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2018.04.04

ダイエットで制限するなら糖質と脂質どっち?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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最近話題の糖質制限ダイエットと、油を控える脂質制限ダイエット。
効率よく体重を落とすなら、どちらのほうがいいのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2018年のJAMA誌に掲載された、カロリーには大きな違いはなく、脂質を減らしたダイエットと糖質を減らしたダイエットの、体重減少効果を比較した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

ダイエットでは糖質と脂質どちらを制限するべきか

健康なダイエットとして、より効果があるのは?

肥満は世界的な健康の大問題で、それは高度の肥満者が欧米に比べると少ない、日本においても例外ではありません。

肥満の治療の柱となるのは、減量のための生活指導ですが、その主体となる食事療法については、これが確実に他より優れている、という科学的に立証されたダイエット法は存在しません。

ただ、カロリーを適切に制限すると共に、脂質を主に制限するか、糖質を制限するかの、どちらかをすることがほぼ間違いなく含まれています。そこには極端な制限を伴うものもあり、もっと緩い制限に留まるものもあります。

以前は脂質を徹底的に制限することが、一番の減量法であるような考え方が有力でしたが、最近では国内外を問わず、糖質の制限が注目をされるようになっています。

それでは、脂質の制限と糖質の制限の、どちらが健康的なダイエットのためには、より有用性が高い方法なのでしょうか?

1年の調査で、どちらが効果があるかを比較

脂質制限食は油や肉の脂身などを、糖質制限食は穀類などを制限

今回の研究はアメリカにおいて、糖尿病がなく、BMIが28から40という肥満があり、年齢が18から50歳の一般住民を公募し、くじ引きで300人余りの2つの群に分けると、一方は脂質制限を主体とするダイエットを、もう一方は糖質制限を主体とするダイエットを指導して、それを12ヶ月間持続してその有効性を比較しています。

脂質制限食は食用油、ナッツ、乳製品、肉の脂身などを制限し、糖質制限では穀物、米、豆類や芋類などを制限します。
両群とも野菜の摂取は増加させるようにし、砂糖やトランス脂肪酸、超加工食品などの制限も指導します。運動の指導なども行っています。

そのダイエット効果には有意な差はなかった

カロリー制限はしていないものの、両群とも500から600キロカロリー、指導前より摂取カロリーは減少しており、両群とも12ヶ月で5から6キロの体重減少効果が得られました。
両群でその効果に有意な差は認められませんでした。

遺伝的に糖質や脂質の代謝が異なる群で比較しても、その2つのダイエットの間に差はなく、インスリン抵抗性があるとより糖質制限の効果はありそうですが、インスリン分泌毎にサブ解析をしても、その群間の差はありませんでした。

体重を減らす目的なら、両者にそれほどの差はない

この研究では、総エネルギーに対する糖質の比率は、脂質制限食で48%、糖質制限食で30%ですから、それほどきつい糖質制限という訳ではなく、その範囲での判断になるのですが、このような緩い糖質制限と脂質制限は、体重減少効果という点ではそれほどの差はないと、そう考えても良さそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36