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2019.04.10

居眠り運転や突然死の原因に!?睡眠時無呼吸症候群とは・前編

KenCoM公式:ライター森下千佳

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2003年に起きた山陽新幹線の居眠り運転事故や、2012年に群馬県の関越自動車道で起きた高速ツアーバスの大事故。
いずれも運転手に睡眠時無呼吸症候群の症状が確認されたことで、多くの人に病名が知られるところとなりましたが、実際に治療を受けている方は1割以下と言われています。
放っておくと交通事故の引き金になるだけでなく、高血圧や心筋梗塞を引き起こすリスクを高め突然死につながることもある睡眠時無呼吸症候群。しっかり知って、自分や大切な家族を危険から守りましょう!

中村真樹(なかむら・まさき)先生

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青山・表参道 睡眠ストレスクリニック院長・医学博士・日本睡眠学会専門医
東北大学大学院医学系研究科修了後、東北大学病院精神科で助教、外来医長を務める。2008年睡眠総合ケアクリニック代々木に入職。2012年に同病院の院長となり、睡眠で悩むビジネスパーソンを月に300人以上診察する。2017年6月青山・表参道睡眠ストレスクリニックを開院し、院長に就任。公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究員、東京医科大学睡眠学講座客員講師も務めており、臨床と研究の両面から「睡眠の問題」に取り組んでいる。

気がつかないうちに病気を悪化!睡眠時無呼吸症候群とは?

そもそも睡眠時無呼吸症候群って何?

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睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:以下、SAS)は、眠っている間に無呼吸と低呼吸を繰り返す病気です。
医学的には、無呼吸とは10秒以上呼吸が停止している状態のことで、低呼吸とは息を吸う深さが浅くなり、血液中の酸素量が低下する状態が10秒以上続く状態のことを指します。
厳密には一泊の精密検査で、「無呼吸と低呼吸を足し合わせたものが1時間に5回以上あり、日中に強い疲労感や眠気などの症状が認められる」または「一時間に無呼吸と低呼吸が15回以上ある」場合にSASと診断されます。

この病気の怖いところは寝ている間に現れる症状なので気がつきにくいこと。
気がつかないうちに生活習慣病を悪化させたり、日中の活動に影響を及ぼしてしまうリスクがある怖い病気です。検査や治療を受けていない潜在患者数は300万人以上と言われています。

SASの症状はどんなもの?

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この病気は、大きく分けて次の2つの症状をひきおこします。

(1)生活習慣病のリスク

無呼吸をくり返すことによって酸欠状態になるので心臓に負荷がかかり、高血圧・糖尿病・心筋梗塞・脳卒中などの合併症を起こしやすくなります。これらの発症リスクは、健康な人の2〜3倍以上と言われていて、最悪の場合は突然死につながることもあります。

(2)日中の強い眠気・集中力の低下

熟睡できないため日中に眠気が強くなったり、集中力が低下したりします。眠気のため交通事故や労働中の事故につながる可能性も高くなるのです。また、鬱の症状を訴える方もいます。

SASこんな人が危ない!

男性の罹患率が高い病気ですが、女性も子供もかかる病気です。
SASの一番の原因は肥満。体重が増えると喉や舌の回りに皮下脂肪がついて、気道を狭くします。
「BMI」という肥満度の指数が1割増すごとに、無呼吸になるリスクが約3割増えると言われていますので注意が必要です。

また、日本人にSASが増えているのは顎の小さい方が増えているからとも言われています。
顎に比べて舌が大きいと、仰向けになった時に舌がのどの方に突き出て気道を狭めてしまうからです。

更年期以降には女性の罹患率も高まります。その理由の1つは女性ホルモンの働きにあると考えられています。女性ホルモンのバランスが崩れることで体脂肪が増えて喉の周りに脂肪がついたり、喉の筋肉のコントロールが弱まることによると言われています。

扁桃腺が大きかったり、アデノイドの子供もSASになりやすいですが、大人になれば自然と治ることが多いです。

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睡眠中に何が起きている?

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睡眠時には舌を支えている筋肉の活動が低下するため緊張が緩み、重力によって舌やその周りの肉が喉の方に落ち込みます。それにより、空気の通り道を完全にふさいでしまったのが無呼吸状態です。
また、無呼吸状態になると血中の酸素も低下します。
すると脳が「このままでは酸素が不足して大変なことになる」と判断して、睡眠を浅くし、呼吸を再開させようとします。しかし、呼吸が再開して睡眠が深くなると、また舌が下がってしまいのどが狭くなって「いびき」が起こります。さらに舌が下がってのどを塞いでしまうと「無呼吸」となります。
SASは睡眠中に「無呼吸→呼吸が再開→いびき→無呼吸」をくり返すのです。

生活習慣病や認知症まで様々な病気とSAS

SASと生活習慣病との深い関係

睡眠は本来、日中に活動した脳と身体を十分に休ませるためのもの。しかし、睡眠中に無呼吸が繰り返されると、身体の中が酸欠状態になり、それを補うために身体は心拍数を上げます。酸欠状態が刺激になって脳も身体も断続的に覚醒した状態になり、気づかないうちに大きな負担がかかってしまうのです。

通常、健康な人では夜間の睡眠中は昼間に比べて血圧が低くなるのですが、SASの患者さんでは夜になっても血圧が下がらなかったり、逆に昼間より高くなることがあります。
高血圧のお薬を服用していても、血圧が下がらない患者さんの約80%がSASという報告もあります。

高血圧症とSASはとても合併しやすい関係にあると言えるのです。高血圧とSASを合併すると、脳卒中などの脳血管疾患や心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスクが高まる恐れがありますから、高血圧の治療と同時にSASの治療もしっかりと行う必要があるのです。

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SASが認知症を悪くする!?

脳は身体の中でも酸素をたくさん必要とします。最新の脳の研究で、SASが脳の神経細胞に与える影響を調べたところ、重症のSASの人は脳のあちこちでダメージを受けているということがわかっています。また、SASは認知症につながるリスクもあると言われています。
認知症でない高齢者を集め、4年後に認知症の検査をした結果、SASの人が認知症を発症するリスクが無呼吸がない人の約2.36倍になったという結果が出ています。
酸欠状態で寝るということは、身体だけでなく脳にも負担をかけているのです。

放置すれば、死亡のリスクまで高めることに

「いびき」と侮ることができないSAS。放置することで日中の眠気や注意力低下を招き、思わぬ事故につながる可能性もあります。
早急な治療が求められるのです。
次回の記事では、「あなたは、家族は大丈夫!?SAS簡単チェックリスト」を紹介します!

■SASを予防・発見するならこちらの記事をどうぞ!

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。

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