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2018.03.09

知らないとヤバイ!年金の「基本中の基本」|若い人ほど「年金の重要性」をわかっていない

東洋経済オンライン

若い人ほど、年金の仕組みを知らない人が多い。知らないと、まさかのときに損をすることになる(kikuo/PIXTA)

参照元:http://toyokeizai.net/articles/-/211627?utm_source=deschl&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=article

若い人ほど、年金の仕組みを知らない人が多い。知らないと、まさかのときに損をすることになる(kikuo/PIXTA)

桜が待たれる季節になりました。2月決算の会社などでは一足早く3月から新しい年度を迎えている人も多いと思います。転職を考えている人も少なくないでしょう。春は人生を考える季節です。今回は多くのサラリーマンにとって大事な「公的年金の基礎の基礎」の話をしたいと思います。

年金というと、「少子高齢化で世代間格差が広がっている」とか、「負担が重い若い人にとっては、払うだけ損だ」といった、ネガティブな反応がどうしても多くなります。しかし、私が企業向けのセミナーや講演などで「年金には、老齢年金のほか、障害年金、遺族年金の役割があるのですよ」という話を丁寧にお伝えすると、表情がガラリと変わる人も多いのです。もし「実は年金の仕組みをイマイチ知らない」なら、難しい表もありませんので、ぜひ読み進めていただければと思います。

国民年金は20歳以上が全員加入、1986年から「新制度」

日本に住むすべての20歳以上60歳未満の人は国民年金に加入します。国籍には関係ありません。すべての人が加入するので「基礎年金」と呼ばれています。この基礎年金制度の始まりは1986(昭和61)年4月です。私は1966(昭和41)年生まれですが、ちょうど、1966年生まれの人から「20歳から、みんなが年金加入」となったのです。

では「年金ってなんか複雑だよね」という漠然としたイメージはどこからくるのでしょうか。1986年に20歳になった人からは「新しい年金制度」になったわけですが、それより前の人は「古い年金制度」に加入していました。そのため、調整が入り、「いまひとつわかりにくい制度」になっているのです。今回は「新しい年金制度」についてお話をしますので、1986年時点ですでに成人していた方は、「自分にはちょっとした調整がある」と思って読み進めていただければと思います。

さて20歳以上なら皆が納めるべき国民年金ですが、いったいいくらでしょうか。2018(平成30)年度の国民年金保険料は月額で1万6340円と発表されました。この保険料は、法律に沿ったスケジュールで決まった保険料が、物価や賃金の変動などで調整され、正式に決定されます。この保険料を、60歳まで40年間払い続ければ、65歳から「満額」の「老齢基礎年金」がもらえます。こちらも毎年経済状況等によって調整されますが、2018年度の場合、満額は77万9300円となっています。

「国民年金全体のお財布」から支給される老齢基礎年金の金額は、払った保険料にほぼ比例します。2018年度の場合、満額は77万9300円と言いましたが、これを40年で割った金額は2万円弱。つまり今の国民年金は加入1年あたり「年2万円の支給を受ける価値を得る」ということです。これが65歳からの「終身年金」の権利となります(物価分の調整などがある)。

ちなみに、月額の保険料1万6340円の40年間の払い込み総額は約784万円です。これを77万9300円で割ると、答えはほぼ10。すなわち「損益分岐点は約10年」、ということがわかります。65歳から年金受給を始めると75歳で元本回収です。その後は払ったおカネについた利息で暮らすようなイメージです。もし100歳まで生きるとすると、「超過受取分」は77万9300円×25年として、1948万円にもなります。

もし保険料を払えなくなったら、どうする?

もちろん、保険料を支払っていないと年金は一銭も受給できません。それどころか、年金を受給するためには「最低でも保険料の支払期間10年」というルールがあるので、少なくとも10年以上保険料を支払わなければ、生涯無年金となってしまいます。

もし、経済的な理由により保険料の支払いが困難になったらどうすればいいでしょうか。その場合は「免除」を申請します。それが受理されると、所得によって「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」などが認められます。

国民年金のお財布の中身の半分は、私たちが納める保険料ですが、実は、「残りの半分」は税金が投入されています。免除を受けた人は、保険料を支払っていないので、払っていない保険料分についての老齢年金はもらえないのですが、税金分については受給権があります。

前述のとおり、国民年金は「1年加入すると、老齢年金2万円の価値」ですが、もし全額免除であればその半分、税金分である1万円の受給権を得ることになります。もちろん未納の場合は、免除とは違い、この税金分も受け取ることができません。未納は保険料納付という義務を負わないため、年金受給という権利も放棄しているのです。

これは障害年金、遺族年金においても同じです。国民年金を払っていさえすれば、人生の万一の際にも、とても重要な役割を果たします。どういうことでしょうか。

たとえば、万が一、交通事故で大きな障害を負ったとしましょう。仮に障害1級の認定を受けると、老齢基礎年金満額の1.25倍の障害年金が国から保障されます。計算しやすいように老齢基礎年金満額を仮に80万円とするとその1.25倍ですから、年約100万円が障害基礎年金の金額となります。

夫が、幼い子供2人を残して亡くなったら?

遺族年金も然りです。国民年金を財源とした遺族基礎年金は、遺された子供に対して支給されます。国の保障の対象となる子供とは、18歳の年度末までを言います(障害を持っている子供の場合は、20歳までが対象)。

金額は子供の人数によって異なります。たとえば、夫が亡くなったときに5歳、3歳の2人の子供を遺された妻には、年間約120万円の遺族年金が支給されます(正確には遺族基礎年金77万9300円+第1子、第2子の加算が各22万4300円と計算する)。

この金額は、上の子供が18歳の年度末を過ぎると、対象となる子供は1人となるので、年金は約100万円となります。それでもこのケースであれば、末子(2番目の子供)が高校を卒業するまでの間に、合計1760万円もの保障が得られることになります。

先ほど老齢年金の受給要件は10年とお伝えしましたが、障害年金と遺族年金は発生時点(障害年金なら初診日、遺族年金なら死亡日)までの、保険料納付要件が問われます。まず、「本来保険料を納めなければならなかった加入期間」において、3分の2以上保険料を納めていることです。仮に30歳の人なら、20歳から120カ月の年金加入期間がありますから、そのうちの3分の2、すなわち80カ月以上の保険料納付済期間が必要です。この期間には、前述した免除期間も含まれます。

もしこの受給要件を満たさなければ、障害年金も遺族年金も1円も受け取れません。3分の2というのは結構な期間です。転職が多かったり、仕事がうまくいかない期間があったりすると、少しずつ未納の期間が重なってしまい、万が一のときに年金を受けられない人も多いのです。

そういう人たちの救済措置として、「発生日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと」という特例があります。もし、うっかり保険料の未納をしてしまったという人は、過去2年分であれば遡って保険料を納めることができます。また2018年9月までと期間は限られていますが、現在は「後納」といって、5年分の保険料を払い込むこともできます。

さて、ここまでで、読者の皆さんに気がついていただきたい点があります。それは、支給額の違いです。

国の年金とは「保険」だと考えるほうがしっくりくる

老齢年金は、払った保険料に比例します。前述したように、保険料の支払い期間1年あたり、約2万円の終身年金が目安です。10年保険料を支払うと2万円x10年で20万円の老齢年金。30年保険料を支払うと2万円x30年で60万円の老齢年金、このような形です。

一方、障害年金と遺族年金は払った保険料の額にかかわらず、等級あるいは支払い要件に該当すれば、老齢基礎年金満額、つまり国民年金保険料40年払った額と同じ金額をベースに、計算されるのです。

こう考えると、国の年金制度は「保険」だということが、よくわかります。予測不可能な障害や家族の死についてはより大きな支えとなりますし、受給開始時期がわかる老齢年金についてはそれなりに保険料の負担を強いる分、長生きという自分自身で決められない寿命については、個々が負担した保険料以上の保障を約束する。人によっては、多いか少ないかという議論はあるかもしれませんが、これだけの大きな「保険」は国だからこその、手厚いものだと思うのです。

きっと国民年金を財源とした障害年金によって、経済的な不安を抱えることなく穏やかに暮らしている障害者の人もいれば、国民年金を財源とした遺族年金によって元気に学校に通っている子供も全国にたくさんいるでしょう。そう考えると、普段は意識せずに負担している、むしろ不満を感じることの多い保険料納付という義務も、社会の支え手としての責任を感じると共に、誇らしい気持ちにもなるのではないでしょうか。

一方、サラリーマンや公務員が加入する厚生年金はもっと特典が多いです。厚生年金は年収に対して約0.55%ずつ将来の年金額が増える仕組みになっています。500万円の年収で30年働けば老齢厚生年金は82.5万円老齢基礎年金に上乗せされます(500万円×0.55%×30年)。年収が上がれば、さらに老齢厚生年金が増えます。

2018年3月現在、給与20万円の会社員が負担する厚生年金保険料は1万8300円です。これは国民年金の1万6340円分も含む2つの年金制度合計の保険料です。この保険料の差は1960円ほど。アルバイトなどで月20万円ほどの収入がある国民年金加入者が負担する保険料と、さほど違いはありません。

では、国民年金だけの人と、厚生年金も払っている人の差はどのくらいになるでしょうか。月々1万6340円の国民年金保険料を1年払うことによる老齢基礎年金は2万円です。一方、月々1万8300円の厚生年金保険料(国民年金分も含む)を1年払うと、老齢基礎年金2万円に老齢厚生年金が1万3200円上乗せされた、3万3200円の終身年金となります。これは生活設計を考えるうえで、決して小さくない差になるでしょう。

厚生年金は「ちょい加入」でも「25年加入ルール」適用

では、厚生年金の中にも、障害厚生年金と遺族厚生年金があるのですが、これらはどう考えればいいでしょうか。

まず障害厚生年金は、発生時点における老齢厚生年金を元に計算します。1級であれば、老齢厚生年金額の1.25倍、2級は1倍というふうに、です。このときの計算の元になる老齢厚生年金は、加入履歴に応じて決まりますので、厚生年金加入期間が短いと小さな金額です。しかし厚生年金には「300カ月の最低保証」というルールがあるため、たとえ厚生年金加入期間が1カ月しかない方も25年会社勤めをしたと仮定して計算してくれるのです。また厚生年金には、2つよりも軽い障害3級という等級があるため、1級や2級には該当しないような病状でも、保障が受けられる場合があります。

一方、遺族厚生年金は、たとえば会社員の夫が亡くなると妻に対し一生涯支給されますが、このときの金額は老齢厚生年金の4分の3でかつ300カ月の最低保証です。民間の生命保険は病歴があると加入ができないなど条件がありますが、このように国の年金は病気があっても保険料の割り増しがなく入れる生命保険と考えると、やはり相当のメリットでしょう。

なお、老齢年金は物価スライドといって、支給額を物価や賃金上昇に合わせて調整する仕組みがあります。今はそこに「マクロ経済スライド」というマイナス要因が採用されているので、物価上昇そのままに年金額が変動するわけにはいきません。しかし、それでも人生100年時代と言われるように、寿命が伸びている中、どんなに長生きしても一定の収入を保障してくれる老齢年金はありがたい制度です。これも国の年金が賦課方式という支え合いの仕組みの上に成り立っているからこそであり、積み立て方式であればとても成り立ちません。

指摘されるように、現在の年金制度は1961(昭和36)年に組み立てられたものです。それゆえ、いささか時代に遅れをとっている部分もあります。以前のコラム「共働き夫婦は妻の死亡リスクを考えていない」で指摘したように、給付に男女差があるものもあります。また第3号被保険者の存在も、夫が会社員であれば専業主婦の妻の年金保険料は免除なのに、夫がリストラに遭い会社員でなくなると妻も第3号ではなくなり第1号被保険者として年金保険料を負担しなければならなくなるなど、いろいろな面で納得がいかない場面があります。

これらの原因の出発点は、すべて「1961年」にあります。高度成長期時代の「ザ・日本の家庭」を中心に「保険」として年金制度が組み立てられたため、「終身雇用」「年功序列」「男性は外で働き女性は家庭を守る」が前提になっているのです。今の時代にもっとふさわしい制度に変えていく必要はありますが、その前に年金とは保険であるという「社会保険」としての役割を、もう一度理解したうえで、改めて今後を考えていくべきです(今回は複雑な年金制度をかなり簡略化して説明したため、細かいルールまでお伝えしていません。詳細は日本年金機構のHP等をご参照ください)。

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山中 伸枝:ファイナンシャルプランナー(CFP®)

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