で行った手軽な例を紹介する。

私はジェフユナイテッド市原・千葉を応援している。昨年のアウェー、アビスパ福岡戦は4月の日曜開催であった。以前から広島県の江田島にある海上自衛隊・第1術科学校を見学したいと思っていたので、ここに組み込もうと思いつき「じゃらんパック」を予約。行きは羽田―広島便、宿は呉市内、帰りは福岡―羽田便とした。

料金は5週間前の予約で2万7200円。呉から博多までは別途、JR呉線と新幹線で移動する。

ANA673便は羽田を8時過ぎに離陸。「本日の広島は大変いい気候です。すてきな週末をお過ごしください」。CAのアナウンスとともに空港を降り立ち、呉行きのバスに乗車した。

呉に到着すると、セーラーデザインの制服を着た若い自衛官が歩き、駅前では募金を呼びかける高校生たちが声を張り上げている。

江田島行きのフェリー(筆者撮影)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/317787?page=2

江田島行きのフェリー(筆者撮影)

呉港から江田島の小用港まではフェリーで20分ほど。小さな待合室を出て路線バスに乗る。バスは曲りくねる細道を抜けると、第1術科学校に到着した。だが、ここではあえて降りない。

バスは青く穏やかな江田島湾に沿って進む。その入り江のどん詰まりにある、江南橋というバス停で下車した。この近くに900円ほどで刺身定食を出してくれる食堂があることを、空港から呉までのバスの中で目をつけておいたのだった。江田島湾を眺めながらの昼食のあと、来た道を戻り、今度こそ第1術科学校で下車、見学に参加した。

地元の人との会話でまた行きたくなる

宿泊地の呉では食事のあとショットバーに向かった。以前、たまたま入ったところ、マスターがサンフレッチェ広島を応援していることがわかり、話が弾んだのだ。

呉港の夕景。地元の人との会話で、また訪れたい場所が生まれる(筆者撮影)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/317787?page=2

呉港の夕景。地元の人との会話で、また訪れたい場所が生まれる(筆者撮影)

この日は会話の中で、瀬戸内海にある大崎下島に御手洗地区という、江戸時代に風待ち、潮待ちの港町として栄えた保存地区があることを聞いた。大崎下島も呉市である。次はそこに行こうと思った。こんなふうに土地の方と会話すると、また訪れる理由ができる。

翌日は呉線で広島に出て、新幹線で博多に向かった。試合は負けてしまったが、以前仕事でお世話になった博多在住の方々と合流、近況を話し合ってから帰途についたのだった。

ダイナミックパッケージを使うことで、安く充実した旅ができた一例だ。

次は、パックと鉄道のパスを組み合わせ、6日間で北海道を巡った例だ。

昨年12月初めに、1週間の休暇を得る幸運に恵まれた。ジェフ千葉はJ1昇格プレーオフ出場もかなわず、私にとっての観戦シーズンは終わったので、冬の北海道に向かおうと思った。

このときは各社比較し、3週間前にJAL楽パックを予約。行きは羽田―函館便、帰りを旭川―羽田便として道内を巡ることにした。自由度を残すため、宿は5泊のうち2泊だけ指定した。

その結果、往復の飛行機と旭川のビジネスホテル、摩周にある2食付きの温泉宿込みで3万800円となった。この価格、ホテルや旅館にしわ寄せが行くとも思えず、すると北海道への飛行機代が片道1万円しない計算となるではないか。宿泊地や宿泊数を何パターンも試してみた結果ではあるが、これには驚いた。

道内移動は鉄道のパスで

道内の移動手段は「大人の休日倶楽部パス(北海道)」を使った。これは50歳以上の中高年しか使えないので、一般的にはJR北海道「北海道フリーパス」がよいだろう。2万7430円で7日間有効、特急列車も使える。

特急も使えるが、なるべく普通列車を乗り継ぎ、函館から道央を経て道東、さらには道北まで向かう計画を立てた。

1日目:羽田空港→(JAL)→函館空港→函館→長万部
2日目:長万部→東室蘭→【特急】→南千歳→【特急】→新得→釧路→根室
3日目:根室→厚岸→釧路→摩周
4日目:摩周→網走→遠軽→旭川
5日目:旭川→【特急】→幌延→(路線バス)→豊富温泉→豊富→【特急】→稚内
6日目:稚内→名寄→和寒→【特急】→旭川→旭川空港→(JAL)→羽田空港

北海道5泊6日の行程図(筆者作図)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/317787?page=3

北海道5泊6日の行程図(筆者作図)

函館では、翌1月に150年の歴史を閉じる棒二森屋デパートの閉店売りつくしセールが行われており、時代の流れを感じるとともに、街に流れるクリスマスソングが寂しさを際立たせていた。

この日は、予約サイトに載っていない長万部の温泉宿を電話予約した。学生時代、当時のワイド周遊券で道内の夜行列車を主な宿とする節約旅をしたのだが、長万部でこの旅館に泊まる贅沢をした。32年前で1泊2食6000円。宿の雰囲気は当時とまったく変わっておらず、急激に往時の記憶がよみがえってきた。そして宿代が1000円程度しか上がっていない。

「値上げしたいのはやまやまですけど老朽化もあって、消費税と少しぐらいしか上げてないのです」と宿の女将さん。

翌日は、普通列車で通学の高校生にまぎれて東室蘭まで進み、特急で新得へ。駅近くのスーパーで酒類を調達、そこから根室まで各駅停車で移動した。

乗客がまばらな古いディーゼル列車の中から、池田駅の名物駅弁「ステーキ弁当」(要電話予約)を食べながら冬の太平洋を眺め、ときおり居眠りした。

この日の宿は根室としたが、釧路にすべきか迷いそうだったので、パックからは外しておいた。どこに泊まるか迷いそうな場合はパックから宿泊を外しておくと、より自由な旅が楽しめる。

翌朝は、幻妖な湿原の中を列車が突っ切っていくという日本離れした景色を眺め、牡蠣で有名な厚岸で下車した。寒空のもと15分ほど歩いてたどり着いたのは漁協の直売店。販売している牡蠣をその場で食べられるのだ。

5日目は道北の豊富温泉に向かった。油分を含んだ泉質とのことで、一度訪れたいと思っていたのだ。温泉までのバスが出る幌延駅には昼前に到着した。

雪降る夜の豊富駅(筆者撮影)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/317787?page=4

雪降る夜の豊富駅(筆者撮影)

旅の楽しみとして、町の食堂に入るというのがある。雪道を5分ほど歩き、店を見つけた。一番乗りで、とりあえず無難なメニューを頼んだ。すると続々と作業服の男たちが入ってきて、慣れた口調で次々にカツ入りカレーラーメンを注文している。人気メニューはこれだったか。いずれにせよ、地元で仕事をしている人々でにぎわう店に外れはない。

豊富温泉は、浴室に入るとびっくりするほど石油臭かった。けれどもすぐ慣れるし、なにしろ皮膚によいとのことで、長期の湯治客でにぎわっているのが印象的であった。外には雪が舞っており、より温泉のよさが際立った。

思いもよらないコースが見つかるかも

最終日は稚内から普通列車で南下した。巻き上げる雪が視界をさえぎり、天塩川には雪をまとった氷があちこちに浮いている。

和寒という、道内でも有数の寒冷地で下車した。深い雪の中を歩き、やがて道の外れに食堂を見つけた。雪を落とし、引き戸を開けると先客のおっさん2人が煙草をふかしながら農家の補助金について熱心に会話している。

道内有数の寒冷地として知られる和寒(筆者撮影)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/317787?page=4

道内有数の寒冷地として知られる和寒(筆者撮影)

カツカレーを注文し、黙々と食べ終わってハンカチで額を拭いていると、「ストーブ消そうか? お客さんの真後ろだものね」と話しかけられ、それをきっかけにいくつかの会話をした。地元の人しか来ない店にとって私は闖入者なのであり、声をかけるタイミングもなかったのだと思う。この食堂に限らず、一見無愛想に感じても、会話が始まるとそうではないことが多い。

単純往復の手段と思われがちなダイナミックパッケージだが、このように自由な旅を支える手段としても便利だ。短い旅から長い旅まで、さまざまな組み合わせが考えられる。思いもよらないコースを見つけることができるかもしれない。

記事画像

八田 裕之:週末旅行家

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します