野菜を摂るならサラダ?ジュース?【ドクターズチョイス#2】

野菜不足が叫ばれる昨今、タイミングが合うなら積極的に野菜を摂りたいものです。
では、どんな形で野菜を摂るのがいいのでしょうか？
野菜の摂り方のコツを、科学的根拠を元に健康的な生活を提案している東京大学附属病院の稲島司先生に、聞きました。
これであなたも「野菜」の食べ方で迷わなくなるはず！

これに関しては色々な意見が散見されます。例えば野菜ジュースは野菜を潰しただけであり、塩などの余計なものが入っていない。一方でサラダはドレッシングがかかるので余計な添加物が入るのでよくない、という意見もあります。
ですが、それは全くの間違いです。
私はサラダで摂るのが良いと考えています。むしろ、サラダで摂る方が絶対いいと言ってもいいでしょう。

野菜の話になると、ビタミンなど様々な栄養の話が上がってきますが、私が特に注目しているのが食物繊維の摂取です。
なぜかというと、「食物繊維を多く摂っていると病気の予防につながる」というエビデンスが存在しているからです。
アメリカ国立ガン研究所の調査結果なのですが、50歳〜71歳の約57万人を対象に食事についての調査を行ない、約10年後に食物繊維を多く摂った人と摂らなかった人の死亡率を比較しました。
その結果、全死亡率をはじめ、心血管疾患、がん、感染症などの罹患率が減っているだけでなく、肺炎や結核など呼吸器系疾患の罹患率まで下がっていたのです。

ちなみに「なぜ病気のリスクが減るのか」、そのメカニズムはよくわかっていません。ただ、食物繊維を摂ることでこのようなメリットを享受できるということはわかっているのです。

野菜ジュースがなぜダメなのか。それは上記で重視している食物繊維を減らしてしまっているからです。
そういった意味では、自宅で野菜や果物を自分で潰して『何も引いていない』ジュースやスムージーはとても良いと思います。
むしろ調味料なしで作ったものであれば、塩など余計なものが入っておらず、サラダより良いかもしれません。
ひとつだけ欠点があるとすれば「咀嚼」の機会が減ることくらいですが、1日の食事を考えると誤差範囲と思います。

ちなみに、市販のジュースは『100％』を謳っていても、実際には100％ではありません。
自分で作るとわかりますが、ジューサーやミキサーは野菜のみでは細かく切られるだけで、水(我が家では豆乳)を追加しないとジュースとして成立しません。
また、できたジュース・スムージーもドロっとしていて(食物繊維が多いため)、市販のジュースとは全く別物になります。

野菜ジュースの中には、1日分の様々なビタミンが摂れるというものもあります。
また、栄養ドリンクの中ではマルチビタミンのような、野菜に含まれているほとんどの栄養素を摂れそうなものも売っています。
ですが、これらも避けたほうがいいでしょう。

どういう原因かまだはっきりとわからないのですが、人工的に添加した栄養素の一部は、身体へ不利益をまねく可能性もあるのです。
下記はサプリメントの結果ですが、2011年、米国ミネソタ大学は55歳〜69歳の女性約4万人を対象に、サプリメントの使用と死亡率の関係を調査しました。

その結果、マルチビタミンを摂っている人の死亡率は1.06倍と、ほんの少しですが、統計学的有意に死亡率が高いという結果が出ています。
健康増進のためにとサプリメントを利用するよりも、日々の食事で栄養バランスを考えたほうが良さそうです。

野菜と聞くと、とにかく身体に良いと思ってしまいがちですが、そう単純にはいきません。
つい手軽にジュースで済ましてしまいそうになりますが、そこはぐっと我慢してこう考えましょう。
「食物繊維を摂って長生きしよう！」と！

■稲島司（いなじま・つかさ）先生
東京大学医学部附属病院　地域医療連携部助教　医学博士
2003年東京医科大学医学部を卒業。2008年東京大学大学院医学系研究科を修了。循環器内科の専門診療のほか、外来診療を中心に生活習慣病の予防・改善に携わる。東京大学医学部附属病院では地域医療連携部の専任医師として地域医療機関や介護・福祉施設との連携を推進。論文を中心とした医学エビデンスを紹介しながらの説得力のある講演や著作は人気を博している。内科認定医。循環器専門医。認定産業医、認定健康スポーツ医。
著作に『世界の研究者が警鐘を鳴らす 「健康に良い」はウソだらけ 科学的根拠(エビデンス)が解き明かす真実』(新星出版社刊)、『血管を強くする歩き方: パワーハウス筋が健康を決める』(木津 直昭との共著・東洋経済新報社刊)などがある