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2019.01.23

サウナが病気を予防するという研究が発表【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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近年サウナの健康効果が注目を集めています。正しい方法でサウナに入れば、リラックス効果や疲労回復効果を得られるだけでなく、死亡リスクも減らせるのだそう。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

本日ご紹介するのは、2018年のBMC Medicine誌に掲載された、サウナの健康効果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

入浴方法によって健康効果に違いはあるか?

入浴は世界中において、古くから好まれている生活習慣で、皮膚などの清潔を保つと共に、その温熱効果により気分をリラックスし、血流を一時的にせよ高めるという効果があります。

より長期的に入浴習慣に健康面での効果があるかどうか、と言う点については、現時点であまり明確なことが分かっていません。

一部には体温を上昇させることにより、ヒートショックプロテインを増やし、免疫を活性化させる、というような知見もありますが、それは仮説の域を出ないように思います。

入浴法により健康効果に違いがあるのではないか、という見解も以前からあります。

日本で行われているような、首まで熱い湯に浸かる全身浴は、血圧や脈拍に与える影響が大きく、入浴中の突然死に繋がるリスクが高い、という側面があるからです。

湯船に浸からないサウナは、純粋に温熱効果のみが得られる入浴法

フィンランドはサウナ発症の地で、比較的低温のサウナが一般的な入浴法として普及しています。

サウナというのは湯船に浸からないために、純粋の温熱効果のみが得られるので、全身浴と比較してより健康に利する可能性があるのです。

実際これまでに大規模なフィンランドの観察研究において、サウナの心血管疾患予防効果や肺炎予防効果などが認められ、過去にブログ記事にもしています。

ただ、これは観察研究ですから、例数は多くてもそれほど精度の高いものではありません。

サウナの利用頻度が高いほど死亡リスクが低下

今回の研究は一定の住民を登録して、10年以上の長期の観察を行ったもので、この分野ではこれまでにあまりなかったタイプの臨床研究です。

フィンランドにおいて、一般住民1688人を登録し、登録の時点でのサウナの利用頻度を聞き取りすると、その後中間値で15年間の経過観察を行っています。

その結果、心血管疾患の死亡リスクは、サウナの使用頻度が高いほど低い、という一定の相関が認められました。

週に1回のサウナ習慣と比較して、2から3回のサウナ習慣のある住民は、29%(95%CI: 0.52から0.98)、4から7回のサウナ習慣のある住民は、70%(95%CI: 0.14から0.64)、それぞれ有意に心血管疾患による死亡リスクが低下していました。

これはサウナ習慣がかなり一般的な、フィンランドに限ったデータで、運動の健康効果に近いものを、見ているという可能性もあります。

他の入浴法でも健康効果には差があるかも

ただ、前向きコホート研究において、入浴の健康効果がここまで明確に証明されたことはこれまでになく、今後は他の入浴法との差についても、科学的な検証が進むことを期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36