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2018.04.13

血圧&血糖値の調整も!「一汁三菜」のチカラ

KenCoM編集部

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昔から日本古来の考え方とされてきた「一汁三菜」。
実は、血圧の上昇を抑えるにも最適なメニューなのだとか。

その歴史や理由まで、KenCoMの連載でもお馴染みの管理栄養士・圓尾和紀さんに教えていただきました。

そもそも「一汁三菜」とは?

圓尾さん「一汁三菜は、バランスの取れた食事がとれることで知られている、和食の食提供の仕方です。文化遺産に指定されたこともあり、その栄養面は世界から非常に高い評価を得ています。基本の構成は、ごはん(お米)に汁物1つ、主菜が1つ、副菜が2つとなります」

基本の構成

・ごはん
・汁物1つ-お味噌汁
・主菜1つ-タンパク質がとれるもの(肉、魚、卵、大豆製品など)
・副菜2つ-野菜や海藻、お漬物など

昔は豪華料理だった「一汁三菜」

圓尾さん「『一汁三菜』は、室町時代に完成された本膳料理という形式が起源だと考えられています。

今でこそ、日本人の和食の基本というイメージがあるかと思いますが、当時は、武家の公式行事などで食べるものだったというのは、あまり知られていないかもしれません。

一汁三菜が今のように基本食として普及したのは、戦後のことだと言われています」

「一汁三菜」が身体にいい理由

圓尾さん「一般的に和食は塩分が多いというイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。しかし、一汁三菜は、栄養バランスが非常に優れた食事です。それによって、血圧の上昇に起因してしまう塩分を控えめにして、結果的に血圧を抑える効果が期待できます」

血圧を上げる要因の塩分を抑えられる

①満足感が得られるから塩分を控えめにできる

圓尾さん「和食は、塩分を控えてもしっかり味が出せるものが多く、満足感を得ることができます。

例えば、出汁を効かせると味に深みを出せますし、ネギやしょうがなどの薬味を加えるとアクセントになります。さらに、酢やレモン汁などで酸味があれば味を強調することができるといった具合。

主菜はしっかり塩で味付けをしても、副菜の塩分を控えめにするなど献立の中でメリハリをつけることができるのは『一汁三菜』のメリットです。塩分を控えることができれば、血圧の上昇を抑えることにもつながります」

②味噌汁は出汁を効かせれば減塩できる

圓尾さん「一汁三菜の汁にあたる味噌汁が及ぼすプラスの効果は絶大です。味噌汁を毎日飲んでいた人は、そうではない人に比べて高血圧の人が少なかったという実験結果もあるほど。出汁がしっかり効いていれば、味噌をたくさん入れる必要もなく、その分塩分が抑えられますし、さらに美味しく食べられます。

味噌汁は一日一杯まで!という標語を時々耳にしますが、栄養士としての僕からすれば、逆に毎食飲んでいただきたいくらいです」

③野菜や海藻は塩分を排出してくれる

圓尾さん「野菜や海藻など、カリウムが含まれた食材をとりいれてください。カリウムは、体内の余分な塩分を排出してくれるので、たくさんとるほど塩分が出やすくなります。むくみの解消にも効果が期待できるでしょう。

酢の物やサラダなどにしてもいいでですね。また、カリウムは水溶性なので、汁物にすればより多く摂取できます」

カリウムが豊富に含まれる食材

・野菜
・果物
・キノコ
・海藻
・大豆などの豆類
・ナッツ類

食べ方で血糖値の乱高下を抑えめに

①ゆっくりよく噛んで食べる

圓尾さん「これはよく言われていることですが、しっかり咀嚼することで唾液がたくさん出て、消化酵素が消化を助けてくれるのと、胃腸の中にゆっくりと食べ物が入ってくるため、血糖値の上昇を抑えることができます。

早食いがクセになっている人におすすめしたいのは、箸置きを使うように意識することです。咀嚼するたびに箸をおいてみましょう。はじめは少し面倒だと思うかもしれませんが、これが実は効果大!自然とよく噛んで食べるように習慣化できるんです。

1食あたり20分はかけて食べられるといいですね」

②具材を大きくして噛み応えを出す

圓尾さん「ゆっくりよく噛むようにするためには、しっかり咀嚼できるよう具材を大きくカットするのも手です。さらにゴボウやレンコンなど、硬い食材を使うのもおすすめです」

③味噌汁→副菜→主菜→ごはんの順で食べる

圓尾さん「出汁は唾液の分泌を促す効果があり、消化酵素が増えて消化を助けてくれますので、まずお味噌汁から飲みましょう。それから野菜などの副菜、メイン、ごはんの順に食べていくと血糖値の急激な上昇を抑えることができます」

さらに健康効果を高めるコツ

普段使っている塩を見直してみる

圓尾さん「いつも使っている塩のパッケージで成分を見てみましょう。塩化ナトリウムがほぼ100%で他のミネラルが入っていないものであれば、生海塩(自然塩成分が入ったもの)に変えてみるのは手です。

生海塩などの天然の塩には、マグネシウムが豊富に含まれているので、血管を拡張して血圧を下げてくれるのです。こうした少しの心掛けでも、血圧を下げることはできますよ」

「一汁三菜」の栄養バランスと応用力で健康に導く

「一汁三菜」は世界的に見ても栄養バランスの優れたメニューだと言われています。

正直毎日作るのは大変ですが、副菜は作り置きを使ったり、納豆やめかぶ、漬物などにしてもいいのだそう。

「大切なのは、“三菜”の数を揃えることではなく、“いかに栄養バランスをよくできるか”です。極論を言えば、一汁二菜でもいいんですよ」と、圓尾さん。

まずは、塩分を控えめにして、栄養のバランスを意識していくことから始めてみませんか?

(取材・文/KenCoM編集部)

▼過去のレシピはこちら!

監修者プロフィール

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■圓尾和紀(まるお かずき)
“日本人の身体に合った食事を提案する”フリーランスの管理栄養士。日本の伝統食の良さを現代の生活に活かす「和ごはん」の考え方を伝えている。『一日の終わりに地味だけど「ほっとする」食べ方』がワニブックスより発売中。

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