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2018.02.21

血糖値が高いと脳内出血を起こしやすくなるのか?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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突然脳の血管が破けて出血する、脳内出血という病気があります。
この病気の予防には、血糖値が関係している可能性があるのだとか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「石原藤樹のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2018年のStroke誌に掲載された、空腹時の血糖値と脳内出血のリスクとの関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

脳内出血は脳の血管が破れて出血する病気

その原因やリスクについては、未だはっきりとわかっていない

脳卒中は大きく、脳の血管が詰まって血液が流れなくなる梗塞と、脳の血管が破れて周辺に血液が流れだす出血とに分かれます。

脳出血のうち、脳の中にある血管が破れて出血するのが、脳内出血です。

脳卒中の治療は大きな進歩を遂げていますが、その大部分は脳梗塞の治療におけるもので、脳内出血に関しては、あまり画期的な治療の進歩もありませんし、その原因やリスクとなる要因についても、あまり明確なことが分かっていません。

血糖値と脳内出血には関連があるのか?

高血圧が脳内出血のリスクになることは、間違いのない事実ですが、血圧が安定していても脳内出血はゼロにはなりません。

つまり、当然高血圧以外にも、脳内出血のリスク要因はある筈ですが、それがあまり明らかにはなっていないのです。

糖尿病は動脈硬化を進行させ、脳梗塞のリスク要因であることは間違いがありませんが、血糖値と脳内出血との関連については、脳梗塞のような明瞭な関係が得られていません。

9万人超の血糖値を測定し、脳内出血リスクとの関連を検証

高血糖状態でも低血糖状態でも、脳内出血リスクは上昇した

そこで今回の中国の研究では、96110名の一般住民の空腹時血糖値を測定して、その後の脳出血のリスクとの関連を検証しています。

その結果、脳内出血のリスクは、空腹時血糖が4.0mmol/L(72mg/dL)から、6.1mmol/L(110mg/dL)の間で最も低く、それを上回る高血糖状態でも、それを下回る低血糖状態でも、いずれも上昇するということが確認されました。

つまり、血糖値が正常範囲から逸脱することは、いずれも脳内出血のリスクに繋がるといって良いようです。

血糖値を正常範囲に維持することが、脳内出血の予防にも

この研究では2年ごとに血糖測定が施行されていますが、脳内出血との関連が深かったのは、出血直近の血糖値ではなく、登録時の血糖値もしくは観察期間の全体の血糖値で、このことは急性の影響ではなく、慢性の血糖値の影響が、脳内出血との関連においては大きいことを、示唆する所見であると考えられました。

脳内出血の予防はまだ確立されていませんが、血圧の安定化と共に、血糖値を正常範囲に維持することが、現状ではその予防に重要であるのかも知れません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36