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2019.03.21

「ストレスを引き受ける」ことが習慣化につながる?【習慣の心理学#8】

KenCoM公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

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『ストレスフリー』という言葉がよく使われるようになりました。ストレスをなくすことで、物事をスムーズに進めたり、習慣化したりするのに良いという発想です。
しかし、時に人はストレス下に置かれたほうが良い場合もあります。今回は『ストレス』のうまい使い方について一緒に考えていきましょう。

ストレスの受け取り方を変えることで習慣化は進む

ストレスは本当に悪いものなのか

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「ストレスといえば悪いもの」というのが定説に近かったのですが、最近の様々な研究ではそれが覆されることもあるようです。
ロチェスター大学のジェレミー・ジェイミソンの実験によると、大学院進学適性試験を受ける前に、「本気を出しやすいメッセージ」を受け取ると、スコアが有意に上昇するという結果になりました。

そしてそのメッセージには「ストレスを引き受ける」と言うことが含まれていました。ちょっと見てみましょう。

"最近の研究によって、ストレスを感じるとテストの結果が悪くなるどころか、むしろよくなることがわかっています。試験中に不安を感じている人のほうが、成績が良いくらいです。ですから、今日の試験中にもし不安な気持ちになっても、心配する必要はありません。もし不安になっているのに気づいたら、「ストレスのおかげでうまくいきそうだ」と思えばいいのです。"

引用元:Reappraising Stress Arousal Improves Performance and Reduces Evaluation Anxiety in Classroom Exam Situationsを和訳

ここに書かれている通り、私たちは一般的に本気になるべき時にはプレッシャーを感じたり、ストレスを感じたりしているでしょう。たとえば大学受験の時などは典型的です。

ストレスの受け取り方を変える『マインドセット介入』を活用しよう!

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しかし、プレッシャーやストレスを感じるだけでは不十分と言えます。最も大事な部分は、「あえて苦痛を引き受ける」という部分です。ここが違いを産むことになります。
つまり、苦痛を意識的に取り込むことが人を本気にさせるのです。

プレッシャーやストレスなどというのは、言うまでもなく「苦痛」です。そんなものはない方がベターだと思うのが普通ですし、人によっては、「ストレスがかかること=健康に良くない」という知識を持っているでしょう。
もちろんストレスが過大で押しつぶされてしまうようなら問題です。しかし、多少のストレスを感じつつ、それを「乗り越えられる」と自分自身の中で思うことができれば、乗り越えることができるのです。
なんとも言葉遊びのようですが、実際にそういう結果が出ています。

もう少し理屈っぽく言うならば、ストレスを感じると私たちの肉体はそれへの反発を生み出します。問題はそれを気持ちいいと感じられるか、それとももうたくさんだと感じるかにあります。
ストレスを感じれば、心拍数が上がるとか、発汗作用が起こるとか、とにかく何かしらの反応を自分の身体が起こすでしょう。それを不快だと感じられることもあれば、快感だと感じられることもあるはずです。
そして、快感だと感じるように心がけることで、いつの間にか実際に快感と思うようにすらなるというわけです。
これを専門用語で『マインドセット介入』と言います。

ストレスを快感にすることで習慣化に繋げる

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ここまで来れば非常に話は早い。つまり、ジムに行ったり、甘いものを我慢したりするときにストレスを感じたら、それを引き受けるようにマインドセット介入すればいい、ということになります。こうすることで、ジムに行こうとして感じるストレスが報酬に変わります。甘いものを我慢するストレスも快感に変わっていくわけです。

一見すると冗談に聞こえますが、あり得ないことではありません。例えば私は毎朝5時前に、シャワーで冷水を浴びています。日によっては気温が零下の中で水を浴びます。
これが何かのメリットをもたらすと思っているわけでも健康にいいと思っているわけでもなくて、ただ単に気持ちがいいからやっているのです。
こういう一見辛い行為には報酬が必要です。

報酬は「身体にいい」ではなく「気持ちいい」なのです。
冷水を浴びようとする朝、寒い日は特にストレスを感じますが、ストレスを感じるからこそ、続けられているのです。

足ツボなども良い例かもしれません。人によっては単に痛いだけの行為ですが、あれを気持ち良いと認識していくと、自ら足ツボを押していくようになります。
これも身体にいいというより気持ちいいからやっているという方も多いでしょう。痛みというストレスを気持ちよさに変えているのです。

マインドセット介入を行ってみよう

マインドセット介入をする際に大事なのは、「そんな考え方もあるんだ」と認識することです。
認識することで、人は知らずしらずのうちに意識するようになり、変わってきます。
まずは習慣化したい物事をしている時にストレスを感じたら、それを楽しいことだと認識することから始めましょう。
そう認識することで、いつの間にか習慣化は進んでいくはずです。

参考文献

■『習慣の心理学』の他記事はこちら

著者プロフィール

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■ささき・しょうご
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

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