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2019.10.03

女性の約8割が抱える『月経前症候群(PMS)』はこう乗り切る!

kencom公式ライター:森下千佳

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生理前になると、なぜかイライラ。肌は荒れるし、身体はむくむし……この時期は不調だらけ!そんな、生理前の不調・月経前症候群(PMS)を、女性の約8割が抱えていると言います。生理は毎月あるものだから、上手に付き合っていきたいですね。
今回は、「PMSって何?」「どうしたら症状が軽減するの?」など、PMSにまつわるお話を、女性のための総合ヘルスクリニック イーク表参道副院長の高尾美穂先生に伺いました。
女性はもちろん、男性にも知ってほしい情報満載です!

高尾美穂(たかお・みほ)先生

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イーク表参道 副院長
東京慈恵会医科大学大学院修了後、慈恵医大病院 産婦人科助教などを経て現職。専門は婦人科がん(特に卵巣がん)。産婦人科専門医・医学博士・スポーツドクターのほか、ヨガ講師としてGyne Yogaを主宰する。

生理前後に起こる不調、『月経前症候群(PMS)』の真相に迫る

月経前症候群(PMS)とは?

月経前症候群(PMS=Pre Menstrual Syndromeの略)とは生理前だけに起こる心や体の不調のこと。
生理が始まる3日〜10日ぐらい前から起こる不快な症状で、だるい、むくむ、肌が荒れるなどの身体的なことから、イライラする、気分が落ちこむなどの精神的な症状まで様々です。生理前だけ起こるというのがPMSの最大の特徴で、不調が続いていても生理が始まるとケロッと治ってしまいます。

そもそも、月経のある女性の75%、つまり4人に3人もの女性が生理前になんらかの不快症状を感じると言われています。症状が軽いものから、日常生活に支障が出るほどの重度のものまで様々ですが、中でもPMSはその症状の程度が病的に強い状態のことを指します。

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生理前の不調は女性ホルモンによるもの

PMSの原因は、排卵から生理前に分泌される女性ホルモンと呼ばれるプロゲステロン(黄体ホルモン)の急激な変化によるものと考えられています。

この時期は、妊娠に備える黄体期。プロゲステロンは、基礎体温を上げ、子宮内膜を厚くし、水分を体に溜め込みやすくするなどして、身体を妊娠に適した状態にします。そのため、体調が不安定になると言われていますが、詳細は明らかになっていません。

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PMSは20~30代女性に多く見られ、基本的には生理周期も卵巣機能も正常な人に起こります。

ストレスや性格的な傾向もPMSを悪化させる要因になります。そのため、個人差が大きいです。

PMSは治療できる

まず覚えておいてほしいのは、PMSは女性ホルモンの変化によって起こる症状であって、自分のせいではないと言うこと。
日本人は我慢強いので耐えてしまう人も多いのですが、PMSが原因で周りの人とぶつかったり、自分や周りが辛い時は、ぜひ婦人科を受診してください。PMSは治療も可能です。

婦人科での治療は主に2種類あって、①低容量ピルと、②漢方薬を使う方法があります。

①低用量ピル

低用量ピルは、排卵を抑えることにより女性ホルモンの量が大きく変動することがなくなって安定するため、体調やメンタルが安定しPMS症状、特に身体症状が緩和されます。ピルの種類によっては、特にメンタルによく作用するものもあるので、PMSがつらい方は婦人科で是非相談してみてください。

②漢方薬

漢方薬も効果があります。例えば、「抑肝散」という漢方は、子供の夜泣きを緩和するために作られた漢方ですが、気分のアップダウンを抑える作用があるので、イライラなどの精神的な症状がでる方にはよく使います。

他にも、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」など、それぞれの方の症状に適した漢方を使い症状を緩和していくことができます。

上手に乗り切るPMSセルフケア

基本は「PMS=ホルモンバランス好調!」と考えよう!

まず、生理前の不調はなぜ起きるのかと言うと、ちゃんと排卵しているからですよね。

ホルモンバランスが悪いからPMSになるわけではなく、ホルモンバランスが良いからPMSになる。つまり、「PMS=ホルモンバランス絶好調!」で、身体の中が良い状態であることのサインだとポジティブに捉えてほしいと思います。

こう捉えて心が軽くなると、PMSも軽くなります。PMSで苦しむ方は真面目な方にも多く、なんでも完璧にこなそうとせずに、辛い時は肩の力を抜いて自分を甘やかしてあげてることが大切です。

周りに理解してもらおう!

周りの人に理解してもらうことも大事です。
パートナーや会社の上司や同僚など、仕事やプライベートで密接に関わる人たちに協力をお願いしてみましょう。

特に男性には女性のホルモンの変化による不調が想像しにくいものです。女性にはサイクリックな波があり、一週間も経てば元どおりに戻ることを伝えれば相手にも安心してもらえます。
大切な仕事は後回しにしたり、旅行や出張の時期を生理後のスケジュールに入れ替えるなど、無理をしないようにしてください。

ハーブティーやヨガでリラックスを心がけよう

海外ではメディカルハーブとして使われている「チェストツリー」には、女性のホルモンバランスの乱れを整える作用があり、PMSや生理不順、更年期障害に古くから使われてきました。ハーブティーなどで取り入れ、リラックスタイムを作ってみましょう。

また、ヨガなど身体を動かすこともイライラを和らげる効果があるので、不調を緩和してくれます。また、睡眠時間もしっかりと確保しましょう。
PMSの時期時は特に、リラックスタイムを意識してストレスを溜め込まないことが大切です。

女性は自発的に相談を、男性は理解と共感を

認知が広がってきたものの、まだまだ我慢して苦しむ方が多いPMS。しかし、PMSの不調の多くは改善できるので、悩まず婦人科の扉を叩いてみてください。
 
また、男性には共感してもらい辛いものですが、女性がホルモンの変化によって起こる体調不良を毎月抱えながら生活していることを知って接してもらえると、女性は本当に助かります!

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。