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2018.07.27

日本人の4割が抱える「睡眠負債」の深刻度|最速で解消!今日からできる3つのこと

東洋経済オンライン

月曜の憂うつは危険なサイン?(写真:oatawa/iStock)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/228327?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

月曜の憂うつは危険なサイン?(写真:oatawa/iStock)

ますます暑さが厳しくなる日本列島。ちょっと寝不足な日々を送る人も多いでしょう。しかし、そのちょっとした寝不足が、あなたの体に大きなダメージを与えていることをご存じでしょうか。

日本人の4割が抱える、危険な眠りの借金「睡眠負債」

2017年、ユーキャン新語・流行語大賞トップ10に選ばれた言葉が話題になりました。「睡眠負債」です。この言葉は、英語の「sleep dept」を直訳した言葉で、単なる“睡眠不足”ではなく、“返済すべき睡眠不足の累積”というニュアンスを含んでいます。

睡眠不足はその日だけの問題ではありません。1日1時間程度の睡眠不足でも30日間続けば、一睡もせずに30時間起き続けているのと同じ状態になります。解消しないかぎり毎日積み重ねられていってしまう、かなり危険なものなのです。

この睡眠負債、日本の中でも近年深刻な問題となっています。2015年の厚生労働省「国民健康・栄養調査」によれば、1日の平均睡眠時間が6時間未満の日本人の割合は20歳以上に限ると39.5%。つまり、成人の約4割もの人が、睡眠が足りていないのです。

休日に寝だめをするから大丈夫だと思っている人もいるでしょう。しかし、寝だめでは睡眠負債を解消できません。むしろ、その間違った寝方によって、かえって日曜日の夜に寝つけなくなる悪循環が生みだされます。

もしあなたが、月曜日の出社前の朝に、憂うつだったとしたら、それは睡眠負債の累積によるものかもしれないのです。

朝の憂うつだけではありません。睡眠負債は、仕事の生産性をも下げることがわかっています。ランド研究所・ヨーロッパが、2016年レポートのなかで、睡眠時間が6時間未満の人が7時間の睡眠をとった場合、年間でどの程度の経済的な社会損失が改善されるかを推計しています。

それによると、日本を含む5カ国をGDP比で考えた場合、日本はトップでGDPの2.92%(2018年1月の為替レートで、ほぼ15兆1800億円)が改善されるという結果となりました。つまり、日本は現在、睡眠負債によって、約15兆円の経済損失を出しているのです。

睡眠負債は、重大なミスも引き起こします。

アメリカでは、自動車の交通事故と睡眠の関係が研究されています。交通安全を推進するアメリカの非営利団体(AAA Foundation for Traffic Safety)の2016年の報告によれば、過去24時間で7時間以上の睡眠をとっていたドライバーの事故確率を1とすると、6時間~6時間59分の睡眠時間で1.3倍、4時間未満の睡眠時間では11.5倍にまでなると推定されています。

睡眠負債は、交通事故をはじめ、仕事や日常生活の中で重大な人為ミスを引き起こす大きな要因でもあるということです。

ではなぜ、睡眠負債はこうした人為ミスなどを引き起こすのでしょうか。それは、睡眠負債が脳の働きを低下させるからです。

脳の前頭連合野は特に睡眠負債の影響を受けやすい領域です。前頭連合野は、適切な判断をし、意思を決定する「認知・実行機能」、不必要な行動の「抑制機能」、そのほかにも「意欲コントロール機能」や「情緒安定機能」など多くの働きを担っています。

睡眠負債で前頭連合野がうまく働かないと、集中力や記憶力、思考力、モチベーションなどの低下をもたらしてしまい、仕事上のミスが増加してしまうのです。

間違いだらけの快眠法

では、睡眠負債を解消するには、どうしたらいいのでしょうか。気をつけてほしいのは、誤った方法に踊らされないことです。

実は、ちまたに出ている情報には、間違いやウソがかなりあります。たとえば、睡眠と食事の関係。インターネット等では、「寝る前に温めた牛乳を飲むとよく眠れる」「レタスを食べるとよく眠れる」といった情報が流れていますが、結論から言ってしまうと、これはウソです。

現在までに科学的に証明されている睡眠改善効果のある単一の栄養素としては、アミノ酸のひとつであるトリプトファン、グリシン、テアニンと、その他にメラトニンなどがあります。

これらの栄養素を摂取する場合、睡眠改善効果がはっきりとみられる量は、トリプトファンとグリシンが3g以上、テアニンは200mg程度、メラトニンは30mg程度。いずれもタンパク質などに組み込まれていないフリーの状態のものを一度に摂取することが必要です。

確かにトリプトファンは乳製品に多く含まれるため、寝る前に牛乳を飲むことは一見、理にかなっているように思えます。しかし、3gのフリーのトリプトファンを摂取するためには、実はドラム缶半分程度の濃いめの牛乳を一度に飲まなければなりません。

メラトニンはケールやレタスに多く含まれているものの、30mgを食べるためには約70kg、数で示すと450玉以上を一度に食べなければならず、現実的ではありません。

テアニンは茶葉に多く含まれていますが、茶葉には覚醒作用の強いカフェインも多く含まれています。緑茶や紅茶を飲んでテアニンを摂取したつもりでいても、カフェインの効果で逆に目が冴えて眠れないことになってしまうということです。

そこでまずは、誤った情報に惑わされずに、快適な睡眠を実現するために、“寝つきを悪くする習慣”を改善することに着手してみましょう。

寝つきに大きく影響する交感神経の活動は、習慣的な就寝時刻のほぼ30分前から休息モードに入りはじめます。眠りを誘いやすくするホルモンのメラトニンも、習慣的な就寝時刻の1~2時間前から分泌がはじまります。そのため、次のような行動や習慣は寝つきを悪くしてしまいます。

① 夜遅くの晩御飯

胃に食物が入り消化活動が行われていると体は覚醒方向に動き、睡眠モードに入るのが難しくなります。夕食程度のボリュームの食物を消化するには、3時間程度が必要とされています。

② 眠る前のスマートフォン、パソコン、タブレット

150ルクス(目安:一般住宅の明るさが150~250ルクス)以上の光が当たっているとメラトニンの分泌も抑制されます。メラトニンの分泌抑制力が最も強い光の波長は460㎜付近(青緑色光)で、スマートフォンやパソコン、タブレットのブルーライトはこの波長付近の光です。

③ 夜遅くの満員電車、車の運転、運動

メラトニンには交感神経が興奮していると分泌されにくいという特徴があります。満員電車に揺られて帰宅したり、車を運転して帰宅したり、急ぎ足で帰宅したりすると交感神経を興奮させてしまうということです。

いかがでしょうか。ついやってしまいがちな習慣があなたの快眠を阻害しているのです。試しにこのNG習慣をやめてみるだけでも、スーッと寝つきやすくなるでしょう。

最速で「睡眠負債」を解消する、今日からできる3つのこと

では、やめるべきNG習慣にプラスして、簡単にはじめられる睡眠負債解消法を3つお伝えしましょう。

① 自分の睡眠を把握する

睡眠負債を解消するためには、客観的に自分の睡眠状態を知ることが大切です。そのために役立つのが、睡眠日誌です。

0時から23時までのマス目を作り、朝、目が覚めたら眠っていた時間帯を30分単位で塗り潰します。あわせて前日の気分と、仕事などでのパフォーマンスを思い出し、〇、△、×で評価します。

 

これによって、自分の睡眠の状態と睡眠負債量、それによる気分やパフォーマンスの変化に気づくことができます。

② 休日の正しい眠り方

睡眠が不足しているときには、休日に睡眠負債を解消しなければなりません。しかし、休日に遅くまで眠ってしまうと、体のリズムを乱すことになってしまいます。

そこでお勧めなのが、次の2つの方法です。

1:休日の前夜はいつもより1時間前に就寝し、休日はいつもより1時間遅く起床する(1時間遅くといっても、午前10時までには起床して朝食をとり、太陽光を浴びるようにしましょう)。

2:それでも睡眠負債がたまっているときは、二度寝はせずに午後0時から3時までの時間帯に1~2時間の昼寝をする。

1を実行することで計2時間分程度の睡眠負債を解消でき、かつ体のリズムはまったく乱れません。それでも眠気がある場合はあわせて2の方法をとれば、睡眠負債を解消できます。

昼寝については、一般的に夜の主睡眠まで8時間以上の覚醒時間があると、夜の睡眠に影響が少ないことがわかっています。

寝つきや睡眠感に大きく影響する枕も重要

③ 枕とパジャマ

枕は寝つきや睡眠感に大きく影響します。年中、空調で寝室を一定の温湿度にしていないかぎり、夏と冬で枕を変えたほうがいいでしょう。

夏の枕には頭部からの汗を吸い取り、頭を冷やす効果が求められます。そのため、形状は小さめで、吸湿性と放湿性が良好で通気性のよい素材を選びましょう。ダニの発生も多いので洗えるものが望ましいといえます。


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一方、冬の枕は肩と首の保温の役割も担っています。やや大きめで頭に当たる部分の素材はダウンなどの保湿性能の高いものを使いたいものです。

寝巻選びも重要です。暑い季節にはパジャマを着ないで寝る人がいます。しかし、パジャマの繊維の表面積は皮膚表面より圧倒的に大きく、パジャマを着たほうが、汗が気化する表面積が増えます。結果的に、裸で寝るよりも深部体温を下げやすいことが知られています。

いかがだったでしょうか。ここまで睡眠負債についてお伝えしてきましたが、私の新刊『命を縮める「睡眠負債」を解消する 科学的に正しい最速の方法』では、この記事で紹介しきれなかった睡眠負債のさまざまな解消方法についても紹介しています。また、睡眠日誌の詳細なつけ方やフォーマットも掲載していますので、ぜひご利用ください。

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白川 修一郎:睡眠評価研究機構代表、医学博士

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