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2018.03.28

”超”加工食品による健康リスクとは?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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スーパーの棚にずらりと陳列された、レトルト食品やお菓子などの加工食品。
購入する方も多いかと思いますが、実は加工食品の中には健康を脅かすものがあるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2018年のBritish Medical Journal誌に掲載された、超加工食品(ウルトラ加工食品)の発癌リスクについての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

超加工食品とは?

5種類以上の食材と調味料が組み合わされた食品

超加工食品(ultra-processed foods)というのは、ちょっと耳慣れない言葉かと思います。
これは2016年に国連の関連する食品についての会議で提唱されたもので、食品をその加工の度合いによって、4種類に分類するNOVA分類がその元になっています。

このNOVA分類では、食品をその加工度によって、
第1群;加工されていないか、最小限しか加工されていない食品
第2群;加工された調味料
第3群;加工食品
第4群;超加工食品
の4つに分類しています。

第1群は果物や野菜や肉、豆は牛乳など、その由来が見て分かるような食品のことです。
第2群は砂糖や塩などの加工された調味料です。
第3群は一定の加工をされた食品のことで、たとえば缶詰の桃や自然の製法で作ったパンやチーズ、ミックスナッツやミックスベジタブルなどがそれに当たります。

そして、第4群の超加工食品は、通常5種類以上の食品が組み合わされ、そこに複数の調味料などが加えられたものを意味しています。
こうした食品は他の群の食品では、使用されないような添加物や化学物質が添加されることが通常です。

これは要するに、僕達がお店などで手に入れることの出来る、食事の材料となる食品の分類なのです。

普段食事の材料に使うものには、超加工食品が多い

たとえばラーメンを食べようと思った時に、その材料として、自然の岩塩などを調味料に使い、自然の小麦や豚肉、野菜などを調達して、それを組み合わせて調理すれば、第1群のみを使用したことになりますし、塩や砂糖などの調味料は市販の物を使うと、第2群も使用したことになります。
袋詰めの麺を買い、スーパーの焼き豚などを買って、それを組み合わせてラーメンを作ると、第3群も使用したことになり、
最初からカップ麺やインスタントラーメンを買って、それを使用すると第4群を使ったことになるのです。

健康のためには、極力超加工食品を減らそう、というのがこの国連の会議の、基本的な考え方です。
超加工食品は料理の手間を減らしてくれますから、確かに便利ですが、最初からパッケージ化されているので、その成分を確認することは出来ませんし、栄養バランスの調節も難しくなります。

添加物を全て危険視するような考え方にも問題はありますが、人間の手間を省くために、本来は必要のない物質を、多く使用してそれを食べるということ自体が、人間本来のあり方ではないことも、また事実だと思います。

超加工食品には、どれくらい健康上の害があるのか?

摂取量に比例して発がんリスクも増加することが確認

それでは実際に超加工食品を多く食べることで、健康上の害はどの程度あるのでしょうか?

今回の研究はフランスの疫学データですが、10万人以上の住民の栄養調査の結果と、その後の癌の発症との関連を検証したものです。
その結果、トータルな癌と乳癌の発症リスクは、超加工食品の摂取量が10%増加すると、概ね10%有意に増加することが確認されました。
大腸癌と前立腺癌については、同様の関連は認められませんでした。

料理の手間は健康づくりの一歩

今回のデータのみから、超加工食品を多く摂ると癌が増える、とまで言い切ることは出来ませんが、今後様々な病気について、超加工食品との関連が調査され発表されると思いますので、今後のデータの蓄積を待ちたいと思います。

なるべく調理に手間を掛けることが、健康への1つのスタンダードであるのかも知れません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36