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2019.05.08

こんなに簡単!激痛を招く石を作らない生活習慣【尿路結石・後編】

KenCoM公式ライター:黒田 創

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特に30~50代の男性が罹りやすく、10人に1人は生涯のうち一度は罹患すると言われる尿路結石症。
前回はその概要や種類、症状などについて触れましたが、今回は診断および検査方法、さらに治療法、予防策などについて尿路結石症治療のエキスパート、横浜市にある大口東総合病院の松崎純一先生に伺いました。

もしもなったら?尿路結石の検査・治療法

尿路結石症の診断、検査方法

突然、今まで経験した事のないような背中や下腹部への激痛が走った時は、尿路結石症の可能性があります。泌尿器科、もしくはかかりつけ医の診察と検査を受けましょう。仮に結石が2~3mmと小さくても、石が尿の流れを塞いで腎臓内の圧が上昇すると強い痛みが起こります。また、痛みがない段階では人間ドックや内科検診の超音波検査で結石が見つかるケースもあります。

検査は、尿を採取して血尿や尿路感染症の有無を確かめる方法がひとつ。もうひとつは画像検査です。画像検査は以下のような方法があり、患者さんの状態によって選択します。

これらの検査を経たのちに、自然排石または薬物治療にするか、手術するかを決定します。

尿路結石症の治療方法

尿路結石の治療法はいくつかありますが、主に5つの方法に分けられます。
具体的には、下記になります。

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それぞれ簡単にご紹介していきましょう。

・自然排石/薬による治療

4mm以下の結石は尿と一緒に自然排石される可能性が高いため、排石を促す薬物治療を行います。その際には痛みを和らげる治療も同時に行われ、結石の成分によっては石を溶かす治療も行います。また、4mmより大きい結石の場合は自然排石が難しいため、他の方法を選択することになります。

・体外衝撃波砕石術(ESWL)

身体の外から衝撃波を当てて結石を割り、尿と共に排石させる手術になります。これは身体への負担も小さいため、高齢者の方にも行いやすい方法です。
この治療は外来治療でも可能なほどで、入院しても1~2日程度ですみます。ただし、排石までやや時間がかかってしまいます。
欠点としては、1cm以上の大きさだと治療成績が低下する点。硬い結石(CTスキャンでわかります)の場合も治療が難しいです。

・経尿道的結石砕石術(TUL)

尿道から細い内視鏡を入れ、尿管や腎臓の結石をレーザーや空気衝撃波などで砕石する方法です。
石片は手術中に体外に出せるため、治療効果が高い一方、身体にはやや負担がかかるため、入院期間は数日~1週間程度かかります。

・経皮的腎・尿管砕石術(PNL)

こちらも内視鏡を使用して手術する方法ですが、尿道からではなく、背中に小さい穴を開け、そこから砕石・採取する治療です。TULでは砕ききれないような大きな腎結石に対して適用されるケースが多いです。2cm以上の結石ではこの方法がおすすめです。
身体に穴を開ける関係上入院期間も1〜2週間程度かかります。

・開腹手術

近年激減していますが、腹部を切開して結石を摘出する方法もあります。
ESWLやTULなど、身体への負担が少ない治療が増えているため、滅多に行われることはありません。

これらの治療法は、結石の位置や大きさ、どの程度入院できるかなど患者さんの状況に応じて選択します。医療技術の向上により、入院を含めた治療期間は短縮傾向にあります。

こんなに簡単なことでいい?尿路結石の予防・再発防止方法

まずは水分をしっかり摂ろう!

前回触れたように、尿路結石症は再発率が高く、メタボや糖尿病、高脂血症などの生活習慣病によってもたらされることが多いのが特徴です。再発予防には脂肪分や塩分、糖分の摂り過ぎを制限して野菜類や食物繊維を増やすといった食生活の改善は不可欠。また、動物性タンパク質を摂り過ぎると尿の中の尿酸が多くなり、結石ができやすくなるので注意が必要です。体育会系の学生さんがプロテインの摂り過ぎで尿路結石に罹った実例もあります。

もうひとつ大事なのは水を1日1.5~2リットル飲むこと。
尿の量が増えると尿中のミネラル濃度が薄まり、病気のリスクを軽減できるのです。まずは食中、食後のお茶や水の量を増やすのがいいでしょう。
また、日常的にも水分を摂るように気をつけてみてください。

シュウ酸対策にカルシウムを摂る

あとはシュウ酸の摂り方もポイントです。「ほうれん草を食べ過ぎると尿路結石になる」という噂を聞いた事はないでしょうか。
結石の成分はシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムなどから出来るカルシウム結石が全体の8~9割を占めており、ほうれん草にはシュウ酸が多く含まれることからこんな噂が流れるようになりました。しかし、毎日大量に食べない限りはほうれん草が原因になるような事はありません。また、シュウ酸は他の食べ物にもたくさん含まれていますので、ほうれん草だけを避けても無意味です。

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シュウ酸対策で最も大事なのは、カルシウムと一緒に摂取すること。腸内でシュウ酸とカルシウムが結合し、吸収されることなく便として排出されることもわかっています。もちろんこれだけで尿路結石症を防げるわけではありませんが、リスクの軽減にはなります。カルシウムは乳製品や小魚などに豊富ですので、食べ合わせの参考にしてみてください。
また、ほうれん草ならゆでることでシュウ酸を減らせます。シュウ酸は水溶性で、例えばほうれん草を3分間ゆでると4割程度減らせます。

ちょっとした工夫で予防・再発防止に

こんなちょっとしたことで、予防、再発防止につながると驚いた方も多いのではないでしょうか?
しかし、水分摂取は、仕事や家事に没頭している人ほど忘れがちです。最初の頃はスマホのアラームなどを活用して、意識的に水分を摂るようにしてみましょう。

また、下腹部に激しい痛みを感じたときにはできるだけ早めに病院で検査することが大切です。
放置しても、よくなることは滅多にありません。
早めに処置して、再発防止に取り組むようにしましょう。

→尿路結石ってどんな病気?激痛が走るって本当?

松崎純一(まつざき・じゅんいち)先生

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1989年横浜市立大学医学部卒業。横須賀共済病院、神奈川県立がんセンター等を経て2002年より大口東総合病院(横浜市)勤務。2015年から副院長を務める。尿路結石の研究および治療のエキスパートであり、『尿路結石症診療ガイドライン2013年版』の作成にも携わる。同病院は松崎医師を中心に尿管結石に対する「体外衝撃波結石治療(ESWL)」や、レーザーによる内視鏡的結石破砕術(TUL、PNL)も多数行っている。

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

(撮影/KenCoM編集部 取材・文/黒田創)

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