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2018.11.11

日本が「睡眠不足大国」に転落した3つの事情|急速に減少していく日本人の「睡眠時間」

東洋経済オンライン

なぜ、日本人は眠らないのか?(写真:tomos/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/248095?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

なぜ、日本人は眠らないのか?(写真:tomos/PIXTA)

日本人の睡眠時間は世界的に見ても少ないことをご存じだろうか。経済協力開発機構(OECD)の国際比較調査によると加盟国の中でいちばん短く、アメリカ、フランス、イギリスなど欧米先進諸国と比べても1時間ほど短い“睡眠不足大国”なのだ。 睡眠医学の第一人者である秋田大学医学部教授の三島和夫氏が「日本人が睡眠不足になる理由」について解説する。

日本人が睡眠不足になる3つの理由

働く世代の男女に共通する「睡眠不足になる理由」は大きく分けて3つあります。

①働きすぎ

OECDによる労働時間の国際比較調査でも明らかになっていますが、日本人の労働時間は、年間では減少傾向にあるものの、平日1日あたりの労働時間は増えています。土日に休む分、残業時間が多く、米国やフランスの約3倍という報告もあります。

しかも、長時間労働で睡眠時間が削られ、結果的に生産性が低くなるという皮肉な状況になっています。

②長すぎる通勤時間

通勤時間の長さも一因です。とりわけ都市部でその傾向が顕著で、通勤時間と睡眠時間が完全に逆相関しているのです。

総務省統計局が行った「平成28年 社会生活基本調査」の結果をもとに通勤時間と睡眠時間の関係を分析すると、平日は、通勤時間が長い都市部の人ほど睡眠時間が短いことがわかります。休日については、どの都道府県でも平日より多く寝ていて地域差も小さくなっています。また、通勤時間が長い人ほど休日に長く寝ていることがわかります。

通勤時間はビジネスパーソンにとっていわば、“固定費”。削ることはできません。都市部で働く人の多くは、通勤ラッシュと睡眠不足ストレスが重なるわけで、疲れるのも無理はありません。

③長すぎるスマホ利用

もう1つの大きな要因は、IT機器の使用時間が格段に増えたことです。

東京都が睡眠不足の人に原因をリサーチしたところ、過半数が「スマホとパソコン」を挙げています。特にスマホは起きている間じゅう手離さず、「近くにないと具合が悪くなる」という声もあるほどです。

寝る時間が削られるだけではありません。IT機器の液晶画面から発せられるブルーライトは睡眠のリズムを乱すほど強力ではないとしても、寝る1~2時間前までSNSやメールなどネット上でのコミュニケーションをすれば感情が揺さぶられ覚醒度が高まり、眠りの質が低下します。

労働時間、通勤時間、スマホ時間、これらに個々の仕事や家庭の事情も加わって睡眠時間が圧迫され厳しい状況が生まれているわけです。

なお、「睡眠不足」は働く世代に見られる傾向で、リタイア世代になると寝ようとしても眠れない「不眠」が多くなります。

いつから日本人は「睡眠不足」になったのか?

戦前、戦後、今と、時代の推移とともに睡眠時間は急速に減っています。NHKが1960年代から実施している「国民生活時間調査」のデータも参考に見てみましょう。

今、国民の9割がベッドに入っている時間帯は「深夜1時」です。戦後間もなくは「11時」。起きる時間は今より1時間早かったので、2時間早く寝て1時間早く起きる生活でした。つまり1時間長く眠っていたことになります。

高度経済成長期(1955~1973年)に入ると、寝静まる時間は「午前0時」に。起きる時間も1時間遅くなったため睡眠時間は差し引きゼロで変わりませんでした。

1970年代以降になると寝る時間がどんどん遅くなり2000年にはついに夜中の1時に。出勤や登校などで起きる時間はおおむね固定されているため戦後から50年ほどで、日本人の睡眠時間は1時間も減ってしまったわけです。

「8時間は寝なきゃ」は都市伝説

日本人の多くが睡眠不足な一方で、「自分は7~8時間は寝ているから大丈夫」「毎晩よく眠れるし睡眠時間だけは確保しているから心配ない」と胸を張る方がいますが、実は危険です。働き盛りのビジネスパーソンで「睡眠負債ゼロ」の人はほぼいません。

長年、誤った「常識」がまかり通っていました。「8時間睡眠が理想」もその一つ。日本人の1日の平均睡眠時間は7時間42分。確かに8時間に近いですが、これはあくまで平均値です。

最適な睡眠時間は個人差が大きく、誰もが8時間必要というわけではありません。6時間で十分な人もいれば9時間以上眠らないと日中に眠くなってしまう人もいます。同年代であっても個人差が3時間以上あることがわかっています。

これは体質の違いです。5時間の人は勤勉で、9時間の人は怠け者ということではありません。年齢や季節などによっても必要睡眠量は変わり、普通は加齢とともにだんだん減っていきます。30代では7時間必要だったが70代になると6時間程度で十分というのは珍しいことではありません。8時間以上眠れるのは中学生くらいまでで、その後は必要な睡眠時間はしだいに短くなっていくのが普通です。


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世界各国で行われた多くの睡眠研究により「成人後の睡眠時間は10年ごとに十数分ずつ短くなる」「夜間の中途覚醒時間は10年ごとに10分ずつ増加する」という結果が出ました。

1日8時間というのは、働き盛りの30代や40代でも長すぎるくらいで、70代以降は正味6時間くらいしか眠れないということがはっきりしています。体質的に9時間眠る必要があるのに7時間になっているなら、しっかり寝ているようでもやはり睡眠不足になります。

睡眠負債をため込まないためには、古い睡眠常識を改め、「自分にとって必要なだけ眠る」ことが大事なのです。

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三島 和夫:秋田大学医学部教授

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