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2019.01.31

運動習慣化のコツは「ファーストタスク」にあり!【習慣の心理学#3】

KenCoM公式:心理学ジャーナリスト・佐々木正悟

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この記事を読んでいる方の多くが、運動を習慣化しようとして挫折した経験があるのではないでしょうか。運動を始める時にはやる気があっても、なかなかそれを維持し続けるのは難しいもの。
そこで逆転の発想をしてみましょう。そもそも維持する意識を持つという発想が間違いなのではと。
今回のテーマは「運動を習慣化するためには?」として、行う際のコツをお伝えしたいと思います。

運動を習慣にするには、運動を「ファーストタスク」にする

運動を習慣化したいなら何かするより前に運動を行う

今回はある寓話から語りましょう。
イギリス人のビジネスコンサルタントであるマーク・フォースターさんは、学生さんから悩みを相談されました。

「もう3ヵ月以上も全く論文が進みません。いろいろ忙しかったりで・・・どうしたらいいでしょうか」

それに対して答えはこうでした。

「論文が進まないのは、書かないからだよ」

全くその通りなのですが、こういうのが「当たり前のこと」と言われて非難されます。しかしどうして当たり前のことを言うと非難されてしまうのでしょうか。
奇をてらっても、課題は解決しないものです。このマーク・フォースターさんはこうアドバイスします。

「朝の最初、できれば起きた直後に論文を5分でいいから書くこと。忙しいかもしれないが、朝の最初の5分だけなら、どんなに忙しくても時間がとれる。5分もできないというのは言い訳にもならない」

これをフォースターさんは「ファーストタスク」と名付けました。今一番やる必要があることならば、あらゆることよりも先にしなければならない。ファーストにしなければならないのに、その前に何か(例えばツイッターチェックとか)をしてしまうというのはおかしい、と。

最初に行う=精神論ではない

健康作りや体力作りをそこまで喫緊の課題としている人は少ないかもしれませんが、私はこの考えを取り入れて行なっています。
私は朝起きたら、歯を磨く前、顔を洗う前に、着替えだけを済ませてすぐに外に出て、軽く走り、それから歩きます。朝5時くらいに外に出るので、今くらいの季節ですとまだあたりは真っ暗で、気温も摂氏2度くらいです。
でもそれはどうでもいいことです。要するに、「あらゆることに先駆けて運動する」必要があると思っているだけのことです。

これは何か精神論めいて聞こえるかもしれません。しかし事実は全く逆です。
精神力・意思力といったものが「試される」のは葛藤が起こっている場合です。葛藤というのは、「あれをすべきか、それともこれがいいか」という悩みのことです。「ダイエットを貫いて痩せるべきか、それとも揚げパンを食べてしまうか」といったジレンマに置かれると、人は精神力を発揮しないわけにはいきません。
その葛藤の中でダイエットを貫くためにこそ、精神力が必要なのです。これを精神の力で克服することを、精神論と言います。

私はそういうことはしません。夜の9時になったら、朝5時に起きる目覚ましをセットし、5:05に着替えるリマインダーをセットし、5:10になったら、機械的にApple Watchのウォーキングをスタートしてしまいます。半分寝ていても、気がついたら耳当てと防寒具を装備して外に出ているし、腕時計の計測はすでに始まってしまっています。

ついでに着替えると同時にイヤホンをセットしてあり、いつも通りの音楽か、またはポッドキャストが始まるようにしてあります。
こういう状態になっているので、いくら外が暗くても寒くても、家に戻ろうとは思いません。

編集部注:起き抜けの運動は医師などに相談してから行うようにしてください。生活習慣病など持病を持たれている方は決していきなり取り組まないでください。

考える前に行動に移すのがコツ

私にとって運動は「ファーストタスク」なのです。頭が葛藤を考えつく前に、支度と行動を先行させてしまいます。考え事をするには時間がかかるし、それを自分に許すという時刻がどこかにあるから、葛藤が始まるものです。

しかし、5時の目覚ましを止め、5:05のアラートを止め、5:10のアラートを止めるというように、矢継ぎ早に出てくる「指示」に従うなら、そういう葛藤を起こす暇がありません。やがてその「指示」に従う方が葛藤して悩むより遙かに「楽」であることに気づくようになります。

気がつくと、朝の6時には運動が終わって1日をスタートさせることができるようになります。私の1日は起床とともに始まるのではなく、運動が終わったところから始まっているという感じなのです。

楽をして習慣化するなら、とにかく優先的に行う仕組みを作る

もう一度だけ念を押しますが、これは「楽」なのです。精神力を発揮するというのは、難しく、しかも疲れます。
楽をするためにはなるべく、精神力を発揮する暇を脳に与えないことがコツです。

参考文献

・マーク・フォースター(著), 青木高夫(翻訳)『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則』ディスカヴァー・トゥエンティワン

■『習慣の心理学』の他記事はこちら

著者プロフィール

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■ささき・しょうご
心理学ジャーナリスト。「ライフハック」の第一人者。専門は認知心理学。1997年獨協大学を卒業後、ドコモサービスに入社。2001年米アヴィラ大学心理学科に留学。04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。05年帰国以来、「効率化」と「心理学」を掛け合わせた「ライフハック心理学」を探求し続けている。
著書にベストセラーとなった『ビジネスハックス』『スピードハックス』などのハックシリーズ(日本実業出版)のほか、『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』(中経出版)、『やめられなくなる、小さな習慣』(ソーテック社)などがある。

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