メニュー

2019.04.16

きついネクタイによる脳への影響とは【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

記事画像

スーツで働いている人の必需品であるネクタイ。首まわりに締めているけど、身体に影響はあるのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2018年のNeuroradiology誌に掲載された、ネクタイを締めることによる脳への影響を検証した論文です。
これはまあ、肩の凝らない小ネタ、的な性質のものです。

▼石原先生のブログはこちら

ネクタイを締めると脳内が鬱血する?

僕はネクタイはそう嫌いな方ではなく、冬場以外はネクタイを締めて仕事をしています。(冬場はほぼタートルネック)
緩く締めるのはあまり好きではなく、固く締めていることが通常です。

ただ、ネクタイが嫌いという方は結構多くて、その理由は主に、「首が締め付けられて息苦しくなる」ということにあるようです。

首を強く締めることにより、頸静脈の血流が低下することは容易に想定が出来ます。
そのことにより脳内が鬱血することも可能性がありそうです。

これに関してはこれまでに幾つかの研究がありますが、それほど厳密で実証的なものはあまりないようです。

ネクタイを緩めた後も15分間脳血流が低下

今回の研究はMRIによる血流測定を使用したもので、13人の男性ボランティアに、きつくネクタイをした状態と、しない状態、またネクタイをしてからそれを取った状態での、脳内の血流と頸静脈の血流の変化を計測しています。

その結果、ネクタイをすることにより脳血流は7.5%低下し、ネクタイを外しても更に5.7%の低下が持続しました。一方で頸静脈の血流の低下は確認されませんでした。

脳血流量は脳の静脈圧や脳血管抵抗が高いほど、低下すると考えられていますから、首をネクタイで圧迫されることにより、頸静脈圧が上昇し、頭蓋内圧が上昇するのであれば、脳血流の低下は説明が可能です。

ただ、実際には今回の計測において、頸静脈の血流の変化は確認されていません。しかも脳血流の低下は、ネクタイを緩めた後も15分は継続していました。

ネクタイによる脳血流低下のメカニズムは、そう単純なものではなさそうです。

ネクタイは無理にきつく締めないで

この試験ではネクタイは被験者が「ややきつい」と感じる程度に締められていて、血流の低下は最も大きくて10%程度ですから、病的なレベルのものではありません。

従って、あまり今回の結果を重要視し過ぎる必要はないのですが、ネクタイがきつく感じる人は、無理にきつく締めない方が健康的にも良いようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36