2018.08.02
蛾の幼虫から見る!たった一部のイメージで全体の印象が決まる【本能の処世術#6】
昆虫や動物は人間と同じように、群れのなかでのコミュニケーションがうまいものほど、出世をしたり、得をしています。
彼らが本能的に行っているスキルは、ビジネスパーソンにもぜひ身につけていただきたい目からうろこのテクニックばかり!というわけで、生き物が大好きな心理学者の内藤誼人が、彼らの行動と学びたい処世術のポイントを心理学的観点で説いていきます。
蛾の幼虫は毒持ち!? 一部の悪いイメージが全体に影響する
日本では蛾の仲間は、諸説ありますが約5,500種類いると言われています。そのうち幼虫で毒のトゲトゲ(毒刺毛)を持っているのは、約50種類だけ。つまり5,500分の50(110分の1)なのだから、蛾の幼虫のほとんどは、見た目は気持ち悪いが、けっこう安全なんですよ。
だから「トゲトゲしたものは全部毒があるから触っちゃダメ!」というのは厳密には間違い。
このように一部の個体(あるいは要素)のせいで、全体の印象まで悪いと勘違いしてしまう現象は、心理学的には「ホーンズ効果」などと呼ばれています。
ホーンズ効果の実験結果
南カリフォルニア大学のバレリー・フォルケスという人がある実験を行いました。
被験者には、A社とB社の自動車の保険代行員の行動についてのシナリオを読んでもらいました。
そのシナリオは、A社の代行員には笑顔でコーヒーやクッキーを進めてくれたりと親切な対応だったという内容に対して、B社の代行員に笑顔を見せずに、コーヒーも進めない冷たい対応をしたという内容でした。
シナリオを読み終えた被験者にこれらの保険の外交員についてどう思うか、とインタビューしたところ当然A社の代行員ほうがよいという評価になりました。面白いのは、その保険の外交員だけでなく、その外交員が所属している保険会社にまで悪い印象が広がっていったという結果になったことです。
このように悪いイメージは波及しやすいという特徴があるわけです。
悪いイメージは広がりやすい
人間が抱くイメージとは恐ろしいもので、一度嫌な体験をして悪い印象を持つと、そういったバイアスがかかってしまうんですね。
例えば、大きなミスをしてしまった同僚がいると、それがたった一度でも「あの人はミスをしやすい人」と、勝手にレッテルを貼りがちです。
しかも口が軽い人だとどんどん人づてに伝わっていくこともあるので、気を付けたいところです。結構多いですからね、そういう人。
挽回するためには、ミスをしないか、大きな成功を勝ち取りイメージを払拭するしかないのです。
参考文献
Folkes, V. S., & Patrick, V. M. 2003 The positivity effect in perceptions of services: Seen one, seen them all? Journal of Consumer Research ,30, 125-137.
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<監修者プロフィール>
■内藤誼人(ないとう・よしひと)先生
心理学者。立正大学講師。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。心理学者として執筆や、メディア出演、企業講演などで活躍中。執筆した著書には『ベンジャミン・フランクリンの心理法則』(ぱる出版)、『図解 身近にあふれる「心理学」が3時間でわかる本』(明日香出版社)など多数。歯に衣着せぬ巧みなトークで周囲を明るくしてくれる。大の昆虫好きで、休みの日には山に入って昆虫採集をするのが楽しみなのだとか。