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2019.07.05

「介護も妻に」と願う定年夫を自立させるには?|ホンネは「私にあまり寄りかからないでね」

東洋経済オンライン

定年後、妻に甘えて、まとわりつく夫が少なくない。妻はどうやって突き放す?(写真:【IWJ】Image Works Japan/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/288916?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

定年後、妻に甘えて、まとわりつく夫が少なくない。妻はどうやって突き放す?(写真:【IWJ】Image Works Japan/PIXTA)

前回お話しした「両親の介護」について、伝えたいことが多すぎたため、「夫の介護」についてまで触れることができませんでした。

世間一般では、自分が介護になる場合、「妻にお願いしたい」という男性が多いようです。内閣府の『平成30年版 高齢社会白書』によると、男性は「介護が必要になった場合に依頼したい人」として「配偶者」を挙げる人が56.9%と過半数を占めています。一方、女性はといえば、1位は「ヘルパーなどの介護サービスの人」で39.5%、「配偶者」はその約半分の19.3%でした。

夫のことは看るつもりでも「正直、重い」と思う妻

女性の平均寿命のほうが長いうえに、男性が年上のご夫婦が多いので、女性は自分が介護状態になるときには今のパートナーはいないだろうと推測している部分があるとは思います。ただ、男性のアンケート結果には「最後は妻に頼りたい」という、よくいえばかわいらしい、悪くいえば甘えた気持ちが表れているような気がします。

妻の側からすると「最期まで看ますよ、もちろん。でも、全面的に寄りかかられると少し重い」というのが本音ではないでしょうか。まだ介護状態に至らなくても、定年後は妻とべったりくっついて行動したがる夫が出てきますが、これは妻にとってはありがた迷惑です。たぶん、会社のリタイアメントセミナーで「これからは妻や家族を大切に」と聞かされ、「大切に」の仕方がわからずに間違った方向に力を注いでしまっているのだと思います。まさにかつていわれた「濡れ落ち葉」のようです。

多くの夫婦の場合、子どもが独立しても、妻は夫といると何となく世話を焼くことになってしまい、リラックスしきれないところがあります。ですから、たまに「ひとりの女性」に戻って、好きな服や絵を夕食の時間を気にせず見て回ったり、年齢も立場も忘れて学生時代や趣味の仲間とおしゃべりしたりする時間が、リフレッシュとしてとても大切なのです。そうやって遊んでいる間は、妻としての役割を放棄しているのではないかという罪悪感も手伝って、そういうイベントの後はいつもより夫にも優しく接することできる、という声はよく聞きます。

つまり、夫婦はつねにベッタリと一緒にいるのではなく、それぞれが独立して気の合う仲間と過ごす時間、そしてひとりで自分のペースで過ごす時間という3種類あるのがベストだと私は思います。

妻がひとりで出かけるたびに「夕飯どうなる」と思う夫

妻がひとりの女性に戻り、自分の時間を過ごすということを実現するには、夫が一定の家事をこなせること、その結果、数日または1週間ぐらい夫ひとりでも暮らせるということが前提条件となります。妻がひとりで出かけるたびに、自分がいない間の食事を全部用意して、ゴミ出しの準備をして、などとやっていたら大変です。

ご主人が外食も出来合いのお惣菜でも一向にかまわないというのであれば、分別・回収ルールに沿ったゴミ出しぐらいやってもらえればいいでしょう。でも、外食も既成の惣菜も食べたくない、というのであれば、妻は自分が出かけるときぐらい夫に自炊してもらいたいと思って当然です。

わが家の夫は、家で原稿を書く仕事の時間が長いため、気分転換も兼ねて料理を作ります。当初は「拍子切り」とか、ちょっとした用語がわからず苦労していたようですが、ネット検索すれば画像解説や動画レシピも多いので、しだいに上達してきました。最近ではこちらが教えてもらいたいような料理さえできるようになりつつあります。

世間では「夫が料理や家事をすると無駄なものを買ってきたり、後始末が大変だから、かえって何もしないでいてくれるほうがまし」という声も聞きます。でも無駄な調味料や料理器具が一時的に増えたとしてもいいではないですか。そんなことは些細なことで、それよりも暮らしの中での会話、共通の話題が増えれば安上がりで心豊かになれます。

さらに、親の介護や自分自身の入院で家を空ける必要が出てきたとき、夫に安心して家事を任せられることは、将来への備えとしても必要だと思います。イクメンが当たり前の30代・40代の世代と違い、50代・60代の男性は自立して暮らすための必要なスキルを身に付ける機会がありませんでした。ぜひ、暮らしの現場を少し明け渡し、育てていくつもりで温かく見守ってみてはいかがでしょうか。

さて、夫婦の距離に話を戻しますと、お互いに楽しめるものは一緒に、そうでないものは無理して付き合わず、パートナーがそれを楽しむことを尊重することが、相手を大切にすることだと私は思うのです。

このあたり見極めができているご夫婦はそれでいいのですが、そうでなければ、まずは相手の好きなことに付き合ってみることをお勧めします。聞くだけではわからなかったその趣味の面白さを知り、見聞を広めることにつながりますし、相手が好きな理由が理解できるようになったり、趣味の仲間に囲まれてうれしそうなパートナーの姿に新たな一面を垣間見ることができたりします。将来もずっと同じ趣味を一緒に楽しむべきかどうかは、経験した後で判断したらいいのです。

楽しめる趣味があれば「耐える孤独」に陥らない

最後に、ひとりの時間について、少し触れておきます。冒頭にも書きましたが、女性はどんな人生を送ってきたとしても最後はひとり、という可能性が高くなります。

体力がなくなり、会いに行くお友達が減ったとしても、幸せに浸れる趣味があるということはすばらしいことです。なぜなら、そんなひとりの時間を過ごせれば、「耐える孤独」を「楽しめる孤独」に転換できそうな気がするからです。そういう意味では、ひとりで楽しめる趣味を持ち、自分ひとりの時間を慈しむように過ごせることも、明るい老後のために極めて重要なことだと思います。

ぜひ、夫婦で、仲間で、ひとりで、OnもOffも年をとればとるほど「自分らしく」、人生のラストステージまで明るく暮らしたいものです。

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大江 加代:確定拠出年金アナリスト

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