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2016.08.10

日本酒で生活習慣病も予防!健康効果とヘルシーな飲み方とは

KenCoM公式ライター:中野友希

若者の日本酒離れが懸念される一方で、にごり酒やフルーティーな果実と掛け合わせた日本酒を開発するなど、日本酒メーカーの企業努力は続いています。今「クールジャパン」の一環で世界では空前の日本酒ブーム。和食の魅力を世界に伝えるとともに、日本酒の需要が高まっていく中で、日本酒がもたらす健康効果が、医学的に解明されてきています。

日本酒は太る?悪酔いする?

日本酒離れが進んだ理由とも考えられるのが、すでに定着してしまった日本酒のイメージ。糖質が高く、太る、悪酔いする、といったそのイメージは健康とは程遠いものでした。

しかし研究は進み、“適量”の日本酒による「ヘルシー効果」が報告されているのも事実。秋田大学名誉教授である滝澤行雄氏によると、酒類の一般的な効果に加えて、日本酒には生活習慣病予防や美肌効果などの効果が期待できるということです。

ここでは、日本酒がもたらす「ヘルシー効果」を紐解きます。

日本酒の健康効果とは?

1、悪玉コレステロール除去作用も!生活習慣病を予防

まず、「飲酒」と健康の関係については、少量の飲酒者は、まったくお酒を飲まない禁酒者と比べて、総死亡数・虚血性心疾患・脳梗塞・2型糖尿病など一部の疾患のリスクが低くなることが確認されています。

一日の平均アルコール消費量と死亡率の関係

参照元:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-03-001.html

一日の平均アルコール消費量と死亡率の関係

では、「日本酒」と「生活習慣病」についてはどうでしょうか?滝澤氏のレポート『お酒の健康と医学「日本酒で健康になる」』では以下のように述べられています。

「清酒中のビタミン類(C、E)グルタミン酸(グルタミンやグルタチオンの前駆体)は、もっとも重要な代謝産物とされ、とくにグルタチオンは抗酸化作用をもち、動脈硬化を起こした血管中に蓄積した悪玉コレステロール(低密度たんぱく質)を除去し、虚血性心疾患を予防する」

また、「清酒やワインに含まれるポリフェノールは、善玉コレステロール(高密度リポたん白)を増加させ動脈硬化を防止する。また血液の凝固を防ぐ血小板凝集抑制作用があり、虚血性心疾患の発生を防止する」と述べられ、日本酒に含まれるポリフェノールの可能性が紹介されています。

さらに、日本酒と糖尿病の関係においては、
「最近の研究で少量の飲酒が糖尿病患者に有益であることが分かった。適量飲酒はこの血中インスリンを下げ、心臓病の発症を防止する」ということも示されています。

このように、日本酒が様々な疾患におよぼす健康作用については、多くの発見とともに研究が進んでいます。

2 、免疫力アップなど豊富なアミノ酸による恩恵

ウイスキーなどの蒸留酒とは異なる「発酵食品」としての日本酒についてはどうでしょう?同レポートでは、
「発酵食品の清酒は120種類以上の栄養物質、特に必須アミノ酸がバランスよく存在し、古来より「天の美禄」といわれてきた。清酒中のアミノ酸は、細胞内や血漿に遊離した形で存在し、体内で様々な生理・薬理機能を担う。含量の多いグルタミン酸は、免疫機能を高め、ロイシンはたんぱく質代謝を調整する」と言及。

豊富なアミノ酸の中には、必須アミノ酸もバランスよく含まれていることが紹介されています。

3、血色のよい肌を作る、美肌効果

言わずと知れた日本酒の効果には、”美肌効果”も挙げられます。その効果に注目した化粧水などが大手化粧品メーカーなどの間でも開発が進められているほど。日本酒愛飲者の中には、血色の良い美肌の人が、ちらほら見られます。

これについても滝澤氏によると、
「加齢に伴う皮膚角層中のアミノ酸の減少が老人性乾皮症である。清酒中のプロリンが乾燥皮膚に保水力を与え、アルギニンやグルタミン酸も保湿作用を示す。とくに清酒中のアルブチン、コウジ酸、遊離リノール酸などは肌のシミとなるメラニン色素を生成するチロシナーゼ酵素の働きを阻害してくれる」と示されています。

女性のアルコールの適量は男性の半分とされていますので飲みすぎは禁物ですが、女性にもやはり嬉しい飲み物ということが分かります。

日本酒のがんへの効果も研究が進んでいる

日本酒とがんへの健康効果を調べた調査も進んでいます。

これについては「清酒の成分に人がん細胞の増殖の抑制することが実験的に確かめられた。膀胱がん、前立腺がん、子宮がんの各細胞の増殖抑制効果は清酒濃度にほぼ比例し、三増酒では、細胞変性効果が1/3程度に減弱しており、量―反応関係が見られた。(滝澤ら、1994)」とあり、日本酒の成分の中に多様な健康効果がある可能性が示されています。

健康を維持するための量、飲み方は?

体を気遣うなら1日1合が適量

アルコールとの付き合い方で、もっとも大切なのは、飲む量にあります。日本アルコール健康医学協会では、日本酒の1日の適正飲酒量を「1合」と定めています。

糖尿病患者でも、1日約1合(純アルコール換算で約20g)の日本酒の摂取を許可されており、ヘルシーに日本酒を愉しむには1日1合が適量といえるでしょう。また、女性は体内の水分量が男性より少ないため、同じ体重・同じ飲酒量であっても血中アルコール濃度が高くなるので、女性は男性の適量の半分が良いとされています。健康には、「ちょい酔い」がちょうどいいといえますね。

すぐに赤くなってしまう方や体調に自信の無いときはほどほどに愉しむことも大切。時折深酒してしまう場合も、身体に悪い影響を与えてしまいかねませんので、お水をたくさん飲むなどアルコール濃度を下げる工夫をしましょう。

日本酒の健康効果を知ってヘルシーに愉しもう

白熱する日本酒ブーム。最新の研究では、日本酒の知られざる一面が明らかにされています。生活習慣病や美肌にも効果が期待できることは、愛飲家にとっては嬉しい情報ではないでしょうか。一方で、専門家たちが必ず指摘するのは、“適量を守り、深酒はしない”こと。

お酒は“百薬の長”といわれるのは適度な付き合いあってのことで、たくさん飲めば健康になるということで無いのです。日本酒との大人のお付き合いの参考になればと思います。

参考文献

<著者プロフィール>

■中野友希(なかの・ゆき):
大学卒業後、税理士事務所、社会福祉法人での経理・税務の業務の傍ら、労働環境改善やメンタルヘルスケアにも取り組む。出産後はウェブライターに転身し、三ツ星レストランや老舗料亭など飲食店への取材・ライティングを手がけた。現在は、”シンプルにわかりやすく伝える”ことをモットーに、ママ向けメディア、ヘルスケアメディア、ペット専門メディアなどでライターとして活動している。

<監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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