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2018.05.30

残念!話題の「バターコーヒー」は健康に悪い|「エセ健康情報」に騙されないための基礎知識

東洋経済オンライン

「正しい情報がないために、知らず知らずのうちに病気に近づくような食生活を積み重ねてしまう不幸な人を1人でも減らしたい」と語る津川友介氏(写真:著者提供)

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「正しい情報がないために、知らず知らずのうちに病気に近づくような食生活を積み重ねてしまう不幸な人を1人でも減らしたい」と語る津川友介氏(写真:著者提供)

バターコーヒー、グルテンフリーなど、めまぐるしく流行の食事法は変わっていく。しかし、「最新の食事法」は本当に正しい情報なのだろうか。

さまざまな食材をエビデンスベースで5グループに分類し、「体に良い食品」と「体に悪い食品」を明らかにし、発売10日で10万部突破したベストセラー『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』を上梓したUCLA助教授の津川友介氏に、本当に正しい健康情報の探し方を聞いた。

もっと早く、正しい食事の話が聞きたかった

――健康情報を発信するようになったきっかけを教えてください。

患者さんに食事指導をしたときに「もっと早くに先生の食事の話が聞きたかったよ」と言われたことが原点です。その患者さんに10年前に会い食生活を改善してもらえていたら、もしかするとこの患者さんは病気で苦しまずに済んだのではないか、と思いました。

その患者さんもそうだったように、食事指導が必要なのに、毎日ジャンクフードを食べているような患者さんは多くありません。ただ、一般の方が思い描いている「健康に良さそうな食事」と、科学的に証明されている「健康に良い食事」は違うのです。


『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』は、発売10日で10万部のベストセラーになっている(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

たとえば、健康のためにと白いご飯を中心とした和食を食べる人や、果汁100%ジュースを飲む人もいます。しかし残念ながら、白米も果汁100%ジュースも体に悪いことが研究からわかっています。

こうした科学的に証明された正しい情報を知らないために、知らず知らずのうちに病気に近づくような食生活を積み重ねてしまう人を1人でも減らしたいというのが、本書の最大の執筆動機です。

また、日本では頻繁に健康情報をテレビで取り上げているのに、個人の体験談やネズミの実験でしか確認されていないもの(ネズミで認められた結果が人間でも認められる可能性はそれほど高くない)など、質の良くない情報があふれています。そうした質の悪い情報を排し、膨大な研究結果から「病気になりにくい」食事法を簡潔にまとめれば、多くの方の役に立つと考えました。

――今わかっている健康になるための「正しい情報」とは、具体的に何でしょうか。

一言で言うと、個人の経験談などではなく、「エビデンスの強い情報」が「正しい情報」だと私は考えています。

「科学的根拠」のことを私たち専門家は「エビデンス」と呼んでいます。このエビデンスにはレベルがあり、最も信頼できるエビデンスのことを、「エビデンスが強い」と表現し、あまり信頼できないエビデンスのことを、「エビデンスが弱い」と表現しています。

ネズミの実験や恣意的なアンケート調査の結果を「エビデンス」だと謳う商品がありますが、それは「とても弱いエビデンス」なので注意してください。

「最強のエビデンス」と言えるのは、メタアナリシスという複数の研究結果をとりまとめた研究手法によって導き出された結果です。

1つの研究であれば、その特定の国民や集団にしか認められないパターンだったかもしれない可能性は否定できませんが、10個も20個もの研究が同じような食事と健康の関係を証明していれば、それはかなり信頼できると言えます。

1つ注意が必要なのは、メタアナリシスの結果がエビデンスとして強いものかどうかはあくまで元となった研究の質によるということです。

メタアナリシスによるエビデンスをアピールしたとしても、元となった複数の研究が問題だらけの研究であれば、当然それらをメタアナリシスの手法でとりまとめたエビデンスは強いとは言えません。エビデンスが強いものであるかを確かめるためには、その元となった研究自体が信頼に足るものかにも着目する必要があるのです。

ただ、一般の方が一つひとつの研究にあたり、そこまでじっくり調べることはなかなか大変だと思いますので、一冊の本にまとめました。

不動の「健康に良い食べ物」5つはこれだ

前回の記事(医学的に「健康に良い食べ物」は5つしかない)にも書きましたが、そのメタアナリシスの結果、本当に健康に良い、つまり脳卒中、心筋梗塞、がんのリスクを下げると現在考えられている食品は以下の5つです。

① 魚
② 野菜と果物(フルーツジュース、じゃがいもは含まない)
③ 精製されていない「茶色い炭水化物」(玄米、全粒粉のパンなど)
④ オリーブオイル
⑤ ナッツ類

反対に、体に悪いと考えられている食品は以下の3つです。

① 赤い肉(牛肉や豚肉。鶏肉は含まない。ハムはソーセージなどの加工肉は特に体に悪い)
② 精製された「白い炭水化物」(白米や小麦粉など。じゃがいもを含む)
③ バターなどの飽和脂肪酸

体に悪い食品を減らして、代わりに体に良い食品を増やすことが、健康への近道です。数多くの信頼できる研究結果に基づいているものですので、近い将来、新しい研究結果によって大幅に変更を強いられるとは考えにくく、安心して食生活の指針にしていただければと思います。

バターコーヒーは健康に悪い

――著書では、個人の経験談として「バターコーヒー」を挙げていますね。

バターが体に悪い油であることは、数多くの研究からわかっている(写真:chad / PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/220896?page=3

バターが体に悪い油であることは、数多くの研究からわかっている(写真:chad / PIXTA)

『シリコンバレー式自分を変える最強の食事』(デイヴ・アスプリー著、ダイヤモンド社)という本が日本では一時話題になったようですが、残念ながら「個人の経験談」であり、多数の人に効果があったというエビデンスはありません。

ちなみに私の住んでいるロサンゼルスのスーパーで以前売っているのは見かけたことがありますが、流行ってはいません。

この本の著者であるデイヴ・アスプリー氏が自分で体験してみて、調子が良くなったと感じた食事を紹介しているだけなんです。「15年間、30万ドル投じた」と書かれていますが、たくさんおカネを使ったことと正しい食事内容であるかどうかは別の問題です。

この本に書かれた食事を取り入れれば、なんとなく頭がすっきりする効果はあるかもしれませんが、残念ながら健康に良いとは言えません。

この本では、グラスフェッドのバターを入れたコーヒーを飲むことが推奨されていますが、バターは体に悪い油であることが数多くの研究からわかっています。

ちなみにグラスフェッドバターが普通のバターより健康に良いというエビデンスもありません。グラスフェッドバターには酪酸が多く含まれているという研究もあり、ネズミの実験では酪酸が健康に良い可能性が示唆されていますが、健康に悪い飽和脂肪酸も多く含まれていることを忘れてはいけません。

人間において、グラスフェッドバターと普通のバターの健康への影響が違うというエビデンスがでるまでは、同じものであると考えたほうが良いと考えます。

ちなみにバターは悪玉(LDL)コレステロールの値を上昇させることが研究によって明らかになっています。さらに、バターを1日大さじ1杯(14g)摂取するごとに死亡率がわずかながら上昇するというメタアナリシスの結果もあります。

数年前に、バターは思ったよりも健康に悪くないのではないかという議論が起こりましたが、ハーバードの専門家たちはバターが健康に悪いというエビデンスは覆っていないと警鐘を鳴らしています

2014年に英国のテレグラフ誌は、アスプリー氏のバターコーヒーを検証し、「科学的ではない」と一刀両断しました。この記事の中で、リバプール熱帯医学校のポール・ガーナー教授は、アスプリー氏は、研究結果をえり好みして自分の本で紹介しており、それらは30年以上前の古い論文や、1~2人の少人数を対象とした小さな研究ばかりであり、それらから導き出された結論は信頼に値しないと評しています。

バターコーヒーに関するきちんとした研究はまだ行われていませんが、欧米のメディアもバターコーヒーは健康に悪いと考えられると警鐘を鳴らしています(VOGUEMEDPAGE TODAY)。

ココナッツオイルも同様の問題があります。ココナッツオイルも悪玉コレステロールの値を上げることが複数の研究で明らかになっています。現在では、ココナッツオイルはバターほど健康に悪くないものの、オリーブオイルほどは健康に良くない油と考えられています。

グルテンフリーは人間でのエビデンスはない

――これも一時期ブームになりましたが、グルテンフリーはどうでしょうか。

最近では、テニスのノバク・ジョコビッチ選手など、海外のアスリートたちが取り入れているということでも話題になりましたが、グルテンフリーで健康になれるというエビデンスはありません。

セリアック病という珍しい病気を持っていないのなら、グルテンフリーにする健康上のメリットはないと今のところ考えられています。

グルテンフリーとは、小麦や大麦に含まれるたんぱく質の一種であるグルテンを抜いた食事のことを指します。元々はセリアック病と呼ばれる病気を持った人がグルテンを摂取すると下痢を起こすため、セリアック病の人でも食べられるように開発されたものです。

小麦の代わりに米粉やでんぷんを使ったグルテンフリー食品は、これまでセリアック病の人が対象でしたが、アメリカではセリアック病でない人も「健康に良さそう」というイメージから好んで食べるようになっており、ビジネスの観点から新たな成長分野として注目を集めています。

アメリカにおいて、セリアック病がないにもかかわらずグルテンフリーにしている人はここ4年で3倍以上に増えていると報告されており、2013年にはアメリカ人の30%近くが食事に含まれるグルテンの量を減らす努力をしていると報告されているほどです。

これはグルテンがセリアック病の人だけでなく、正常な人においても腸管の炎症を引き起こすのではないかという仮説から来ています。たしかにネズミにおいては、グルテンを投与することで炎症が起きるという報告や、食事中のグルテンを制限することで糖尿病を予防することができたという報告もありますが、人間においてグルテンが健康に悪影響を及ぼすという科学的根拠はありません。

世の中にはセリアック病ではないものの、「グルテン過敏症」や「小麦過敏症」と呼ばれる人もいて、これらの人はグルテンを摂取すると下痢をしたり体調不良になるという説もあります。

こういった人たちにとってはグルテンを控えるのは良いかもしれません。しかし、市販のグルテンフリーの食品では米粉などが使われていたり、砂糖が多く含まれるため、結果的に「白い炭水化物」の量が多くなってしまい健康にとって悪いと考えられます。

グルテンフリーの食品を代わりに摂取するのではなく、シンプルに小麦の摂取を避けることをおすすめします。

おいしいだけでなく「体に良い」も考えよう

――体に悪いとされるバターや白米、牛肉などは我慢すべきなのでしょうか。

私自身も決しておいしいものを我慢しているわけではありません。牛肉を食べることもあります。本書でも、白米や牛肉などを「体に良くない」としていますが、「食べるべきではないというわけではない」と説明しています。食事は健康のためだけにしているものではなく、楽しみに思っている人も多いと思いますので。その食品を摂るメリットとデメリットを十分理解したうえで、適切な量を食べるべきだと思います。

おいしいから好物だからといった観点「だけ」で食事を選択するのではなく、それにプラスして「体に良いかどうか」も考えてみましょう、ということです。

食事を選ぶときに、「うどんではなく蕎麦にする」「牛肉ではなく魚にする」「果汁100%ジュースではなくフルーツそのものにする」など、無理なくできることから始めてみてください。

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津川 友介:カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)助教授

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