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2019.03.13

生活習慣で素早く予防を!【慢性閉塞性肺疾患#2】

KenCoM公式ライター:森下千佳

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症状が分かり辛いため見逃されやすく、知らないうちに重篤な病気に発展していることもある「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」。
重要なのは、早期発見と日々の生活習慣です。どうしたら身体の細かな変化に気がつけるのか。呼吸器の専門家・東京医科大学教授の阿部信二先生に聞きました。

COPDを予防・発見するにはどうしたら?

「もしかしたら?」早期発見のためのチェックリスト

COPDで壊れた肺は元に戻すことができません。しかし、治療を行うことでCOPDによって引き起こされる様々な肺の機能低下をある程度抑えることはできます。
それは、早ければ早いほど効果がありますから、早期発見がとても大事です。

COPDかどうかを早期発見するためにも、まずは、以下の項目に当てはまるものがあるかどうかをチェックしてみてください。下記の症状に1つ以上当てはまった方は、一度検査することをお勧めします。

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40歳以上の喫煙者、または過去に喫煙をしていた経験がある方は、他に症状がなくても検査することをおすすめします。
初期のCOPDの典型的な症状は息切れです。例えば「奥さんと一緒に歩いていて、前は奥さんより早く歩けていたのに、最近は少し遅れてしまう」というような事があればサインです。息切れは徐々に起こりやすくなるので自覚がない事が多く、足腰が弱ってきたとか、歳のせい……などと思いがちですが、同じことをしているのに前とは違う状況があればCOPDが疑われます。
また、幼少期に肺の病気をしたり、何か肺にダメージを受けると生涯にわたって肺に影響があり、将来COPDになりやすいということが最近の研究ではわかってきています。
女性の患者数も増えてきていますから、タバコを吸わないからといって安心してはいけません。

40歳になったら肺機能検査は定期的に!COPDの検査

COPDかどうかを調べるには、主に『スパイロメーター』という機械を使った肺機能検査が行われます。
スパイロメーターに思い切り息を吹き込むと、「肺活量」と「一秒率」が測れます。肺活量は肺の大きさを測るもので一秒率は吐く勢い。大きく息を吸って吐いたときに、最初の1秒間で吸った空気の何%を吐き出せたかを示します。検査の結果、一秒率が70%未満の場合はCOPDの可能性があります。
COPDは徐々に進行していく病気なので、40歳以上の方は数年に一度は定期的に肺機能検査を受けることをお勧めします。

COPD治療の基本は禁煙から!

COPDの治療の基本は禁煙です。禁煙することでせきやたんが改善するだけでなく、肺機能の低下が緩やかになります。

肺機能というのは25歳前後がピークで歳をとるにつれて緩やかに低下していくんですが、喫煙をしていると急速に低下していきます。禁煙を始めると肺機能低下の急カーブが、その時点から非喫煙者と同じような緩やかなカーブになり、症状が緩和していきます。できる限り早く止めることが最重要です。

どうしても、禁煙できない場合は禁煙外来の受診をお勧めします。

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他にもあるCOPDの治療法

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薬物治療の基本は気管支拡張薬です。主に吸入薬を使い気道を広げて呼吸困難を軽減します。また、COPDの方はインフルエンザや肺炎にかかると一気に重症化する危険性があるので、それらの予防接種を受けることも大切です。
息切れがあると身体を動かすのが億劫になりますが、動かさないと筋力が弱って一層息切れがひどくなるという悪循環を起こします。そうならないためにも日々の運動が非常に重要です。胸の筋肉に相関するのが実は足の筋肉。ですから患者さんには毎日のウォーキングから始めていただいています。
症状がひどい場合には、専門の機関での呼吸リハビリテーションや酸素を吸入して呼吸を助ける在宅酸素療法が行われますが、長く辛い治療になる場合が多いので、そうなる前に是非医療機関に相談に来て欲しいと思います。

筋力低下を防ぐのが大事

筋力低下が問題になるなど、生活習慣病との共通点も多いCOPD。まずは予防意識を持つこと。ついで検診などのタイミングで、自分自身の肺活量をしっかりと調べるようにしましょう。
阿部先生によると、最近の機器では息を吹き込むだけで、何歳程度の肺活量などを詳細に教えてくれるそう。

今の状態を測る意味でも、一度しっかりと検査してもいいかもしれません。

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阿部信二(あべしんじ)先生

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2001年日本医科大学大学院医学研究科修了。日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学准教授などを務めた後、2018年より東京医科大学呼吸器内科学分野主任教授に就任。
呼吸器疾患を通して、患者さんの人生に向き合えるような全人的医療に取り組んでいる。

著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
お茶の水女子大学理学部卒。2000年に東海テレビ放送に入社し、主に報道記者として事件、事故を取材制作。女性ならではの目線で取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。2009年に家族の転勤で、ニューヨークに渡り4年間移住。当時日本ではなかなか手に入らなかったオーガニックのベビー商品、コスメなどを日本に届けるベンチャー起業を立ち上げに関わる。2013年帰国し翌年に女児を出産。2016年より子宮頸がん検診の啓発活動と健康教育を手掛ける一般社団法人の理事を務める。2019年よりフリーのエディターとして、主に女性と子供の健康、子育てに関する取材、発信している。