メニュー

2018.05.18

税金のかからない確定拠出年金の受け取り方|退職金のもらい方も考えれば「お得度」倍増!

東洋経済オンライン

せっかく積み立てた確定拠出年金。上手に受け取ると税金額が全然違う。退職金の予定があるなら、さらにもらい方を考えよう(写真:マハロ/PIXTA)

参照元:https://toyokeizai.net/articles/-/221061?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

せっかく積み立てた確定拠出年金。上手に受け取ると税金額が全然違う。退職金の予定があるなら、さらにもらい方を考えよう(写真:マハロ/PIXTA)

ライフプラン相談をお受けしているファイナンシャルプランナーの筆者の元には、さまざまなおカネの悩みが寄せられます。最近立て続けに相談があったのが、確定拠出年金の受け取り方についてです。

確定拠出年金の受け取り方については、いくつかの方法があります。また選択の仕方によっては課税の仕組みが異なるので、「いったいどう受け取るのがベストなのか?」と悩まれる方も多いのです。そこで今回は、確定拠出年金の上手な受け取り方について、お話ししたいと思います。

確定拠出年金の「3つの税優遇」とは?

確定拠出年金とは3つの税制優遇を受けながら、老後資金を効率的に貯められる国の制度です。この制度を会社で取り入れると企業型(DC)となり、個人が任意で加入すると個人型(iDeCo)となります。

いずれの型でも、確定拠出年金は「加入者」の個人口座に老後資金が積み立てられ、「加入者」が運用し、「加入者」が受け取ります。DCの場合はこの個人口座に主に会社が掛金を拠出し、iDeCoの場合は加入者自身がおカネを積み立てます。

DCの場合、掛金は通常の給与と異なり所得税、住民税、社会保険料のかからないおカネとして、会社から直接加入者の個人口座に入金されます。一方、iDeCoの掛金は積み立てられた後、年末調整等で掛金全額が所得から控除されるので結果所得税、住民税のかからないおカネとなります。これが1つめの税制優遇です。

加入者は口座に入ったおカネについて、あらかじめ用意された金融商品を加入者自らが選択して運用します。この時運用益には税金がかかりません。運用期間は最長加入者が70歳になるまで継続しますから、加入期間が長いほどこの税制優遇の効果は大きくなります。これが2つ目の税制優遇です。

積み立ては60歳まで継続できますが、その間は原則引き出しが制限されます(一部のDCは65歳まで)。積み立て期間が60歳までに10年以上ある場合は、60歳時点で資金の受け取りが可能となります。積み立て期間が10年に満たない場合は、受け取り時期が最長で65歳まで繰り下げられます。受け取り期間は70歳までの任意のタイミングで選択ができ一括、分割、併用の3種類が選べます(取扱い金融機関によって併用が選択できないところもあります)。一括で受け取ると退職所得控除、分割で受け取ると公的年金控除の対象です。これが3つめの税制優遇です。

以上が確定拠出年金の概要です。ここから、4つのケーススタディを通じて、受け取り方法によって税金がどう変わるのかを見ていきたいと思います。

【ケース1】60歳で確定拠出年金の資金を一括で受け取る

確定拠出年金の資金を一括で受け取る場合は退職所得控除が適用されます。退職所得控除は通常、会社からの退職一時金に適用される課税ルールです。会社の退職金は他の収入よりも税金が少なくなるように調整されており、長く勤めるほど退職所得控除が大きくなります。勤続20年までの退職所得控除は1年あたり40万円、勤続年数が20年を超えると1年あたり70万円で計算されます。

60歳で受け取らず「70歳まで運用のみに移行」の手も

通常の退職所得控除は、入社から退職までの期間で計算します。従って、離転職を繰り返すと、退職金が支払われる度にその会社での勤続期間が退職所得控除となります。しかし確定拠出年金は離転職の場合もおカネを引き出すことができませんから、DCからiDeCo、iDeCoからDCといったように、資金を移換しながら積み立てを継続します。そして積み立てを継続した期間が、通算され退職所得控除の「勤続年数」と読み替えられます。

具体的に会社員Aさんのケースで見てみましょう。AさんはDCに10年、その後iDeCoで5年、確定拠出年金の積み立てを継続しました。60歳時点での資金は500万円です。この場合、Aさんが利用できる退職所得控除は、継続年数15年となりますから、600万円(15年×40万円)です。確定拠出年金の資金より控除額が上回りますから、一括引き出しに対し課税は一切ありません(実際には復興特別所得税、住民税もかかりますが、今回はあくまでも概算として計算します)。

Aさんにはこのまま70歳まで運用のみを行う運用指図者という選択肢もあります。運用の際の利益にも税金がかかりませんから、もう少し運用を継続したいという考えはよくわかります。

Aさんの確定拠出年金の資金は、65歳でも70歳でも一括受け取りの際の退職所得控除の額は変わりません。退職所得控除として計算される期間は積み立てを行う期間のみですから積み立てが終了した60歳以降の運用期間は退職所得控除にはカウントされないのです。また確定拠出年金の資金を一括で受け取る際にその他年金収入があったとしても退職金は分離課税といって、その他の所得とは合算されませんので、税率が上がることもありません。

【ケース2】退職金額も勘案しつつ確定拠出年金を分割で受け取る

同じ年に複数の退職金を受け取る場合は、合算して最も長い勤続年数をもとに退職所得控除を計算するという税金のルールがあります。

Bさんのケースで見ていきます。Bさんは会社からの退職一時金が1000万円、勤続年数は23年です。DCは500万円でDCの継続年数は10年でした。前述のとおりこの2つのおカネは合算されますから合計1500万円がこの年の退職金です。退職所得控除は、会社の勤続年数の方がDCの継続年数より長いので、23年で計算します。従って退職所得控除は1010万円(20年×40万円=800万円+3年×70万円)となります。

課税対象となる金額は、退職金1500万円から退職所得控除額1010万円を差し引きさらに2で割って求めます。計算すると、この場合245万円に対し所得税が発生します。このケースでの納税額は14万7500円です。

確定拠出年金を分割して上手に受け取るためには?

Bさんはこの税金もできれば回避したい考えです。確かに決して少ない額ではありません。そこで退職金だけを一時金で受け取り、確定拠出年金の資金は分割で受け取ることにしました。

退職金1000万円は退職所得控除1010万円を下回りますから、課税はありません。確定拠出年金の資金を分割で受け取る場合、公的年金控除が適用になります。

65歳までは公的年金の受給がないのでそれまでのつなぎとして、5年間で100万円ずつ取り崩します。このケースでの納税額は毎年1万5000円ですから、5年間の合計は7万5000円に抑えることができました(年金の他収入があれば合算され総合課税となりますが、ここでは確定拠出年金の資金のみで税金を比較します)。

Bさんは、65歳までは退職金の取り崩しが可能なので、確定拠出年金の資金は65歳から年金として受け取りたいとおっしゃったのですが、65歳からは老齢基礎年金、老齢厚生年金が支給開始となります。確定拠出年金を分割で受け取るとこれら公的年金と合算され、そこからの公的年金控除となるため、公的年金を受け取る前、つまり60歳から65歳までの未使用の控除枠を確定拠出年金で利用した方が税制上は有利なのです。

【ケース3】年金を70歳まで繰り下げ確定拠出年金をつなぎに

老齢基礎年金、老齢厚生年金は65歳で受け取らずに繰り下げをすると、年金額が増額されます。1カ月あたり0.7%ですから70歳まで繰り下げると42%の割り増しとなります。

Cさんのケースで見てみましょう。Cさんは、確定拠出年金の資金が1000万円あり、一括だとすぐにおカネを使ってしまいそうで心配です。そのため年金形式での受け取りを希望しています。65歳までは継続雇用で働くので、生活費としての取り崩しは65歳からとします。

65歳まで継続雇用の場合はNISAに移して運用も

公的年金控除は65歳前と後では計算式が異なります。60歳から10年間で1000万円を取り崩すと、65歳までの所得税は年間1万5000円ですが、65歳以降の所得税は0円なのです。従って10年間の所得税は5年分の7万5000円です。

一方65歳以降の5年間で、200万円ずつ取り崩すと、所得税は1年あたり4万円となり5年間の負担は20万円となります。つまり、10年で分けて受け取ったほうが節税になるのです。

もちろん、取り崩したおカネをすぐに生活費として使う必要はありません。Cさんのように65歳までは継続雇用で働く場合、60歳から年金形式で受け取る確定拠出年金の資金は、生活費として使わずに、そのままNISA(少額投資非課税制度)の口座で運用に回します。すると、運用益非課税の恩恵を延長させながら、資産形成を継続できます。

65歳以降いよいよ生活資金としての取り崩しが必要となったら、NISA口座を適時解約し引き出せば、「年金」となります。説明してきたとおり、口座から引き出すおカネは所得税の対象となる収入ではありませんから、おカネに税金はかかりません。もちろん収入ではありませんから、社会保険料のかからないおカネでもあります。

さて、最後の4つ目を説明します。

【ケース4】65歳定年なら退職金は確定拠出年金より後で受け取る

Dさんのケースで説明しましょう。Dさんの会社は65歳定年制です。現在はiDeCoを利用していますが、すぐにおカネが必要なわけでもないのですが「どうせならまとめて」と、定年退職時に会社の退職金と確定拠出年金の資金を一気に引き出ししようかと考えています。

Dさんの確定拠出年金は、企業型のDCで6年。その後iDeCoで7年です。もし60歳で確定拠出年金の資金を一括で受け取ると退職所得控除は13年分、すなわち520万円使えます(残念なことに、実際はDCからiDeCoへの移換の際に手続きがおくれ、積み立てが中断された期間が1年あるので、それは退職所得控除にはカウントされません)。確定拠出年金の資金は現在400万円です。

一方、会社の退職一時金は600万円。会社を移り、53歳で今の会社に入ったので、65歳までの勤続年数を計算すると12年です。従って、退職所得控除は480万円(12年×40万円)です。

Dさんは、確定拠出年金の受け取りを据え置くとその分退職所得控除が増やせると思っていました。しかし、確定拠出年金はあくまでも掛金の拠出期間のみが「継続期間」としてカウントされますから13年以上には増やせません。

「退職金の5年ルール」をうまく利用する

むしろDさんの場合は、60歳で確定拠出年金を、65歳で退職金をそれぞれ一括で受け取ったほうが税制上有利になります。

どういうことでしょうか。退職金は受け取る前年以前4年内に他の支払い者から支払われた退職金がある場合は、それらの勤続年数の重複期間を含めずに退職所得控除を計算するというルールがあるのです。逆に言うと指定された期間以上前に受けた退職金の退職所得控除と今回受ける退職所得控除はそれぞれ全期間を認めるという意味です。つまり「5年空ける」と全然計算の仕方が違ってくるということです。

Dさんの場合、60歳と65歳、5年間空けた上で退職金を受け取ると、それぞれフルで退職所得控除が使えるのです。60歳で確定拠出年金を一括で受け取る際、400万円の資金は退職所得控除520万円を下回りますから課税はありません。また65歳で退職金600万円を受け取る際、退職所得控除480万円を差し引いた120万円の半分60万円が課税対象ですから、その結果3万円が所得税です。

Dさんからはさらに「退職所得控除が別々に使えるのであれば、退職金を65歳で受け取って、確定拠出年金の資金を70歳で受け取ったらどうか」と質問されました。実は確定拠出年金の資金に限り、前年以前14年内に受けた退職金があれば、退職所得控除の重複分は差し引くというルールがあるのです。Dさんは会社の勤続年数と、確定拠出年金の掛金拠出時期が7年重複しているので、この場合重複期間が退職所得控除の計算から差し引かれ、13年分ではなく6年分のみとなり、税制メリットが薄くなってしまいます。

以上4つの例を挙げましたが、これらはほんの一例で、実際は他の選択肢も考慮しながらシミュレーションをします。読者にとっては「なんだかなぁ~、確定拠出年金って面倒臭いなぁ~」という印象でしょう。しかし、確定拠出年金は、受け取り時期が自分で選べる特別な退職金なので、「より有利な受け取り方法が選べる分、制約が大きいのだ」と理解していただければそれで十分です。

いずれにしろ、一般の人にはなかなか理解しづらいルールかと思いますので、確定拠出年金の資金の受け取りを考える際には専門家に相談する方がいいということだけは覚えておいてください。また資金の受け取り方を考慮するのと同時に公的年金の受け取り方、おカネの使い方のプランニングももちろん大切です。後で後悔しないよう、しっかりと検討してください。

記事画像

山中 伸枝:ファイナンシャルプランナー(CFP®)

【あわせて読みたい】 ※外部サイトに遷移します