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2019.08.21

早期発見なら薬で治療も!ストレスには要注意!虫垂炎治療・予防【虫垂炎・後編】

kencom公式ライター:森下千佳

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もし盲腸(虫垂炎)になってしまったら、「薬で治す?」「手術で切っちゃう方が簡単?」、どちらがいいのでしょうか。
今回は虫垂炎の正しい治療方法と予防に役立つ生活習慣のヒントを、北里大学北里研究所病院副院長の石井良幸先生に(一般・消化器外科部長)にお話を伺いました。

■甘く見ると危険!虫垂炎の詳しい内容はこちら

虫垂炎の検査・治療・予防

虫垂炎の検査と診断

虫垂炎の診察は触診が大事です。虫垂炎の場合、痛みが出る場所というのが決まっていて、そこを押して痛いようであれば虫垂炎の疑いがあると診断されます。
同時に、血液検査を行い炎症の程度を確認していくことになります。他にも超音波検査、CTを使った検査を行い、重症度や周り臓器への影響を調べて治療の方向性を決めていきます。

虫垂炎の治療は薬か手術

治療法は大きく分けて2つ。
手術療法で虫垂を切除するか、抗菌薬を使って炎症を緩和する、俗にいう「散らす」薬物療法かのどちらかになります。これは、発症してからの経過時間や、炎症の重症度によって判断されます。
それぞれの特徴は下記の通りです。

▶︎手術療法

現在の治療のスタンダードな方法で、最も確実な治療法といえます。
以前は開腹手術が一般的でしたが、現在では、身体への負担が少なく、術後の回復が早い腹腔鏡下手術で行うことが多くなってきました。腹腔鏡下手術の場合は3〜4日で退院することができます。

ただし、症状が重症化している場合は、虫垂の切除にとどまらず回盲部(小腸の出口と盲腸)の切除になることや、開腹による手術になることもあります。

▶︎薬物療法

抗菌薬を投与して炎症を緩和させる療法で、初期段階であれば効果があります。
基本的には1週間程度の入院が必要です。腸の安静が必要なので禁食をおこなうほか、点滴で抗菌薬を投与して経過をみます。
我慢できる程度の痛みで炎症が少なければ、消化が良いものを食べながら抗菌薬を飲んで経過を見ることもあります。ただし、抗菌薬の投与のみで治療した場合は2〜3割の方が再発してしまいます。

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それぞれにメリットとデメリットがありますし、手術療法、薬物療法のどちらがよいかは状況によっても異なり、一概には言えません。
重要なことは、「盲腸は最悪の場合、命にも関わる病気だ」ということ。どちらの治療を行うかの判断は医師が行いますので、必ず指示に従ってください。

また、どんな病気でもそうですが、治療は早いほど良いです。
我慢強い人や、痛みを感じにくくなっている高齢者は特に注意が必要で、来院時にはすでに重症という例もあります。治療が遅れると、虫垂が破れて腹膜炎に至るおそれがあるので、痛みは我慢せずに医療機関にご相談ください。

虫垂炎になりにくい生活習慣

虫垂炎にならない確実な生活習慣はまだわかっていませんが、腸の炎症を起こしにくくするヒントはあります。

▶︎ 便を溜めない

排便をしっかりすることは大事です。便が固まって虫垂を塞いでしまったり、虫垂の中に便が停滞し外に排出されないと石のように硬くなってしまうことがあります(糞石)。
糞石ができると、虫垂炎になりやすくなってしまうので、きちっとした排便習慣をつけることは大切です。ぜひ、食物繊維が豊富な食材をバランスよく取り入れた食事を心がけて欲しいと思います。

▶︎ストレスを溜めない

虫垂炎にはなりやすい時期があります。それは、新年度が始まる4月、5月。
就職や進学などで環境が変わり、ストレスを溜めやすい時期です。ストレスがかかると身体の免疫力が下がり、細菌が繁殖しやすい環境になるので、虫垂炎を起こしやすくなります。

気分転換をするなど、意識してリラックスすることを心がけましょう!

甘く見ずに早めの対処を!

虫垂炎は重症化すれば命に関わる病気です。一方で、定期的な排便習慣やストレス対策でお腹の健康を維持することはできます。
少し気をつけるだけでも、だいぶ違うものです。ぜひ、腸内環境に気をつけて虫垂炎対策を含めた健康対策をしていきましょう。

石井良幸(いしい・よしゆき)先生

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北里大学北里研究所病院 副院長
1991年慶應義塾大学医学部卒業。北里大学北里研究所病院副院長、一般・消化器外科部長 日本外科学会専門医・指導医、日本消化器外科学会専門医・指導医。
日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医、北里大学医学部教授、慶應義塾大学医学部客員教授、医学博士。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

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