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2019.03.25

上司に言われたらそのまま従ってしまう、そんなときは【ココロノセンタク#6】

KenCoM公式:臨床心理士・小室愛枝

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こんにちは。臨床心理士の小室愛枝です。
前回は、ついつい部下の意見を否定的にとらえてしまう、というテーマでした。かくいう私も、仕事メールで届いた内容に「え、でもそれはちょっと……」と言いかけて、ハッとした日がありました。
一方で、上司に否定されるとその意見に流されてしまう……という部下のみなさんもいるかもしれません。今回は、そんな方と一緒に考えていくことにしましょう。

時には自分の意見を大事に主張しよう

「あーやっぱり否定された」「はいはい、どうせダメだよな」と、詳しい内容を伝える前にあきらめてしまうようなクセ……心当たりある方もいるのではないでしょうか。
上司に対して、とはかぎらないかもしれませんね。親や家族に対して、友人に対して、先生に対して…いろいろな関係の中で起こることかなとも思います。

こうしたクセのある方は協調性も高く、上司や他の人の意見に従うので一見トラブルも起きにくいようです。長いものに巻かれろ、という考えも昔からありますし、とらえようによっては処世術のひとつといえるのかもしれません。
でも、もしかしたら、実は自分の中に言いたいことが溜まっていって突然爆発しちゃったり、言いたいことを言えないがためにストレスで体調を崩したり、なんていうことにつながっている可能性もあるかも?

自分の意見を伝えるにはエネルギーがいるもの

想いや考え、言いたいことを言葉で言えないと、「苦しいよう」と身体が表現する(身体のどこかが痛い、不調が続く)こともあります。
ときには思い切って自分の考えを伝えることで、自分の心身を守ることにもなるかもしれませんね。

そんなこと言ったってどうせダメだって言われるし……
どうせ自分の提案なんてたいしたことないし……

そんなふうに思う気持ちもよくわかります。
自分の意見を言葉にするのはエネルギーのいることですし、これまで受け入れてもらえなかった経験があると、なかなかすぐに自信を持つのはむずかしいですよね。
たとえば認知行動療法では、不適切な思い込みに気づき、本当に不適切かどうかを検討して、より現実的で妥当な思考への気づきをうながしていきます。

なぜ否定されたのか、多角的にみてみよう

上司に意見を否定された。俺なんてどうせダメな人なんだ……

本当にそうでしょうか?
否定されたのは、「もっとよく考えてみろ」という期待を込めた返事だったかもしれない。もしかしたら、その日は上司の家庭で何かもめ事があってただ機嫌がわるかっただけかもしれない。
こんなふうに、状況やその意味を、いろいろな角度から考えてみるのがオススメです。自分ひとりで思いつかないときには、身近な人に聞いてみるのもいいですね。思いもよらない見方が出てくるかもしれません。

自分の考えをもう一度言葉にして空気に乗せる。

相手に伝わるかどうかはともかく、せっかく自分の中に生まれた考えは自分の中にとじこめておかず、ときにはシャボン玉のようなイメージで飛ばしてみるのはいかがでしょうか。

自分の大切な意見なら、もう一度挑戦するのも◎

シャボン玉は割れてしまうかもしれないけれど、浮かんでいる間は精一杯輝いています。
自分の中に生まれた考えや意見を一度否定されても、もしそれが自分にとって大切なものだったら、折を見てまた伝えてみるのもいいかもしれません。

■過去の記事はこちらから

著者プロフィール

■小室愛枝(こむろ・よしえ) 
臨床心理士・特別支援教育士。早稲田大学で心理学を学んだのち渡米。ボストンでカウンセリングの修士号を取得後、帰国。学生相談室・心療内科等での勤務を経て、現在は乳幼児の発達相談、小学校の巡回相談心理士、NPO法人らんふぁんぷらざ(発達に偏りを持つ子どもと家族のための支援機関)にて乳幼児から大人まで幅広い層の臨床を行っている。共翻訳著に『虐待・DV・トラウマにさらされた親子への支援――子どもー親心理療法――』(日本評論社)がある。

(文/小室愛枝)